スマートフォンや自動車、家電製品など、私たちの生活に欠かせない製品に必ず使われている半導体。その半導体を生産する「半導体工場」は、今まさに日本中で建設ラッシュを迎えています。
TSMC(台湾積体電路製造)の熊本工場が2024年末に量産を開始し、ラピダスの北海道千歳工場でも2025年4月から試作ラインが稼働するなど、半導体工場に関するニュースを目にする機会が増えているのではないでしょうか。
でも、「半導体工場って何をするところ?」「どんな仕事があるの?」「きついって聞くけど本当?」といった疑問をお持ちの方も多いかもしれません。
この記事でわかること
- 半導体工場の基礎知識と製造プロセスの詳細
- 半導体工場で働く人の仕事内容と職種
- 給与水準や労働環境などの待遇情報
- TSMC熊本・ラピダス千歳など最新の建設動向
- 半導体工場が地域経済に与える影響
- 未経験から半導体工場へ転職する方法
半導体工場の基礎知識
半導体工場とは何をする場所か
半導体工場とは、コンピューターや電子機器の頭脳となる半導体チップを製造する施設のことです。シリコンウェーハ(薄い円盤状の基板)の上に、髪の毛の数千分の1という極めて微細な回路を形成し、私たちが日々使っているスマートフォンやパソコン、自動車などに欠かせない部品を作り出しています。
半導体工場の最大の特徴は、極めて高い清浄度が求められるという点です。髪の毛1本、ホコリ1粒でも製品に混入すると不良品になってしまうため、工場内には「クリーンルーム」と呼ばれる塵や微粒子を徹底的に排除した空間が設けられています。
クリーンルームの清浄度は「クラス1」という基準が使われることもあり、これは1立方フィート(約28リットル)の空気中に0.5マイクロメートル以上の粒子が1個以下という、手術室の100倍以上清潔な環境です。
半導体工場では、数百もの工程を経て製品が完成します。前工程ではウェーハ上に回路を形成し、後工程では完成したチップを切り出してパッケージングするという流れで、1つの製品が完成するまでに2〜3ヶ月もの時間がかかることもあります。
半導体製品の種類と用途
半導体工場で製造される製品は、用途によっていくつかの種類に分けられます。
主な半導体製品の種類
ロジック半導体(LSI)
演算や制御を行う半導体で、スマートフォンのCPUやパソコンのプロセッサなどに使われています。TSMCやラピダスが製造を目指しているのがこのタイプです。
メモリ半導体
データを記憶する半導体で、DRAM(一時記憶)やNAND型フラッシュメモリ(長期記憶)があります。キオクシアが三重県や岩手県で製造しているのがこのタイプです。
パワー半導体
電力の変換や制御を行う半導体で、電気自動車(EV)や家電製品に欠かせない部品です。ルネサスエレクトロニクスなどが製造しています。
イメージセンサー
光を電気信号に変換する半導体で、スマートフォンのカメラやデジタルカメラに使われています。ソニーセミコンダクタソリューションズが世界トップシェアを持っています。
これらの半導体は、スマートフォン、パソコン、自動車、家電製品、医療機器、産業ロボット、データセンターなど、ほぼすべての電子機器に使われています。特に近年は、AI(人工知能)や自動運転技術の発展により、高性能な半導体の需要が急増しているんですね。
日本における半導体工場の歴史と現状
日本の半導体産業は1980年代に世界シェア50%を超える黄金期を迎え、九州は「シリコンアイランド」と呼ばれるほど半導体工場が集積していました。しかし、1990年代以降は韓国や台湾の企業に押され、日本の世界シェアは大きく低下してしまいました。
2021年時点で、日本の半導体生産能力は世界の15%程度を占めていますが、市場シェアでは9%程度にとどまっています。これは、日本の工場が相対的に古い世代の半導体を製造しているためです。
しかし、2020年代に入り状況が大きく変わりました。米中対立による半導体の地政学リスクや、コロナ禍での半導体不足を経験したことで、各国が半導体の国内生産を重視するようになったのです。日本政府も半導体産業を「経済安全保障の要」と位置づけ、TSMCやラピダスの工場建設に巨額の補助金を投入しています。
2024年から2025年にかけて、TSMCの熊本第1工場が量産を開始し、ラピダスの千歳工場でも試作が始まるなど、日本の半導体産業は「復活」の兆しを見せています。熊本県菊陽町では工場周辺の地価が急上昇し、北海道千歳市でも住宅建設が相次ぐなど、地域経済への影響も大きくなっています。
半導体工場の製造プロセス
半導体の製造工程は大きく「前工程」と「後工程」に分けられます。前工程ではウェーハ上に回路を形成し、後工程では完成したチップを切り出してパッケージングします。それぞれの工程について詳しく見ていきましょう。
前工程の全体像
前工程では、シリコンウェーハ上に微細な回路を形成する作業が行われます。現在主流の300mmウェーハ1枚から、数百個から数千個のチップを製造できます。
前工程は300回以上もの工程を繰り返すため、1枚のウェーハが完成品になるまでに2〜3ヶ月かかることもあります。各工程では1ナノメートル(10億分の1メートル)単位の精度が求められ、わずかなズレや不純物の混入も許されません。
前工程:ウェーハ上への回路形成
ウェーハ製造
まず、高純度のシリコン(純度99.999999999%、いわゆる「イレブンナイン」)を溶かして単結晶のインゴット(円柱状の塊)を作ります。このインゴットを薄くスライスして円盤状にし、表面を鏡のように磨いたものがシリコンウェーハです。
現在は直径300mmのウェーハが主流ですが、次世代では450mmウェーハの実用化も検討されています。大きいウェーハほど1枚から取れるチップの数が増えるため、生産効率が向上するんですね。
酸化・成膜
ウェーハ表面に薄い膜を形成する工程です。酸化膜(シリコンと酸素の化合物)や金属膜など、回路の材料となる薄膜を数十ナノメートルから数百ナノメートルの厚さで積層していきます。
この工程では、CVD(化学気相成長)装置やスパッタリング装置といった高度な製造装置が使われます。東京エレクトロンやアプライドマテリアルズといった企業がこれらの装置を製造しています。
