「仕事でミスが多くて怒られる」「何度言っても忘れ物をしてしまう」「集中力が続かない」…そんな悩みを抱えていませんか?
もしかしたら、それはADHDという発達障害の特性かもしれません。でも、どこで診断を受けたらいいのか、何科に行けばいいのか、分からないことだらけですよね。
ADHDは適切な診断と治療を受けることで、生活の質が大きく改善する可能性があります。この記事では、ADHDの診断について知っておきたい情報を、分かりやすくお伝えしていきます。
この記事で分かること
- ADHDの公式な診断基準と3つのタイプ
- 診断の具体的な流れとかかる期間・費用
- 何科を受診すべきか、病院の選び方
- 初診前に準備しておくべきこと
- 診断後に利用できる治療法と支援制度
- 子どもと大人で異なる診断のポイント
- よくある質問への回答
ADHDの診断とは?基本を理解しよう
まず、ADHDの診断について基本的なことを押さえておきましょう。
ADHDの3つの主要症状(不注意・多動性・衝動性)
ADHD(注意欠如・多動症)は、脳の発達特性によって生じる神経発達症のひとつです。「努力が足りない」「性格の問題」ではなく、脳の働き方の違いなんですね。
ADHDには大きく分けて3つの症状があります。
- 不注意:注意を持続することが難しい、細かいミスが多い、忘れ物や紛失が多いなど
- 多動性:じっとしていられない、落ち着きがない、過度におしゃべりなど
- 衝動性:思いついたらすぐ行動してしまう、順番を待てない、会話に割り込むなど
これらの症状の出方によって、不注意優勢型、多動・衝動性優勢型、混合型の3つのタイプに分類されます。
なぜ正式な診断が必要なのか
「ADHDかもしれない」と思ったとき、インターネットのセルフチェックをする方も多いと思います。でも、セルフチェックだけでは正式な診断にはなりません。
正式な診断が必要な理由
- 他の疾患(うつ病や不安障害など)との見極めが必要
- 適切な治療法を選択するため
- 薬物療法を受ける場合、医師の処方が必須
- 障害者手帳や支援制度を利用する際に診断書が必要
- 職場や学校での配慮を受けるため
医師による診断を受けることで、あなたの困りごとの原因が明確になり、具体的な対処法や治療につながります。診断は「レッテルを貼る」ためではなく、より良い生活を送るための第一歩なんです。
セルフチェックと医師の診断の違い
セルフチェックは「受診の目安」として活用できますが、これだけで判断するのは危険です。
医師による診断では次のようなことが行われます。
- 詳細な問診(生育歴、現在の困りごと、家族歴など)
- 標準化された評価スケールの実施
- 心理検査(知能検査や注意機能の検査など)
- 他の疾患との鑑別診断
- 診断基準に基づいた総合的な判断
つまり、医師の診断は多角的な評価に基づいた専門的な判断なんですね。セルフチェックで当てはまる項目が多かったら、それを「受診のきっかけ」として、ぜひ専門医に相談してみてください。
ADHDの公式診断基準【DSM-5準拠】
ADHDの診断には、国際的に認められた基準が使われています。現在もっとも広く使用されているのがDSM-5(精神疾患の診断・統計マニュアル第5版)です。
DSM-5による診断基準の詳細
DSM-5では、ADHDの症状を「不注意」と「多動性・衝動性」の2つのカテゴリーに分けて、それぞれ9項目ずつ定義しています。
| カテゴリー | 主な症状例 |
|---|---|
| 不注意 |
• 細かいミスが多い • 注意を持続するのが難しい • 話を聞いていないように見える • 指示に従えない、課題を完遂できない • 計画を立てるのが苦手 • 精神的努力を要する課題を避ける • 物をよくなくす • 気が散りやすい • 日常的な活動を忘れる |
| 多動性・衝動性 |
• そわそわする、手足をもじもじさせる • 席を離れてしまう • 不適切に走り回る、よじ登る • 静かに遊べない • じっとしていられない • 過度におしゃべり • 質問が終わる前に答え始める • 順番を待てない • 他人の邪魔をする、会話に割り込む |
診断に必要な5つの条件
症状があるだけでは診断されません。DSM-5では、以下の条件をすべて満たす必要があります。
ADHDと診断されるための5つの条件
- 症状の数:17歳以上は不注意または多動性・衝動性のいずれかで5項目以上、16歳以下は6項目以上
- 持続期間:症状が6ヶ月以上持続している
- 発症時期:12歳以前にいくつかの症状が存在していた
- 複数環境での影響:2つ以上の状況(家庭、学校、職場など)で症状が現れている
