記念日のディナーや大切な会食で、フランス料理のお店を予約することになったという方もいるのではないでしょうか。コース料理の流れやテーブルマナーがわからず、少し身構えてしまう方も多いようです。フランス料理と聞くと格式高いイメージが先に立ちますが、家庭でも作れる素朴な郷土料理から生まれたメニューもたくさんあります。この記事では、フランス料理の基本から代表的なメニュー、コースの流れとマナー、身近な楽しみ方まで、順を追って紹介していきます。
🍽️この記事でわかること
- ✓フランス料理が「世界三大料理」と呼ばれる理由
- ✓ソースやコースなど、フランス料理ならではの特徴
- ✓前菜から肉料理まで、代表的なメニューの名前と特徴
- ✓コースの流れと、食事の場で困らないための基本マナー
- ✓ビストロやブラッスリーなど、お店選びのポイント
目次
フランス料理とは?世界三大料理と呼ばれる理由
フランス料理の基本的な定義と歴史的背景
フランス料理とは、フランスで育まれてきた料理全体を指す言葉です。地方ごとに受け継がれてきた素朴な郷土料理から、宮廷で磨き上げられてきた華やかな料理まで、幅広いスタイルを含んでいます。
フランス料理の骨格が整えられたのは17世紀ごろといわれています。当時の料理人ラ・ヴァレンヌ(本名フランソワ・ピエール、1615年ごろ〜1678年)が1651年に著した『Le Cuisinier françois』は、フランスで最初期の本格的なレシピ集とされ、当時の宮廷料理の様子を今に伝えています。この時代にオートキュイジーヌ(Haute cuisine、直訳で「高級料理」)と呼ばれる格式高い様式が確立し、これが現在まで続くフランス料理の伝統的なモデルになったと考えられています。
世界三大料理(フランス・中華・トルコ)に数えられる理由
フランス料理は、中華料理・トルコ料理とともに「世界三大料理」と呼ばれることがあります。ただしこの呼び方が、いつ、誰によって決められたのかについては、はっきりとした記録が残っているわけではないようです。
この点について、立命館大学食マネジメント学部の南直人教授は、宮廷料理として体系化されてきたかどうかが、日本料理やイタリア料理を含めない判断につながっていると分析しています。つまり「世界で一番おいしい3つの料理」という意味というより、宮廷文化を背景に洗練されてきたかどうかが分かれ目になっている、という見方が近いようです。この背景を知っておくと、フランス料理を少し違った角度から楽しめるでしょう。
フランス料理ならではの3つの特徴
食材に合わせて作り込む「ソース文化」
フランス料理を語るうえで欠かせないのが、ソースの豊かさです。フォンドボー(仔牛の骨や肉を長時間煮出した、うまみの詰まった出し汁)を土台に、ベシャメルソース(牛乳と小麦粉、バターから作る白いソース)やデミグラスソース(褐色の基本ソースであるブラウンソースに、さらにフォンドボーを加えて煮詰めた濃厚なソース)など、料理や食材に合わせてさまざまなソースが作り込まれます。同じ食材でもソースが変わるだけでまったく違う一皿に仕上がる点は、フランス料理らしさのひとつといえるでしょう。
一皿ずつ味わう「コース料理」の文化
前菜からデザートまで、料理を一皿ずつ順番に味わうスタイルもフランス料理の大きな特徴です。温かいうちに味わってもらうための工夫が込められていると考えられ、素材やソースの繊細な違いをじっくり楽しめます。コースの詳しい流れやマナーについては、後の章で紹介します。
地方ごとに異なる郷土料理の豊かさ
フランス料理というと宮廷料理のイメージが強いかもしれませんが、地方ごとに育まれてきた郷土料理も見逃せない魅力です。地方によって気候や特産品が異なるため、料理の個性もさまざまです。代表的な地方料理を表にまとめました。
| 地方 | 代表的な料理 | 特徴 |
|---|---|---|
| ブルゴーニュ地方 | ブフ・ブルギニョン | 牛肉を赤ワインでじっくり煮込んだ料理 |
| ブルターニュ地方 | ガレット | そば粉で作った生地に卵やハムをのせて焼く料理 |
| プロヴァンス地方(マルセイユ) | ブイヤベース | 魚介とサフランで仕立てた海の幸のスープ |
旅行先やレストランで地方名を見かけたら、その土地ならではの食材や調理法に注目してみると、フランス料理をより深く楽しめるでしょう。
知っておきたい代表メニュー
前菜・スープの定番料理
コースの最初に登場する前菜やスープには、次のような定番メニューがあります。
- テリーヌ 肉や魚のペーストを型に入れて冷やし固めた前菜
- エスカルゴのブルゴーニュ風 かたつむりをにんにくとバターで香りよく仕上げた、ブルゴーニュ地方の名物料理