フォトリソグラフィ(露光)
半導体製造の最も重要な工程とも言えるのが、このフォトリソグラフィです。回路のパターンが描かれたマスク(フォトマスク)を通して、ウェーハ表面に塗った感光材(フォトレジスト)に紫外線を照射し、回路パターンを転写します。
TSMCの熊本第1工場では12〜28ナノメートルの回路線幅を、ラピダスが目指す千歳工場では2ナノメートルという最先端の回路線幅を実現する計画です。これは、髪の毛の太さの約5万分の1という驚異的な精度なんですね。
7ナノメートル以下の微細な回路を作るには、EUV(極端紫外線)露光装置が必要です。この装置はオランダのASML社が独占的に製造しており、1台あたり200億円以上もする超高額な装置です。
エッチング
露光で形成したパターンに沿って、不要な部分を削り取る工程です。化学薬品やプラズマを使って、ナノメートル単位の精度で材料を除去していきます。
日本企業では、東京エレクトロンがエッチング装置で世界トップクラスのシェアを持っています。
イオン注入・拡散
シリコンに不純物(ドーパント)を注入して、電気的特性を変える工程です。この工程により、半導体が電気を通したり通さなかったりする性質をコントロールできるようになります。
配線形成
形成された回路パターンに金属配線を施し、各素子を接続する工程です。銅やアルミニウムを使って、複雑な多層配線構造を作り上げていきます。最新の半導体では、10層以上の配線層を持つこともあります。
これらの工程(酸化・成膜、露光、エッチング、イオン注入)を何十回も繰り返すことで、1枚のウェーハ上に数十億個ものトランジスタ(スイッチ素子)を形成していくのです。
後工程:チップの組み立てとパッケージング
前工程で完成したウェーハは、後工程で個々のチップに分離され、外部と接続できる形にパッケージングされます。
ダイシング(切断)
1枚のウェーハから個々のチップ(ダイ)を切り出す工程です。ダイヤモンドソーやレーザーを使って、ウェーハを正確に切断していきます。300mmウェーハ1枚から、数百個から数千個のチップが得られます。
ワイヤボンディング
切り出したチップをリードフレーム(金属製の枠)に接着し、チップの電極とリードフレームを金やアルミニウムの極細ワイヤー(直径数十マイクロメートル)で接続する工程です。
モールディング
チップとワイヤーを樹脂で覆い、外部からの衝撃や湿気から保護する工程です。私たちがよく目にする黒いプラスチックに覆われた半導体チップは、この工程で完成します。
検査・品質管理工程
半導体製造では、各工程の後に厳密な検査が行われます。前工程の途中では光学検査装置やSEM(走査型電子顕微鏡)を使って、回路パターンの形状や寸法を確認します。
後工程の最後には、完成した製品の電気的特性を測定する最終検査(ファイナルテスト)が行われます。不良品率は数%程度に抑えることが求められ、品質管理が非常に重要視されています。
半導体の微細化が進むにつれて、検査技術の重要性も増しています。日本のレーザーテック社は、EUV露光用のマスク欠陥検査装置で世界シェア90%以上を占めており、半導体製造に欠かせない存在となっています。同社の平均年収は1,578万円と、半導体業界でもトップクラスの高収入企業です。
このように、半導体の製造には膨大な数の工程と高度な技術が必要です。それぞれの工程で専門的な知識と経験を持った人材が働いており、チームワークで高品質な製品を作り上げているのです。
半導体工場で使われる主要設備と装置
製造装置の種類と役割
半導体工場には、さまざまな高度な製造装置が導入されています。1台あたり数億円から数十億円もする装置が数百台も並び、24時間365日稼働し続けています。
主な製造装置
露光装置(ステッパー、スキャナー)
回路パターンをウェーハに転写する装置です。最先端のEUV露光装置は1台200億円以上もします。オランダのASML社が独占的に製造しています。
成膜装置(CVD、スパッタリング)
ウェーハ表面に薄膜を形成する装置です。東京エレクトロンやアプライドマテリアルズが主要メーカーです。
エッチング装置
不要な部分を削り取る装置です。東京エレクトロンやラムリサーチが高いシェアを持っています。
検査装置
製品の品質を確認する装置です。レーザーテックやアドバンテストが世界的なシェアを持っています。
洗浄装置
ウェーハ表面の不純物を除去する装置です。SCREENホールディングスが世界トップシェアを誇ります。
これらの装置は単独で動くのではなく、コンピューターで制御された自動化システムとして連携して動作します。人の手が直接触れることはほとんどなく、オペレーターは装置の監視や調整を行う役割を担っています。
クリーンルームの重要性と管理基準
半導体工場の心臓部とも言えるのが、クリーンルームです。髪の毛1本、ホコリ1粒でも製品が不良になるため、徹底した清浄度管理が行われています。
クリーンルームの広さは、工場の規模にもよりますが、サッカー場8面分以上にもなることがあります。TSMCの熊本第1工場の建物面積は約7.2万平方メートルで、そのうち多くがクリーンルームとして使用されています。
クリーンルームの清浄度は「クラス」で表されます。クラス1は、1立方フィート(約28リットル)の空気中に0.5マイクロメートル以上の粒子が1個以下という基準です。これは、通常の室内(クラス100万程度)の100万分の1の清浄度で、手術室(クラス1万程度)よりも100倍以上清潔な環境です。
クリーンルーム内で働く作業員は、全身を覆う防塵服(クリーンスーツ)を着用します。帽子、マスク、手袋、靴カバーまで、肌や髪が露出しないように完全防備します。また、クリーンルームへの入室前には、エアシャワーで体についた塵を吹き飛ばす必要があります。
自動搬送システム(AGV・天井搬送)
半導体工場では、ウェーハや製品を工程間で運ぶための自動搬送システムが欠かせません。人の手で運ぶと塵が発生したり、落下のリスクがあったりするため、ほぼすべての搬送が自動化されています。
主な搬送システムには以下のようなものがあります。
- OHT(Overhead Hoist Transport)