- 機能障害:社会的、学業的、職業的機能に明らかな支障がある
特に注目したいのが「12歳以前の症状」という条件です。これは、ADHDが子どもの頃から存在する発達特性であることを示しています。大人になってから初めて診断を受ける方も、よく振り返ると子どもの頃にも何らかのサインがあったことが多いんです。
不注意優勢型・多動衝動性優勢型・混合型の違い
症状の出方によって、ADHDは3つのタイプに分類されます。
- 混合型:不注意と多動性・衝動性の両方の症状が顕著に見られる。もっとも一般的なタイプです
- 不注意優勢型:主に不注意の症状が目立つ。「注意散漫」「ボーッとしている」と見られがち。大人の女性に多いタイプです
- 多動・衝動性優勢型:主に多動性と衝動性の症状が目立つ。子どもに多く、成長とともに不注意優勢型に変化することもあります
自分がどのタイプかを知ることで、より効果的な対処法や治療法を選択できるようになります。
子ども(12歳以前)と大人の診断基準の違い
年齢によって診断基準が少し異なります。
年齢による違い
- 16歳以下:不注意または多動性・衝動性で6項目以上必要
- 17歳以上:不注意または多動性・衝動性で5項目以上で可
これは、成長とともに症状の現れ方が変化することを考慮しているためです。例えば、子どもの頃は「教室で走り回る」という形で多動性が現れていても、大人になると「会議中に落ち着かない」「貧乏ゆすりが止まらない」といった形に変わることがあります。
また、大人の場合は仕事や人間関係での困難さがより顕在化しやすく、二次的にうつ病や不安障害を併発しているケースも少なくありません。そのため、診断の際には他の精神疾患との鑑別が特に重要になってきます。
ADHD診断の流れ|初診から確定診断まで
では、ADHDの診断を受けるには、どんな流れで進んでいくのでしょうか。ステップごとに詳しく見ていきましょう。
ステップ1:セルフチェックと受診の決断
1まずは自分の状態を振り返る
受診を考えるきっかけは人それぞれです。「仕事でミスが続いて注意された」「子育てがうまくいかない」「パートナーから指摘された」など、日常生活での困りごとが積み重なって、「もしかして…?」と思うことから始まります。
インターネット上には様々なADHDのセルフチェックリストがあります。これらは受診の目安として活用できますが、あくまで参考程度に考えてください。
受診を決断するポイントは次のような状況です。
- 日常生活や仕事に明らかな支障が出ている
- 自分なりに工夫しても改善しない
- 周囲の人から何度も指摘される
- 自己肯定感が低下している
- 二次的にうつ症状や不安感が出ている
「こんなことで病院に行っていいのかな」と迷う方もいるかもしれませんが、困っている気持ちがあれば、それは受診する十分な理由になります。
ステップ2:医療機関の選定と予約
2適切な病院を探して予約する
ADHDの診断は、主に精神科や心療内科で行われます。ただし、すべての精神科・心療内科がADHDの診療を行っているわけではありません。
医療機関を探す際のポイント。
- 「発達障害」「ADHD」の診療を明記しているか
- 大人(または子ども)の診療実績があるか
- 初診の予約待ちはどれくらいか
- 心理検査が院内で受けられるか
探し方としては、次のような方法があります。
- 発達障害者支援センターに相談
- 自治体の保健センターや精神保健福祉センターに問い合わせ
- かかりつけ医に紹介してもらう
- インターネットで「地域名 ADHD 診断」などで検索
予約待ちは医療機関によって大きく異なります。一般のクリニックなら1〜2週間程度ですが、専門外来では1〜3ヶ月待ちということも珍しくありません。予約時には、初診までの期間を確認しておくと安心ですね。
ステップ3:初診での問診(生育歴・現在の困りごと)
3医師との初回面談
初診では、主に問診が行われます。時間は30分〜1時間程度が一般的です。
医師が聞くことの例。
- 現在の困りごと:具体的にどんな場面で、どう困っているか
- 生育歴:子どもの頃の様子、学校での成績や行動、友人関係など
- 家族歴:家族に発達障害やADHDの傾向がある人がいるか
- 既往歴:これまでにかかった病気や精神科の受診歴
- 生活状況:現在の仕事、家族構成、生活リズムなど
特に重要なのが「子どもの頃のエピソード」です。通知表や母子手帳があれば持参すると良いでしょう。「忘れ物が多い」「授業中に集中できない」といった先生からのコメントが参考になります。
初診の時点では、まだ確定診断は出ないことが多いです。医師は情報を収集し、追加の検査が必要かどうかを判断します。