天井に設置されたレールを走行する搬送装置です。クリーンルームの天井にレールが張り巡らされ、ビークル(搬送車両)が製品を運びます。大規模工場ではレールの総延長が20〜30キロメートルにも達し、1000台以上のビークルが24時間稼働しています。 - AGV(Automated Guided Vehicle)
床面を走行する無人搬送車です。磁気テープや光学センサーで経路を認識しながら自動運転します。 - AMHS(Automated Material Handling System)
これらの搬送システムを統合管理するシステムです。各工程の進捗状況を把握し、最適なルートで製品を運搬するよう制御します。
日本のローツェ社は、半導体製造装置用の搬送システムで世界トップクラスのシェアを持ち、平均年収は1,024万円という高収入企業です。
ユーティリティ設備(純水・ガス・電力)
半導体製造には、大量の純水、特殊ガス、電力が必要です。これらを安定供給するユーティリティ設備も、工場の重要な構成要素です。
主要なユーティリティ
超純水
半導体製造では、ウェーハの洗浄に大量の超純水が使われます。不純物を徹底的に除去した水で、イオン成分や有機物、微粒子などが極限まで取り除かれています。TSMCの熊本第1工場だけで年間310万トンもの地下水を使用すると見込まれており、水資源の確保と涵養(地下水の補充)が重要な課題となっています。
特殊ガス
窒素、酸素、アルゴン、水素などの高純度ガスが製造工程で使われます。これらのガスも不純物の混入を防ぐため、専用の配管システムで供給されます。
電力
半導体工場は24時間365日稼働するため、安定した電力供給が不可欠です。大規模工場では、1日あたり数十万キロワット時もの電力を消費します。これは、数万世帯分の電力消費量に相当します。
排水処理設備
使用した水や薬品を処理する設備も重要です。環境への影響を最小限に抑えるため、高度な排水処理システムが導入されています。TSMCの熊本工場では、使用した水を処理して再利用する「3倍返し」の取り組みを行っており、採取した地下水の3倍の量を涵養する計画です。
半導体工場での仕事内容と職種
半導体工場では、さまざまな職種の人が働いています。製造ラインで直接作業する人から、設備を保守する技術者、品質を管理する専門家まで、多様な役割があるんですね。
マシンオペレーター
製造装置を操作・監視する職種です。半導体工場で最も人数が多い職種で、未経験者でも比較的採用されやすい仕事です。
主な仕事内容
- 製造装置への材料投入と製品取り出し
- 装置の稼働状況の監視
- パラメーター(温度、時間、圧力など)の設定と確認
- 異常発生時の一次対応と報告
- 作業記録の入力
オペレーターの仕事は、装置が正常に動いているか監視し、決められた手順に従って作業することが中心です。重い物を持つような肉体労働は少ないものの、長時間の立ち仕事や夜勤があるため、体力は必要です。
製造技術者・プロセスエンジニア
製造工程の最適化や新製品の立ち上げを担当する技術職です。理系の大学・大学院卒が多く、高い専門知識が求められる職種です。
主な仕事内容
- 製造条件(プロセスレシピ)の開発と最適化
- 歩留まり(良品率)の改善
- 新製品の立ち上げと量産化
- 製造トラブルの原因究明と対策立案
- データ分析と改善提案
プロセスエンジニアは、半導体の製造技術を深く理解し、品質や生産性を向上させるための改善活動を主導します。年収も高く、大手企業では700万円〜1,000万円以上も珍しくありません。
装置メンテナンス
製造装置の保守・点検・修理を担当する職種です。機械や電気の知識が必要で、工業高校や高専の出身者が活躍しています。
主な仕事内容
- 製造装置の定期点検と予防保全
- 故障時の修理対応
- 部品交換とクリーニング
- 装置の改造や性能向上
- メーカーとの技術的なやり取り
半導体製造装置は非常に高価で複雑なため、装置を止めることなく稼働させ続けるメンテナンス技術者の役割は極めて重要です。経験を積むと、装置メーカーへの転職や、より高度な技術職へのキャリアアップも可能です。
品質管理・検査
製品の品質を保証する職種です。各工程での検査データを分析し、不良品の流出を防ぎます。
主な仕事内容
- 製品の電気特性測定と合否判定
- 検査データの分析と傾向管理
- 不良品の原因分析
- 品質管理システムの運用
- 顧客への品質報告書作成
品質管理は、半導体の信頼性を支える重要な仕事です。細かい数値を扱うため、正確性と几帳面さが求められます。
生産管理・工程管理
製造ラインの進捗を管理し、納期通りに製品を出荷できるよう調整する職種です。
主な仕事内容
- 生産計画の立案と進捗管理
- 各工程のスケジュール調整
- 在庫管理と材料発注
- 顧客との納期調整
- 製造部門との連携
生産管理は、工場全体を俯瞰して見る力が必要で、コミュニケーション能力と調整力が重視される職種です。
半導体工場で働く魅力と労働環境
給与水準と待遇(正社員・派遣・期間工)
半導体業界は、製造業の中でも給与水準が高いことで知られています。ただし、雇用形態や職種によって年収は大きく異なります。
雇用形態別の給与相場
正社員(技術職)
大手半導体メーカーや製造装置メーカーの技術職では、平均年収700万円〜1,000万円以上も珍しくありません。レーザーテック(1,578万円)、東京エレクトロン(1,273万円)、アドバンテスト(1,010万円)など、年収1,000万円超えの企業も複数あります。
正社員(オペレーター)
製造ラインのオペレーターでも、大手企業では年収450万円〜650万円程度が相場です。夜勤手当や残業代を含めると、さらに高くなります。
派遣社員・契約社員
時給1,500円〜2,000円程度が相場です。夜勤の場合はさらに手当がつき、月収30万円以上も可能です。ただし、ボーナスや退職金は期待できないことが多いです。
期間工
3ヶ月〜2年程度の期間限定で働く雇用形態です。時給は派遣と同程度ですが、満了金(契約満了時の一時金)や寮費補助などの特典がある場合もあります。