ステップ4:心理検査・評価スケール
4客観的な検査で状態を把握
問診だけでは判断が難しい場合、心理検査や評価スケールが実施されます。これらは診断を補助するためのツールで、数値化された客観的なデータを提供してくれます。
よく使われる検査・評価スケール
- ADHD-RS(ADHD Rating Scale):ADHDの症状の重症度を評価。18項目の質問に答える形式で、15〜20分程度で完了
- CAARS(Conners’ Adult ADHD Rating Scales):成人用のADHD評価スケール。自己評価版と観察者評価版がある
- ASRS(Adult ADHD Self-Report Scale):WHOが開発した成人用のスクリーニングツール。6項目の短縮版もあり
- WAIS-IV(ウェクスラー成人知能検査):知能の全体的なプロフィールを把握。処理速度やワーキングメモリの弱さなどが分かる。60〜90分程度かかる
- WISC-V(ウェクスラー児童用知能検査):子ども用の知能検査
これらの検査は、臨床心理士や公認心理師が実施することが多いです。すべての検査を受けるわけではなく、医師が必要と判断したものを選択します。
検査でわかること
- ADHDの症状の程度
- 不注意、多動性、衝動性のどれが強いか
- 認知機能の特徴(得意なこと、苦手なこと)
- 他の疾患との鑑別の参考情報
検査結果は、診断だけでなく治療計画を立てる際にも役立ちます。例えば、ワーキングメモリが弱いことが分かれば、メモを活用する工夫を取り入れるといった具合ですね。
ステップ5:診断結果の説明
5医師から診断結果を聞く
検査結果が出揃ったら、医師から診断結果の説明があります。通常は2回目以降の診察で伝えられることが多いです。
診断結果の説明では、次のようなことが伝えられます。
- ADHDの診断基準を満たしているかどうか
- 満たしている場合、どのタイプか(混合型、不注意優勢型など)
- 他の疾患の可能性(併存症の有無)
- 今後の治療方針
診断基準を満たさない「グレーゾーン」と言われるケースもあります。この場合でも、困りごとがあれば適切なサポートや対処法を提案してもらえます。診断がつかなくても、「困っている」という事実は変わらないので、遠慮せずに相談してみてくださいね。
診断にかかる期間と費用の目安
診断が確定するまでの期間は、検査の内容や医療機関によって異なりますが、初診から数週間〜2ヶ月程度が一般的です。
| 項目 | 費用の目安(3割負担) |
|---|---|
| 初診料 | 3,000〜5,000円 |
| 再診料 | 1,500〜2,500円 |
| 心理検査(WAIS-IVなど) | 5,000〜10,000円 |
| 診断書作成 | 3,000〜5,000円(保険適用外) |
トータルで見ると、診断までに1万〜2万円程度かかることが多いです。ただし、これは保険適用(3割負担)の場合です。自由診療のクリニックでは、もっと高額になることもあります。
経済的な負担が心配な場合は、自立支援医療制度を利用できる場合もあります。この制度を使うと、医療費の自己負担が1割に軽減されます。詳しくは受診先の医療機関や自治体の窓口で相談してみてください。
ADHD診断はどこで受けられる?病院の選び方
「ADHDの診断を受けたい」と思っても、どこに行けばいいのか迷いますよね。適切な医療機関を選ぶことは、正確な診断と効果的な治療につながる大切なステップです。
何科を受診すべき?(精神科・心療内科・児童精神科)
ADHDの診断は、主に次の診療科で行われます。
- 精神科:心の病気全般を扱う診療科。大人のADHD診療の中心となります
- 心療内科:心と体の両面から診る診療科。ストレスによる体調不良なども扱う
- 児童精神科:子ども専門の精神科。18歳未満の発達障害診療が専門
- 小児科(発達外来):小児科の中でも発達障害を専門に診る外来
基本的には、大人なら精神科または心療内科、子どもなら児童精神科や小児科の発達外来を受診すると良いでしょう。
注意点
すべての精神科・心療内科がADHDの診療を行っているわけではありません。特に大人のADHDは比較的新しい領域なので、専門としていない医療機関もあります。必ず事前に「大人の発達障害」「ADHD」の診療を行っているか確認しましょう。
一般クリニックvs専門外来の違い
医療機関には、大きく分けて一般のクリニックと専門外来があります。それぞれにメリットとデメリットがあります。
一般クリニックのメリット・デメリット
- ✓ 予約が比較的取りやすい(1〜2週間程度)
- ✓ 通いやすい場所にあることが多い
- ✓ 継続的な通院がしやすい