TSMCの熊本工場では、正社員の平均年収が700万円〜900万円程度と報道されています。台湾本社の給与水準に近い待遇で、九州地方の製造業としては破格の高収入です。2025年4月には新卒527人を採用し、従業員数は約2,400人に達しました。
労働時間とシフト体制
半導体工場は24時間365日稼働が基本です。そのため、多くの工場で交代制勤務(シフト制)が採用されています。
主なシフト体制
- 2交代制
日勤(8時〜20時)と夜勤(20時〜翌8時)を1週間ごとに交代するパターンが多いです。12時間勤務のため、拘束時間は長くなりますが、休日は多めに設定されることがあります。 - 3交代制
日勤(8時〜16時)、準夜勤(16時〜0時)、夜勤(0時〜8時)を3〜4日ごとに交代します。1回の勤務時間は8時間と短めですが、生活リズムが不規則になりやすいです。 - 4組3交代制
4つのチームが3つのシフトを担当し、常に1チームが休みとなるパターンです。休日が多く取りやすい一方、シフトの組み方が複雑です。
夜勤には深夜手当(基本給の25%以上)が支給されるため、夜勤があるほうが収入は高くなります。ただし、生活リズムの乱れや体調管理には注意が必要です。
必要なスキルと資格
半導体工場で働くために、必須の資格はありません。未経験者でもオペレーターとして採用され、OJT(職場内訓練)で仕事を覚えていくことができます。
役立つ資格やスキル
- 理系の学歴
技術職を目指すなら、電気・電子、機械、化学、物理などの理系学部・学科の出身者が有利です。大学院卒であれば、さらに専門性が高い職種に就けます。 - 工業系の資格
電気工事士、危険物取扱者、ボイラー技士などの資格があると、メンテナンス職で優遇されることがあります。 - 基本的なPCスキル
作業記録の入力や報告書作成にPCを使うため、Excel、Word、メールの基本操作ができると良いです。 - 英語力
TSMCのような外資系企業や、海外企業との取引がある企業では、英語ができると給与や昇進で有利になります。
未経験からのキャリアパス
半導体工場は、未経験者にもキャリアのチャンスが開かれている業界です。
- 派遣・期間工としてオペレーターから開始
- 正社員登用試験に合格し、正社員オペレーターに
- リーダーやサブリーダーに昇格
- 製造技術や設備保全などの専門職に転換
- 管理職(課長、部長)へ昇進
また、半導体工場での経験は転職市場でも高く評価されます。装置メーカー、材料メーカー、他の半導体メーカーへの転職も可能で、キャリアの選択肢が広いのも魅力です。
働く上での課題(「きつい」と言われる理由)
半導体工場の仕事は高収入で安定していますが、一方で「きつい」と感じる人もいます。その理由をお伝えします。
半導体工場が「きつい」と言われる理由
夜勤がある
24時間稼働のため、夜勤は避けられません。生活リズムが不規則になり、体調を崩す人もいます。ただし、夜勤手当で収入は増えますし、慣れれば大丈夫という人も多いです。
クリーンルーム作業の制約
全身を防塵服で覆うため、夏は暑く、トイレに行くにも着替えが必要です。また、クリーンルーム内では飲食禁止、私物の持ち込みも制限されます。
繰り返し作業が多い
オペレーターの仕事は、同じ作業の繰り返しが中心です。単調に感じる人もいますが、逆に「慣れれば楽」「ルーチンワークが好き」という人には向いています。
立ち仕事が中心
製造ラインでは長時間立ったまま作業することが多く、足腰への負担があります。ただし、重い物を持つような激しい肉体労働は少ないです。
厳密な管理体制
品質管理が厳しく、ミスが許されない緊張感があります。また、入退室管理や作業手順など、細かいルールが多いです。
これらの課題はありますが、高収入、安定性、未経験OK、肉体労働少なめというメリットも大きく、「慣れれば問題ない」「給料を考えれば割に合う」と感じる人も多いです。自分の性格や価値観に合っているかを見極めることが大切ですね。
日本の半導体工場建設ラッシュ【2024-2025年最新動向】
2020年代に入り、日本では「100年に1度」とも言われる半導体工場の建設ラッシュが起きています。政府の巨額補助金を背景に、国内外の企業が相次いで工場建設を発表し、日本の半導体産業復活への期待が高まっています。
TSMCの熊本工場(JASM)
半導体受託生産で世界最大手の台湾TSMC(台湾積体電路製造)が、熊本県菊陽町に建設した工場は、日本の半導体復活の象徴とも言える大型プロジェクトです。
TSMC熊本工場の概要
第1工場(Fab23 Phase1)
- 総投資額:約8,600億円(86億米ドル)
- 敷地面積:約21万平方メートル
- 製造品目:12〜28ナノメートルの半導体
- 主な用途:イメージセンサー、車載用LSI(自動車制御・自動運転システム)
- 稼働時期:2024年12月に量産開始
- 従業員数:約1,700人
- 政府助成:約4,760億円
第2工場(Fab23 Phase2)
- 総投資額:約1兆6,900億円(139億米ドル)
- 敷地面積:約32万平方メートル
- 製造品目:当初6〜7ナノメートルの計画が、4ナノメートルに変更される見通し
- 主な用途:自動車用、画像センサー向けの先端半導体
- 着工時期:2024年10月に立地協定締結後、2025年12月時点で設計変更により工事一時停止中
- 稼働予定:当初2027年末予定(変更の可能性あり)
- 従業員数:約1,700人予定
- 政府助成:約7,320億円予定
TSMCの熊本工場は、ソニーセミコンダクタソリューションズ、デンソー、トヨタ自動車も出資する合弁会社JASM(Japan Advanced Semiconductor Manufacturing)が運営しています。出資比率はTSMCが約86.5%と大半を占めています。
2025年12月時点で、TSMCの熊本第2工場は設計変更のため工事が一時停止しています。当初計画の6ナノメートルから4ナノメートルへと、より先端の半導体生産に方針転換する見通しです。これは、AI需要の急拡大により、より高性能な半導体が求められているためと報道されています。工事再開時期は2026年以降になると見られています。
第1工場と第2工場を合わせた総投資額は約2兆5,500億円で、単独プロジェクトとしては九州で過去に類を見ない規模です。雇用は両工場合わせて3,400人以上が見込まれ、関連企業を含めると1万人以上の雇用創出効果があると試算されています。
ラピダスの北海道千歳工場
2022年に設立されたラピダスは、2ナノメートル世代の次世代半導体を国産化するという壮大な目標を掲げる国策企業です。トヨタ自動車、ソニーグループ、NTT、ソフトバンク、デンソー、キオクシア、NEC、三菱UFJ銀行の8社が出資しています。
ラピダス千歳工場の概要
第1工場(IIM-1)
- 総投資額:数兆円規模(第1工場のみで約5,000億円と推定)
- 敷地面積:約65ヘクタール(最終的には約100ヘクタールに拡大予定)
- 製造品目:2ナノメートルGAA(ゲートオールアラウンド)トランジスタ
- 主な用途:AI、データセンター、自動運転向けの最先端ロジック半導体
- 試作ライン:2025年4月稼働開始、7月中旬〜下旬に最初の試作品完成
- 量産開始:2027年を目標
- 政府助成:累計1兆7,225億円(2025年3月時点)
第2工場(計画中)
- 着工予定:2027年度(2027年4月〜2028年3月)
- 製造品目:1.4ナノメートル級の最先端半導体
- 稼働予定:2029年度頃
ラピダスは、世界最先端の2ナノメートル半導体を2027年に量産開始するという極めて野心的な目標を掲げています。技術パートナーとして、米国IBM、ベルギーのimec、ドイツのFraunhofer研究機関などと連携し、国際的な協力体制を構築しています。
2025年4月には試作ラインが稼働を開始し、300回以上の工程を経て、7月には最初の試作品が完成する予定です。同年度末までにPDK(プロセス・デザイン・キット)を公開し、顧客企業が設計を開始できる環境を整える計画です。
2ナノメートル半導体は、現在台湾TSMCと韓国サムスンだけが製造できる最先端技術です。ラピダスは会社設立から5年で量産という「異例のスピード」での立ち上げを目指しており、成功すれば日本の半導体産業の大きな転機となります。ただし、技術的ハードルの高さや顧客獲得の課題もあり、プロジェクトの成否は今後の推移次第です。
その他の主要プロジェクト
TSMC、ラピダス以外にも、国内企業による大型投資が相次いでいます。
キオクシア(三重・北上)
NAND型フラッシュメモリで世界シェア2位のキオクシアは、三重県四日市市と岩手県北上市で生産能力の増強を進めています。
- 四日市工場
新製造棟の建設や設備投資により、次世代メモリの生産能力を拡大しています。 - 北上工場
ウエスタンデジタルとの合弁で運営する工場で、継続的な設備投資を行っています。
マイクロン(広島)
米国のメモリ大手マイクロン・テクノロジーは、広島県東広島市の工場でDRAM(一時記憶用メモリ)の生産を強化しています。最先端の1ベータ技術を用いたDRAM製造に約5,000億円を投資し、日本政府から最大1,920億円の補助を受ける予定です。
ルネサスエレクトロニクス(甲府)
車載用半導体で世界トップクラスのルネサスエレクトロニクスは、山梨県甲府市の工場でパワー半導体の生産能力を増強しています。電気自動車の普及に伴い、パワー半導体の需要が急増しているためです。
Powerchip・JSファウンドリ
台湾のPowerchipと日本企業の合弁によるJSファウンドリが、宮城県で新工場の建設を計画しています。政府の支援を受け、28ナノメートル級の半導体を製造する予定です。
政府支援と半導体戦略
これらの大型プロジェクトの背景には、日本政府の積極的な半導体戦略があります。
政府は2021年に「半導体・デジタル産業戦略」を策定し、半導体産業を経済安全保障の要と位置づけました。台湾有事や米中対立などの地政学リスクが高まる中、先端半導体を国内で安定的に確保することが国家的な課題となっています。
主な政府支援策
- 巨額補助金の投入
TSMCに約1.2兆円、ラピダスに約1.7兆円など、総額で数兆円規模の補助金を投入しています。 - 半導体支援基金の創設
2021年度補正予算で6,170億円、2023年度補正予算で1兆3,000億円の基金を創設しました。 - 税制優遇
半導体製造装置への投資に対する特別償却制度などの税制優遇措置を設けています。 - 人材育成支援
大学や高専での半導体教育プログラムの拡充、企業の人材育成への支援を行っています。 - インフラ整備
工場周辺の道路拡幅、空港アクセス改善、水道・電力などのインフラ整備に予算を配分しています。
この政府支援により、日本は半導体の「国内回帰」を加速させています。ただし、巨額の税金投入には「特定企業への優遇」との批判もあり、投資の効果や成果が問われることになります。
半導体工場が地域経済に与える影響
雇用創出効果と人材需要
半導体工場の建設は、地域に大きな雇用創出効果をもたらします。
TSMCの熊本工場では、両工場合わせて3,400人以上の直接雇用が生まれる予定です。さらに、関連する製造装置メーカー、材料メーカー、物流企業、保守サービス企業などの進出により、間接的な雇用も含めると1万人以上の雇用が創出されると試算されています。
ラピダスの千歳工場でも、数千人規模の雇用が見込まれており、北海道千歳市の人口は2025年2月時点で約9万7,000人ですが、2036年には10万2,000人規模に増加すると推計されています。
一方で、半導体人材の不足も深刻な問題となっています。TSMC熊本工場では、2025年4月に新卒527人を採用し、従業員数が約2,400人に達しましたが、地元企業からは「人材が引き抜かれる」との懸念も出ています。時給1,500円〜2,000円という高待遇により、他業種からの転職者も増えており、地域の人材市場に大きな影響を与えています。
地域GDP・税収への貢献
半導体工場の経済波及効果は、雇用だけにとどまりません。
九州フィナンシャルグループと地方経済総合研究所の試算によると、TSMCの熊本第1・第2工場による経済波及効果は10年間で約11.2兆円に達するとされています。これは、熊本県の年間GDPの約2倍に相当する巨額です。
また、九州経済調査協会の試算では、TSMC を含む九州全体の半導体産業の設備投資による経済波及効果は、10年間で約20兆円にもなると推計されています。