- ✗ ADHDの診療経験が少ない場合がある
- ✗ 心理検査を外部委託していることがある
専門外来のメリット・デメリット
- ✓ 豊富な診療実績がある
- ✓ 最新の治療法に詳しい
- ✓ 複雑なケースにも対応できる
- ✓ 院内で心理検査が受けられる
- ✗ 予約待ちが長い(1〜3ヶ月以上)
- ✗ 遠方にあることが多い
どちらを選ぶかは、緊急度や症状の複雑さによって決めると良いでしょう。急いでいる場合や症状がシンプルなら一般クリニック、じっくり診てもらいたい場合や他の疾患も疑われる場合は専門外来がおすすめです。
【年齢別】おすすめの受診先
年齢によって、適切な受診先が異なります。
18歳以下の場合
- 小児科(発達外来)
- 児童精神科
- 子どもの心の診療科
- 地域の発達障害専門クリニック
子どもの場合は、学校生活での困りごとが診断のきっかけになることが多いです。担任の先生やスクールカウンセラーに相談してから受診することもよくあります。
18歳以上の場合
- 精神科クリニック(発達障害対応)
- 心療内科
- 大学病院や総合病院の精神科(発達障害外来)
- 発達障害専門クリニック
大人の場合は、仕事での困難や人間関係の問題から受診を考える方が多いです。「大人の発達障害」を専門に診ている医療機関を選ぶことが重要です。
信頼できる医療機関の探し方
では、具体的にどうやって医療機関を探せばいいのでしょうか。以下の方法を試してみてください。
1. 発達障害者支援センターに相談
各都道府県に設置されている公的機関です。地域の医療機関情報を提供してくれたり、相談に乗ってくれたりします。無料で利用できるので、まずはここに電話してみるのも良い方法です。
2. 自治体の保健センターや精神保健福祉センターに問い合わせ
市区町村の保健センターや都道府県の精神保健福祉センターでも、医療機関の情報提供や相談を受けています。
3. かかりつけ医に紹介してもらう
普段通っている内科や心療内科がある場合、そこから専門医を紹介してもらうのもスムーズです。紹介状があると、初診がスムーズになることもあります。
4. インターネットで検索
「地域名 ADHD 診断」「地域名 発達障害 病院」などで検索すると、医療機関のホームページが見つかります。診療内容や医師のプロフィールを確認しましょう。
医療機関選びのチェックポイント
- □ 「発達障害」「ADHD」の診療を明記しているか
- □ 大人(または子ども)の診療実績があるか
- □ 医師の専門性(精神科専門医、児童精神科医など)
- □ 心理検査を院内で実施できるか
- □ 初診の予約待ち期間
- □ アクセスの良さ(継続通院を考えて)
- □ 口コミや評判(参考程度に)
初診予約前に確認すべきポイント
医療機関が決まったら、予約の電話をする時に次のことを確認しておくとスムーズです。
- 初診の予約可能日:いつ頃受診できるか
- 必要な持ち物:保険証、紹介状、過去の診療情報など
- 事前の問診票:郵送やウェブで事前記入が必要か
- 費用の目安:初診料や検査費用
- 診察時間:初診にどのくらいの時間がかかるか
電話で予約する際には、「ADHDの診断を希望している」ことを明確に伝えましょう。そうすることで、適切な診察枠を用意してもらえます。
診断前に準備しておくべきこと
初診をより有意義なものにするために、事前に準備しておくと良いことがあります。少し手間はかかりますが、正確な診断につながる大切なステップです。
問診票の記入ポイント
多くの医療機関では、初診前に問診票の記入を求められます。この問診票は診断の重要な資料になるので、丁寧に記入しましょう。
問診票で聞かれることの例
- 現在困っていること(具体的に)
- いつ頃から症状があるか
- 子どもの頃の様子
- 学校や職場での状況
- 家族構成と家族歴
- 既往歴(これまでの病気や治療)
- 服用中の薬
記入のコツは、具体的なエピソードを書くことです。例えば、「集中できない」だけでなく、「会議中に話を聞いていても内容が頭に入らず、議事録を見返さないと何も覚えていない」といった具合です。
困りごとの書き方のコツ
- 「いつ」「どこで」「どんな場面で」困るか具体的に
- 頻度(毎日、週に数回など)も記載
- そのせいで「どんな影響」があるか(叱られる、信頼を失う、など)
- 自分なりに試した対処法とその結果
幼少期の情報をどう集めるか
ADHDの診断では、「12歳以前に症状があったか」が重要なポイントになります。でも、大人になってから受診する場合、子どもの頃のことを思い出すのは難しいですよね。
幼少期の情報を集める方法