税収面でも、固定資産税、法人税、住民税などが増加し、自治体の財政が潤います。熊本県菊陽町では、税収増を見込んで道路や公共施設の整備計画を進めています。
不動産市場への影響
半導体工場の進出は、不動産市場にも劇的な影響を与えています。
熊本県菊陽町の事例
地価の急上昇
TSMC工場周辺の路線価(土地の評価額)は、2年連続で大幅に上昇しています。工場に近い原水駅周辺では、前年比で30%以上も地価が上昇した地点もあります。
住宅不足と賃料高騰
TSMC関連の転入者が急増し、賃貸住宅が不足しています。アパートの家賃相場は、1LDKで月7万円〜9万円程度と、以前の1.5倍近くに上昇しました。
商業施設の建設ラッシュ
ホテル、マンション、商業施設の建設が相次いでいます。菊陽町の中心部では、建設中のビルがいくつも見られ、「バブル以来の活気」とも言われています。
交通渋滞の深刻化
工場建設と人口増加により、国道や県道の交通渋滞が深刻化しています。TSMCの魏哲家会長は、第2工場の着工が遅れている理由の一つとして「現地の交通事情の悪化」を挙げています。
北海道千歳市でも同様の現象が起きており、ラピダスの工場建設が発表されてから、土地の坪単価が上昇し、マンション建設が活発化しています。
インフラ整備と課題
工場建設に伴い、自治体はインフラ整備を急ピッチで進めています。
熊本での取り組み
- 道路拡幅
TSMC工場前の県道大津植木線を4.2キロメートルにわたって6車線化する計画です。 - 空港アクセス鉄道
JR肥後大津駅から熊本空港までの約6.8キロメートルを結ぶ新線を整備予定で、2034年度内の完成を目指しています。 - 水資源の確保
半導体製造には大量の水が必要です。TSMCは第1工場だけで年間310万トンの地下水を使用する見込みで、地下水の涵養(補充)対策が課題となっています。同社は「使った水の3倍を涵養する」という目標を掲げ、水処理施設を公開しています。
北海道での取り組み
- 工業団地の整備
千歳美々ワールド工業団地を拡張し、ラピダス関連企業の進出に対応しています。 - 路線バスの新設
2026年4月から、ラピダス工場と新千歳空港、千歳駅などを結ぶ路線バスが運行される予定です。 - 住居表示の整備
人口増加に対応し、新たな住居表示の整備を進めています。
一方で、急激な発展に伴う課題も指摘されています。交通渋滞、住宅不足、地価高騰による既存住民の負担増、水資源の持続可能性、関連産業の人材獲得競争など、地域社会への影響は複雑です。自治体は、バランスの取れた発展を目指して対策を講じています。
世界の半導体工場トレンドと日本の位置づけ
世界の生産能力シェア
半導体の生産能力(製造能力)は、世界的に見ると地域ごとに大きく偏在しています。
地域別の半導体生産能力シェア(2021年末時点)
- 台湾
世界シェア約21%で、TSMCを中心に最先端半導体の生産拠点として圧倒的な存在感を持っています。 - 韓国
世界シェア約20%で、サムスン電子やSKハイニックスがメモリ半導体で高いシェアを持っています。 - 日本
世界シェア約15%ですが、市場シェアは9%程度にとどまっています。 - 中国
世界シェア約16%で、国家戦略として半導体の自給率向上を目指しています。 - 米国
世界シェア約12%で、インテルを中心に国内生産を強化しています。
日本の生産能力シェアは15%と一定の規模を保っていますが、市場シェアが9%にとどまるのは、日本の工場が主に28ナノメートル以上の成熟世代の半導体を製造しているためです。最先端の7ナノメートル以下の半導体は、台湾TSMCと韓国サムスンが独占しています。
台湾・韓国・中国との比較
台湾TSMC
世界の半導体受託生産市場でシェア60%以上を占める圧倒的なリーダーです。最先端の4ナノメートル、3ナノメートル半導体を量産しており、アップル、エヌビディア、AMDなど世界のトップ企業が顧客です。熊本工場は12〜28ナノメートルという成熟世代の製造に特化しており、台湾本社とは役割分担がなされています。
韓国サムスン
メモリ半導体(DRAM、NAND)で世界トップシェアを持ち、ロジック半導体の受託生産でもTSMCに次ぐ世界2位です。3ナノメートル世代の量産を開始しており、TSMCとの技術競争を繰り広げています。
中国
米国の技術規制により最先端半導体の製造は困難ですが、国家戦略として半導体の自給率向上を目指しています。SMIC(中芯国際集成電路製造)などが成熟世代の半導体を大量生産し、国内需要を賄おうとしています。
技術競争の現状(2nm・4nm世代)
半導体の微細化競争は、現在2ナノメートル世代に突入しています。
- 2ナノメートル世代
TSMCとサムスンが2025年に量産開始予定。インテルも追随する計画です。ラピダスも2027年の量産を目指しています。 - 3〜4ナノメートル世代
TSMCとサムスンがすでに量産中です。TSMCの熊本第2工場も、当初の6ナノメートルから4ナノメートルへの変更を検討しています。 - 7〜10ナノメートル世代
やや古い世代ですが、スマートフォンやPC向けに大量に使われています。 - 12〜28ナノメートル世代
自動車用、産業用機器向けに需要が高い世代です。TSMCの熊本第1工場がこの世代を製造しています。
最先端の技術競争では、台湾TSMCが一歩リードしており、韓国サムスンが追いかけ、米国インテルと日本ラピダスが巻き返しを図るという構図です。
日本の復活に向けた課題と展望
日本の半導体産業が復活するには、いくつかの課題を克服する必要があります。
主な課題
技術の遅れ
日本は最先端技術で台湾・韓国に大きく遅れをとっています。ラピダスの2ナノメートル半導体が成功するかどうかが、日本の復活の鍵を握っています。
人材不足
半導体エンジニアの不足が深刻です。大学や高専での教育強化、海外人材の活用、企業間の人材流動性向上などが求められています。
顧客の確保
製造能力を持っていても、顧客(半導体を発注する企業)がいなければ意味がありません。TSMCはアップルなどの大口顧客を持っていますが、ラピダスはこれから顧客開拓を進める段階です。
持続可能性
巨額の政府補助金に依存した構造が、長期的に持続可能かという問題もあります。民間企業として自立して利益を出せる体制の構築が必要です。
サプライチェーンの構築
半導体製造には、装置メーカー、材料メーカー、検査装置メーカーなど、膨大なサプライチェーンが必要です。日本にはこれらの企業が多く存在しますが、さらなる集積と連携が求められます。
一方で、日本には強みもあります。製造装置や材料では世界トップシェアの企業が多く、東京エレクトロン、SCREENホールディングス、レーザーテック、信越化学工業、JSRなどが半導体製造に不可欠な製品を供給しています。
また、政治的な安定性、豊富な水資源、地震リスクはあるものの台湾有事のリスクは相対的に低いといった地政学的な優位性もあります。
日本の半導体産業は、1980年代の「世界一」には戻れないかもしれませんが、特定の分野で存在感を示すことは可能です。成熟世代の安定供給、パワー半導体やイメージセンサーなどの得意分野の強化、そして2ナノメートル世代への挑戦により、「半導体大国」としての地位を取り戻せるかどうか、今後5〜10年が正念場となります。
半導体工場見学・学習リソース
半導体工場や半導体製造について、さらに深く学びたい方のために、役立つリソースを紹介します。
一般公開されている工場見学施設
残念ながら、現在稼働中の最先端半導体工場は、セキュリティや企業秘密の観点から一般見学を受け入れていないことがほとんどです。ただし、半導体に関連する施設で見学や体験ができる場所もあります。
見学・体験できる施設
産業技術記念館・科学館
各地の産業技術記念館や科学館では、半導体の仕組みや製造工程を模型や映像で学べる展示があります。名古屋市科学館、日本科学未来館、各地の産業技術センターなどで、半導体関連の常設展示や企画展が開催されることがあります。
大学・研究機関の公開イベント
東京大学、東京工業大学、北海道大学などの大学や産業技術総合研究所(産総研)では、オープンキャンパスや一般公開イベントで半導体研究の施設を見学できることがあります。
企業のショールーム
半導体製造装置メーカーの中には、ショールームを設けて製品展示を行っている企業もあります。ただし、一般向けではなく業界関係者向けのことが多いです。
TSMC熊本やラピダス千歳の工場は一般見学を受け入れていませんが、両社とも公式ウェブサイトやYouTubeチャンネルで工場の様子や製造プロセスを紹介する動画を公開しています。また、報道機関向けの工場公開のニュース映像がテレビやネットで見られることもあります。
オンライン学習コンテンツ
半導体について学ぶなら、オンラインの学習コンテンツが豊富に揃っています。
- JEITA(電子情報技術産業協会)
半導体産業の業界団体が提供する教育コンテンツで、半導体の基礎から最新動向まで学べます。 - SEMI(国際半導体製造装置材料協会)
半導体製造装置・材料業界の国際団体で、セミナーやウェビナーを開催しています。 - 各大学のオンライン講座
東京大学、東京工業大学などが、半導体工学のオンライン講座を公開していることがあります。JMOOCなどのプラットフォームでも受講できます。 - YouTube
半導体製造装置メーカーや半導体メーカーが、公式チャンネルで製造プロセスや製品を紹介しています。「半導体 製造プロセス」などで検索すると、多くの解説動画が見つかります。 - 企業の採用サイト
TSMC、ラピダス、東京エレクトロンなどの企業採用サイトには、仕事内容や職場環境を紹介するコンテンツが豊富にあります。
関連書籍・ウェブサイト
初心者向けの書籍
- 『半導体が一番わかる』(技術評論社)
基礎から学べる入門書です。 - 『図解入門 よくわかる最新半導体の基本と仕組み』(秀和システム)
イラストや図解が豊富で理解しやすい内容です。 - 『図解入門 よくわかる最新半導体プロセスの基本と仕組み』(秀和システム)
半導体製造プロセス全体を図解でわかりやすく解説しています。
専門的な書籍
- 『はじめての半導体プロセス』(技術評論社)
半導体プロセスの入門書として定評があり、基本プロセスから複合プロセスまで学べます。 - 『半導体デバイス工学』(コロナ社)
半導体の基礎的な物理現象からデバイスの特性、用途までを一貫して学べる教科書です。 - 『半導体デバイス―基礎理論とプロセス技術』(産業図書)
デバイス物理と作製技術を網羅した専門書です。
ニュースサイト
- 日経エレクトロニクス、EE Times Japanなどの専門メディアで、最新の業界動向を追えます。
- 各社のプレスリリースやIR情報も、最新情報を得る有力な情報源です。
- まずはYouTubeなどの動画で全体像を把握する
- 入門書で基礎知識を体系的に学ぶ
- 業界ニュースで最新動向をフォローする
- 興味のある分野があれば、専門書で深く学ぶ
- 工場見学や企業説明会に参加してみる
半導体工場で働きたい方は、まず基礎知識を身につけてから、企業の採用情報をチェックして応募してみましょう。
まとめ
半導体工場は、私たちの生活を支える半導体を製造する重要な施設です。極めて清浄な環境で、ナノメートル単位の精度で回路を形成し、数百もの工程を経て製品を完成させています。
2024年から2025年にかけて、日本では「半導体工場建設ラッシュ」が起きており、TSMCの熊本工場、ラピダスの千歳工場をはじめ、数兆円規模の投資が相次いでいます。これにより、日本の半導体産業は「復活」の兆しを見せています。
半導体工場での仕事は、オペレーター、製造技術者、装置メンテナンス、品質管理など多岐にわたり、未経験者でもチャレンジできる環境が整っています。給与水準は製造業の中でも高く、大手企業では年収700万円〜1,000万円以上も珍しくありません。
一方で、夜勤やクリーンルーム作業など、独特の労働環境に適応する必要もあります。自分の適性や価値観に合っているかを見極めた上で、キャリアとして検討してみてはいかがでしょうか。
半導体産業は、AI、自動運転、IoTなどの技術発展を支える基盤産業として、今後も長期的に成長が見込まれています。日本の半導体工場がどこまで復活できるか、そして世界の技術競争の中でどのような位置を占めるか、今後の動向から目が離せません。