- 通知表を見返す:「落ち着きがない」「忘れ物が多い」「もう少し集中力があれば」といった先生のコメントが手がかりになります
- 母子手帳を確認:発達の記録や健診時の指摘事項が参考になる場合があります
- 親や兄弟に聞く:子どもの頃の様子を覚えている家族に聞いてみましょう
- 写真やアルバムを見る:当時の生活の様子を思い出すきっかけになります
完璧に思い出せなくても大丈夫です。「よく忘れ物をしていた気がする」といった断片的な記憶でも、診断の参考になります。
家族からの情報提供の重要性
本人が気づいていない症状や行動を、家族は客観的に観察していることがあります。可能であれば、家族に同伴してもらうことをおすすめします。
特に子どもの診断では、保護者からの情報が不可欠です。学校での様子、友達との関わり方、家庭での行動など、詳しく伝えられるようにしておきましょう。
大人の場合も、パートナーや親に同行してもらうと良いです。「本人は困っていないと思っているけど、周りが困っている」というケースもあるので、客観的な視点が診断に役立ちます。
持参すべき書類・資料
初診時に持っていくと良いものをまとめました。
持参すべきもの
- □ 健康保険証
- □ お薬手帳(服用中の薬がある場合)
- □ 紹介状(あれば)
- □ これまでの診療記録や診断書(精神科受診歴がある場合)
- □ 記入済みの問診票(事前記入の場合)
- □ 通知表のコピー(子どもの頃のもの)
- □ 母子手帳(特に発達の記録部分)
- □ 困りごとをメモしたノート
すべてが揃っていなくても受診はできますが、情報が多いほど正確な診断につながります。準備できるものは用意しておきましょう。
ADHDと間違えやすい他の疾患
ADHDの症状は、他の疾患と似ていることがあります。正確な診断のためには、これらの疾患との鑑別診断が重要です。
うつ病・不安障害との鑑別
集中力の低下や意欲の低下は、うつ病でもよく見られる症状です。また、落ち着きのなさや焦燥感は不安障害でも現れます。
ADHDとうつ病・不安障害の違い
- 発症時期:ADHDは子どもの頃から症状がある。うつ病や不安障害は成人後に発症することが多い
- 症状の変動:うつ病は気分に波がある。ADHDは比較的一定
- きっかけ:うつ病や不安障害はストレスがきっかけになることが多い。ADHDは特定のきっかけがない
ただし、ADHDとうつ病・不安障害は併存することも多いです。ADHDによる失敗体験の積み重ねから、二次的にうつ病や不安障害を発症するケースは珍しくありません。
この場合、どちらが主で、どちらが従なのかを見極めることが治療の鍵になります。専門医はこうした複雑なケースにも対応できるので、複数の症状がある場合は遠慮せず伝えてくださいね。
ASD(自閉スペクトラム症)との違いと併存
ASD(自閉スペクトラム症)も発達障害のひとつで、ADHDと症状が重なる部分があります。
ASDの主な特徴
- 社会的コミュニケーションの困難
- 限定的な興味や反復的な行動
- 感覚過敏または鈍麻
- 暗黙のルールを理解するのが苦手
ADHDとASDは併存することもあり、その場合は両方の診断がつきます。以前は「どちらか一方」と考えられていましたが、現在のDSM-5では併存診断が可能になっています。
併存している場合、それぞれの特性に合わせた支援が必要になるので、正確な診断が大切です。
睡眠障害・甲状腺機能異常などの身体疾患
意外に思われるかもしれませんが、身体的な病気がADHD様の症状を引き起こすこともあります。
ADHDと間違えやすい身体疾患
- 睡眠障害:慢性的な睡眠不足は集中力低下や衝動性を引き起こします
- 甲状腺機能亢進症:落ち着きのなさ、集中困難が現れます
- 鉄欠乏性貧血:疲労感、集中力低下が起こります
- 薬の副作用:一部の薬が注意力に影響することがあります
そのため、ADHDの診断過程では、血液検査などで身体的な原因を除外することもあります。
「グレーゾーン」の正しい理解
「ADHDの傾向はあるけれど、診断基準を完全には満たさない」というケースを、俗に「グレーゾーン」と呼びます。
グレーゾーンの場合でも、日常生活で困りごとがあれば、適切な支援や対処法を受けることができます。診断がつかなくても、医師やカウンセラーと相談しながら、生活の工夫や環境調整を進めていくことが大切です。
大切なポイント
診断は「白か黒か」ではなく、「困っているかどうか」「支援が必要かどうか」が重要です。診断がつかなくても、あなたの困りごとは軽視されるべきものではありません。
診断が確定した後の対応
ADHDの診断を受けたら、それで終わりではありません。むしろ、ここからが新しいスタートです。診断後にどんな治療や支援が受けられるのか見ていきましょう。
治療の3つの柱(薬物療法・心理社会的治療・環境調整)
ADHDの治療は、大きく分けて3つのアプローチがあります。多くの場合、これらを組み合わせることで効果が高まります。
1. 薬物療法
ADHDの治療薬には、主に次のようなものがあります。
- メチルフェニデート製剤(コンサータ):中枢神経刺激薬。集中力を高める効果がある。18歳以上も使用可能
- アトモキセチン(ストラテラ):非中枢神経刺激薬。効果が出るまで数週間かかるが、副作用が比較的少ない
- グアンファシン(インチュニブ):非中枢神経刺激薬。衝動性や多動性を抑える。18歳以上も使用可能
- リスデキサンフェタミン(ビバンセ):中枢神経刺激薬。効果が緩やかに現れ持続時間が長い。現在は18歳未満のみ承認
薬は「症状を抑える」ためのもので、根本的に治すものではありません。でも、薬によって症状が軽減されることで、仕事や生活がしやすくなり、自己肯定感が高まることが期待できます。
薬物療法のポイント
- 効果や副作用には個人差がある
- 適切な量を見つけるまで調整が必要
- 定期的に医師と相談しながら継続
- 「薬を飲みたくない」という気持ちも医師に伝えてOK
2. 心理社会的治療
カウンセリングや心理療法も重要な治療法です。
- 認知行動療法(CBT):考え方や行動パターンを見直す方法。「どうせ自分はダメだ」といったネガティブな思考を変えていきます
- ペアレントトレーニング:子どもの場合、親が適切な関わり方を学ぶプログラム
- ソーシャルスキルトレーニング(SST):対人関係のスキルを学ぶ
- 心理教育:ADHDについて正しく理解することで、自分を責めなくなる
これらの療法は、長期的な生活の質の向上につながります。薬だけではカバーできない部分をサポートしてくれるんですね。
3. 環境調整
周囲の環境を工夫することで、ADHDの特性による困難を減らすことができます。
職場での環境調整の例。
- 静かな場所で作業できるようにする
- タスクを細かく分けて指示してもらう
- 締め切りをこまめに設定する
- リマインダーやアラームを活用する
- メモやチェックリストを使う
家庭での工夫の例。
- 物の定位置を決める
- カレンダーやホワイトボードで予定を見える化
- 音や視覚刺激を減らす(テレビをつけっぱなしにしないなど)
環境調整は、すぐに始められて効果も実感しやすいので、ぜひ取り入れてみてください。
利用できる支援制度一覧
ADHDと診断されると、様々な公的支援制度を利用できる場合があります。
精神障害者保健福祉手帳
一定以上の生活上の制約がある場合、精神障害者保健福祉手帳を取得できます。等級は1級〜3級まであり、ADHDの場合は主に2級または3級になることが多いです。
手帳を持つことで受けられるメリット。
- 税金の控除(所得税、住民税など)
- 公共料金の割引(携帯電話、NHK受信料など)
- 公共交通機関の割引
- 障害者雇用枠での就労
- 一部の施設の入場料割引
手帳の取得は任意です。「障害者」という言葉に抵抗がある方もいるかもしれませんが、必要なサポートを受けるためのツールと考えると良いでしょう。
自立支援医療制度
精神科の通院医療費の自己負担を軽減する制度です。通常3割負担のところが1割負担になります。長期的に通院する場合は、経済的な負担が大きく軽減されます。
障害者雇用制度
障害者手帳を持っている場合、障害者雇用枠で働くことができます。一般雇用に比べて、次のようなメリットがあります。
- 配慮を受けやすい(業務内容、勤務時間など)
- 就労支援機関のサポートを受けられる
- 定着支援を受けられる
一方で、給与が低めになることもあるので、自分の状況に合わせて選択しましょう。
就労支援サービス
働くことに困難がある場合、次のような支援サービスが利用できます。
- 就労移行支援:一般企業への就職を目指すためのトレーニング。2年間利用可能
- 就労継続支援A型・B型:働く場を提供し、訓練も行う
- 障害者就業・生活支援センター:就職活動や職場定着の相談ができる
診断書の取得方法と用途
診断書は、診断が確定した後に医師に依頼して作成してもらいます。
診断書の用途
- 精神障害者保健福祉手帳の申請
- 自立支援医療の申請
- 障害年金の申請
- 職場への配慮依頼
- 学校への配慮依頼
- その他の福祉サービスの利用
診断書の作成には、通常3,000〜5,000円程度の費用がかかります(保険適用外)。用途によって必要な内容が異なるので、何のために必要なのかを医師に伝えましょう。