よくある質問(FAQ)
A. オペレーターなら高卒でも問題ありません。製造ラインのオペレーター職は、高卒や専門学校卒でも十分に採用されます。未経験者向けの研修制度も充実しており、働きながらスキルを身につけられます。
ただし、製造技術者やプロセスエンジニアなどの技術職を目指すなら、理系の大学・大学院卒が有利です。電気・電子、機械、化学、物理などの専攻が関連性が高いです。装置メンテナンスなら、工業高校や高専の出身者も活躍しています。
A. 人によって感じ方は異なりますが、独特の労働環境には適応が必要です。「きつい」と言われる主な理由は以下の通りです。
- 24時間稼働のため夜勤がある(生活リズムが不規則になる)
- クリーンルームでは全身を防塵服で覆う(夏は暑い、トイレも大変)
- 繰り返し作業が多い(単調に感じる人もいる)
- 長時間の立ち仕事(足腰への負担)
- 厳密な管理体制(ミスが許されないプレッシャー)
ただし、重い物を持つような激しい肉体労働は少なく、給与水準が高いため「慣れれば問題ない」「待遇を考えれば割に合う」と感じる人も多いです。体験談や口コミを参考に、自分に合っているか判断しましょう。
A. はい、未経験者歓迎の求人が多くあります。特にオペレーター職は未経験者でも採用されやすく、入社後のOJT(職場内訓練)で仕事を覚えていきます。
派遣社員や期間工としてスタートし、経験を積んでから正社員登用を目指すルートもあります。TSMCの熊本工場やラピダスの千歳工場など、新設工場では特に大量採用を行っており、チャンスが広がっています。
転職活動では、製造業の経験、夜勤対応可能、PCの基本操作ができるといった点をアピールすると良いでしょう。理系の知識があれば、さらに有利です。
A. 雇用形態や職種によって大きく異なりますが、正社員なら年収450万円〜1,000万円以上です。
- 正社員オペレーター
年収450万円〜650万円程度(夜勤手当・残業代を含む) - 正社員技術職
年収700万円〜1,000万円以上(大手企業では1,000万円超も珍しくない) - 派遣・契約社員
時給1,500円〜2,000円程度(月収25万円〜35万円程度) - 期間工
派遣と同程度の時給+満了金などの特典
製造装置メーカーでは、レーザーテック(平均年収1,578万円)、東京エレクトロン(1,273万円)、アドバンテスト(1,010万円)など、年収1,000万円超えの企業もあります。TSMCの熊本工場は、正社員で年収700万円〜900万円程度と報道されています。
A. 全身を覆う防塵服(クリーンスーツ)を着用します。髪の毛や肌からも塵が出るため、以下のような完全防備となります。
- 頭部:帽子(フードのようなもの)で髪を完全に覆う
- 顔:マスクで口と鼻を覆う
- 体:つなぎタイプの防塵服で全身を覆う
- 手:手袋を着用
- 足:専用の靴、または靴カバーを着用
入室前にはエアシャワーで体についた塵を吹き飛ばし、クリーンルーム内では私物の持ち込みや飲食が禁止されています。トイレに行く際も一度着替える必要があるため、慣れるまでは大変に感じるかもしれません。
ただし、クリーンルームは温度・湿度が管理されており、夏は涼しく冬は暖かい環境です。防塵服は薄手の素材が多く、意外と動きやすいという声もあります。
A. 24時間365日稼働のため、交代制勤務(シフト制)が基本です。主なシフト体制は以下の通りです。
- 2交代制
日勤(8時〜20時)と夜勤(20時〜翌8時)を1週間ごとなどに交代。1回の勤務時間は12時間と長めですが、休日は多く設定されることがあります。 - 3交代制
日勤(8時〜16時)、準夜勤(16時〜0時)、夜勤(0時〜8時)を3〜4日ごとに交代。1回の勤務時間は8時間と短めです。 - 4組3交代制
4つのチームが3つのシフトを担当し、常に1チームが休み。休日が多く取りやすいです。
夜勤には深夜手当(基本給の25%以上)が支給されるため、夜勤があるほうが収入は高くなります。生活リズムの管理や体調管理が重要です。
A. 一般向けの工場見学は行っていません。半導体工場は、企業秘密やセキュリティの観点から、一般公開していないことがほとんどです。
ただし、以下の方法で工場の様子を知ることができます。
- 各社の公式ウェブサイトや採用サイトで、工場紹介動画を見る
- YouTubeで工場紹介や製造プロセスの解説動画を探す
- 報道機関向けの工場公開のニュース映像を見る
- 企業の採用説明会やインターンシップに参加する(学生向け)
- 転職エージェント経由で職場見学の機会を得る(求職者向け)
就職・転職を真剣に検討している方なら、選考プロセスの中で工場見学の機会が得られることもあります。
半導体工場で働くための次のステップ
1. 情報収集
まずは各社の採用サイトや求人情報をチェックしましょう。TSMC、ラピダス、キオクシア、ルネサスエレクトロニクスなどの公式サイトで、募集職種や応募条件を確認できます。
2. 転職エージェントに相談
製造業や半導体業界に強い転職エージェントに登録すると、非公開求人の紹介や面接対策のサポートを受けられます。マイナビエージェント、リクルートエージェント、dodaなどが代表的です。
3. 派遣・期間工からスタート
いきなり正社員が不安なら、派遣や期間工としてスタートし、職場の雰囲気を確かめてから正社員登用を目指す方法もあります。
4. スキルアップ
理系の知識、PCスキル、英語力などを磨いておくと、採用や昇進で有利になります。基本情報技術者、電気工事士、危険物取扱者などの資格取得もおすすめです。
5. 企業研究を念入りに
企業の経営状況、待遇、社風、キャリアパスなどを調べ、自分に合った職場を選びましょう。口コミサイトや転職会議などで、実際の社員の声をチェックするのも有効です。
最後に
半導体工場は、日本の産業を支える重要な役割を担っています。2024年から2025年にかけての建設ラッシュは、まさに「100年に1度」のチャンスです。
未経験からでも挑戦でき、高収入も期待できる半導体工場での仕事。興味を持たれた方は、ぜひ一歩踏み出してみてはいかがでしょうか。あなたの挑戦が、日本の半導体産業復活の一翼を担うかもしれません。