作成までには数日〜1週間程度かかることが多いです。急ぎの場合は、早めに依頼しておくと安心ですね。
家族や職場への伝え方
ADHDの診断を受けたことを、家族や職場に伝えるかどうか、どう伝えるかは難しい問題です。
伝えるメリット
- 理解とサポートを得られる
- 配慮を受けやすくなる
- 誤解が減る(「やる気がない」と思われなくなる)
- 自分自身も楽になる
伝えるデメリット・リスク
- 偏見や誤解を受ける可能性
- 過剰な配慮や特別扱いされる
- キャリアに影響する可能性
伝えるかどうかは自分で決めて良いことです。無理に全員に言う必要はありません。信頼できる人から少しずつ、というのも一つの方法です。
伝え方のポイント
- 「病気」ではなく「特性」として説明
- 具体的にどんな困りごとがあるか伝える
- どんなサポートがあると助かるか具体的に伝える
- できることとできないことを明確に
- 前向きな姿勢を示す(改善に取り組んでいることなど)
職場に伝える場合は、まず産業医や人事部門に相談してみるのも良いでしょう。配慮を受けるための仕組みが整っている企業も増えています。
【年齢別】ADHDの診断で知っておくべきこと
ADHDの診断や症状の現れ方は、年齢によって異なる特徴があります。子どもと大人、それぞれのポイントを見ていきましょう。
子どものADHD診断の特徴
子どもの場合、学校生活での困難がきっかけで診断につながることが多いです。
子どもによく見られる症状
- 授業中に席を離れる、立ち歩く
- 授業中に集中できず、ボーッとしている
- 忘れ物が非常に多い
- 友達とのトラブルが多い(順番を待てない、ルールを守れない)
- 宿題を最後まで終わらせられない
- 整理整頓ができない
学校との連携
子どもの診断では、学校からの情報が非常に重要です。担任の先生に次のような情報を提供してもらうと良いでしょう。
- 授業中の様子
- 友達との関わり方
- 宿題や課題の取り組み状況
- 得意なこと、苦手なこと
診断後も、学校と連携して個別の支援計画を立てることが大切です。通級指導や特別支援学級の利用も選択肢の一つになります。
保護者の役割
子どものADHD診断と治療において、保護者の理解とサポートは不可欠です。
- 子どもの特性を理解し、責めない
- できたことを積極的に褒める
- 環境を整える(視覚的スケジュール、整理しやすい収納など)
- 学校との橋渡し役になる
- ペアレントトレーニングを受ける
「親の育て方が悪かった」と自分を責める必要はありません。ADHDは脳の発達特性であり、育て方が原因ではないのです。
大人のADHD診断の特徴
大人のADHDは、子どもの頃には気づかれず、社会に出てから顕在化することがあります。
成人してから診断されるケース
なぜ大人になってから気づくのでしょうか。いくつかの理由があります。
- 学生時代は症状が目立たなかった:学校のような構造化された環境では、なんとか適応できていた
- 社会人になって要求が増えた:複数のタスク管理、時間管理、対人関係など、求められるスキルが増えた
- 周囲のサポートがなくなった:親や先生のサポートがなくなり、自分で管理する必要が出てきた
- 不注意優勢型だった:多動性が目立たないタイプは、見過ごされやすい
仕事・人間関係での困難
大人のADHDでよくある困りごと。
- 仕事面:ケアレスミスが多い、締め切りを守れない、書類を紛失する、優先順位がつけられない、遅刻が多い
- 人間関係:約束を忘れる、空気が読めない、衝動的に発言して後悔する、人の話を最後まで聞けない
- 生活面:部屋が片付けられない、お金の管理ができない、忘れ物が多い
これらの困難から、うつ病や不安障害を併発してしまうこともあります。そうなる前に、早めに専門医に相談することが大切です。
女性特有の診断の難しさ
女性のADHDは、男性に比べて診断が遅れやすいと言われています。
その理由。
- 不注意優勢型が多く、多動性が目立たない
- 社会的に「おとなしい女性」として受け入れられやすい
- コミュニケーション能力でカバーしてしまう
- 月経周期によるホルモンの変動で症状が変化する
女性の場合、妊娠・出産・育児といったライフイベントをきっかけに、症状が顕在化することもあります。「育児がうまくできない」「家事が回らない」と感じたら、ADHDの可能性も考えてみましょう。
よくある質問(FAQ)
はい、あります。セルフチェックは簡易的なスクリーニングツールで、すべての症状を網羅しているわけではありません。また、自分では気づいていない症状もあります。医師の診断では、問診や心理検査など多角的な評価が行われるため、セルフチェックの結果とは異なることがあります。逆に、セルフチェックで多く当てはまっても診断されないこともあります。気になる症状がある場合は、セルフチェックの結果に関わらず受診してみてください。
医療機関や症状の複雑さによって異なりますが、通常は2〜5回程度の通院で診断が確定します。初診で問診を行い、2回目以降に心理検査や追加の評価を実施し、結果を踏まえて診断が下されます。ただし、他の疾患との鑑別が必要な場合や、症状が複雑な場合は、それ以上かかることもあります。診断後も定期的な通院が必要になることが多いです。
保険適用(3割負担)の場合、診断までにトータルで1万〜2万円程度が目安です。内訳は、初診料3,000〜5,000円、再診料1,500〜2,500円、心理検査5,000〜10,000円程度です。診断書が必要な場合は、別途3,000〜5,000円かかります(保険適用外)。自立支援医療制度を利用すると、自己負担が1割に軽減されるので、継続的に通院する場合は検討してみてください。
診断が確定してから診断書を依頼すると、通常は数日〜1週間程度で作成されます。即日発行は難しいことが多いです。診断書の内容は用途(手帳申請、職場への提出など)によって異なるため、何のために必要なのかを医師に明確に伝えましょう。費用は3,000〜5,000円程度で、保険適用外です。急ぎの場合は、早めに依頼することをおすすめします。
初診からオンライン診療のみでADHDの診断を行うことは、現状では難しい場合が多いです。診断には詳細な問診や心理検査が必要なため、最低でも初診は対面での受診が求められることがほとんどです。ただし、初診後の継続的な診察や薬の処方については、オンライン診療が可能な医療機関もあります。まずは対面で診断を受け、その後の通院方法について医師に相談してみましょう。
診断結果に納得できない、または不安がある場合は、セカンドオピニオンを求めることは全く問題ありません。ADHDの診断は複雑で、医師によって判断が分かれることもあります。特に、グレーゾーンと言われた場合や、診断がつかなかったけれど困りごとが続いている場合は、別の医師の意見を聞くことをおすすめします。セカンドオピニオンを求めることは、より正確な診断と適切な治療につながる大切なステップです。
はい、可能です。完璧に思い出せなくても大丈夫です。通知表や母子手帳などの客観的な資料があれば参考になりますし、親や兄弟に当時の様子を聞くこともできます。また、現在の症状の詳細な評価や心理検査の結果も診断の重要な材料になります。「よく忘れ物をしていた気がする」といった断片的な記憶でも、医師に伝えてみてください。医師は、現在の症状と照らし合わせながら総合的に判断します。
まとめ|ADHD診断は人生を変える第一歩
ここまで、ADHDの診断について詳しく見てきました。最後に、重要なポイントをまとめます。
この記事の重要ポイント
- ADHDは脳の発達特性で、適切な診断と治療で生活の質が改善できる
- 診断にはDSM-5の基準が使われ、問診・検査・総合評価が行われる
- 受診先は大人なら精神科・心療内科、子どもなら児童精神科や小児科
- 診断までに数週間〜2ヶ月、費用は1〜2万円程度が目安
- 治療は薬物療法・心理療法・環境調整の組み合わせが効果的
- 診断後は様々な支援制度を利用できる
「もしかしてADHDかも」と思いながら、受診をためらっている方もいるかもしれません。「こんなことで病院に行っていいのかな」「診断されたらどうしよう」と不安に感じるのは自然なことです。
でも、診断は「レッテル」ではなく、「理解」と「サポート」への扉なんです。診断を受けることで、長年の「なぜ自分はうまくできないんだろう」という疑問に答えが見つかります。そして、適切な治療や支援を受けることで、生活が大きく改善する可能性があります。
ADHDと診断されても、あなたはあなたです。診断は、これまで頑張ってきた自分を認め、これからをもっと楽に生きるための情報と考えてみてください。
一人で悩まず、まずは専門医に相談してみませんか?あなたの人生をより良くするための第一歩を、今日から踏み出しましょう。
次のアクション
- お住まいの地域の発達障害者支援センターに連絡してみる
- 近隣でADHD診療を行っている医療機関を検索する
- 通知表や母子手帳など、子どもの頃の資料を探してみる
- 困りごとをノートに書き出してみる
- 信頼できる家族や友人に相談してみる
小さな一歩から始めて大丈夫です。あなたのペースで進んでいきましょう。
この記事があなたの「困った」を「分かった」に変えるきっかけになれば幸いです。
より良い明日のために、前に進んでいきましょう。