- ニース風サラダ トマトやゆで卵、アンチョビなどを盛り合わせた、南仏ニース発祥のサラダ
- オニオングラタンスープ あめ色に炒めた玉ねぎのスープにチーズをのせて焼いた一品
魚料理・肉料理の定番料理
メインとなる魚料理・肉料理には、次のようなメニューがよく登場します。ソースとの組み合わせによって表情が変わるのも、メイン料理ならではの楽しみです。
- ムニエル 魚に小麦粉をまぶし、バターで香ばしく焼き上げた料理
- コンフィ 肉を低温の油でじっくり火を通す調理法、またはその料理
- ブフ・ブルギニョン 牛肉を赤ワインで煮込んだ、ブルゴーニュ地方の郷土料理
- コック・オ・ヴァン 鶏肉を赤ワインで煮込んだ料理(コックは鶏、ヴァンはワインを意味する言葉です)
高級食材として、フォアグラ(肥育したカモやガチョウの肝臓)が使われることもあります。表面を香ばしく焼き上げる「ポワレ」という調理法で提供されることが多いようです。フォアグラはキャビアやトリュフとともに「世界三大珍味」と呼ばれることがありますが、こちらも世界三大料理と同じく、選ばれた明確な基準が残っているわけではないようです。
パン・スイーツの定番メニュー
食事を締めくくるパンやスイーツも、フランス料理の楽しみのひとつです。
- バゲット 細長い棒状の、フランスを代表するパン
- クロワッサン バター生地を折り込んで焼き上げた、層状のパン
- ミルフィーユ パイ生地とクリームを何層にも重ねた菓子。フランス語で「千枚の葉」という意味を持ちます
- タルト・タタン りんごをカラメルで煮て、パイ生地にのせて焼き上げた菓子
気になる料理名を見つけたら、次にレストランを訪れたときに注文してみると、名前と味が結びついて記憶に残りやすくなるでしょう。
コースの流れと基本マナー
前菜からデザートまでの一般的な順番
フランス料理のコースは、軽い料理から少しずつボリュームのある料理へと進むように組み立てられています。一般的な流れは、次のようになります。
格式高いフルコースではアミューズ(食前の軽いひと口)やチーズなどが加わり10品前後、普段使いしやすいコースでは7、8品程度で構成されることが多いようです。品数はお店の方針によって幅があるので、あくまで目安として捉えておくといいでしょう。
ナイフ・フォークの使い方の基本
カトラリーは外側に置かれているものから順番に使うのが基本です。食事の途中で手を止めるときは、ナイフとフォークをお皿の上でハの字になるように置きます。食べ終えたら、ナイフとフォークを揃えてお皿に置くと「ごちそうさま」の合図になります。日本では、フォークの背を下に向けて時計の4時の位置に置く作法が広く知られています。
知らないと恥ずかしい?NG行動と服装の目安
一緒に食事をしている人が食べ終わるまでは、自分の皿を先に片付けようとしないのがマナーとされています。肘をテーブルにつく、大きな音を立てて食べるといった振る舞いも避けたいところです。ナプキンは着席後すぐに広げてひざの上に置き、口元を拭うときは内側の面を使うと汚れが目立ちにくくなります。食事の途中で席を立つときは、軽くたたんで椅子の上に置いておくと、食事がまだ続いていることが伝わります。服装は、男性はジャケットを、女性は華美になりすぎない装いを選ぶといいでしょう。
「格式高い」だけじゃない。身近な楽しみ方
ビストロ・ブラッスリー・レストラン・グランメゾンの違いと選び方
フランス料理のお店には、いくつかの呼び方があります。
- ビストロ 気軽に立ち寄れる小さな飲食店や居酒屋を意味する言葉
- ブラッスリー もとはビール醸造所を意味し、大衆的で気軽な雰囲気の店を指す言葉
- レストラン コース料理を提供する、あらたまった食事の場を指す言葉
- グランメゾン 最高級のフランス料理店を指す和製フランス語で、フランス本国では使われていません
特にレストランやグランメゾンクラスの店は、ミシュランガイド(星の数で料理を評価するレストランガイド)やゴ・エ・ミヨ(20点満点で評価するフランス発祥のレストランガイド)といった格付けガイドで紹介されることもあります。星や点数はお店選びの参考になりますが、格付けにとらわれすぎず、気になるお店があれば訪れてみるのもいいでしょう。普段の食事にはビストロやブラッスリー、特別な日にはグランメゾンというように、シーンに合わせて選び分けると失敗が少なくなります。
家庭でも作れる定番フランス家庭料理
フランス料理は、レストランだけのものではありません。家庭でも作りやすい定番料理があります。
- ラタトゥイユ なす、ズッキーニ、パプリカなどの夏野菜をトマトで煮込んだ、南フランスの家庭料理
- ポトフ 牛肉と野菜をやわらかく煮込んだ、素朴な煮込み料理
- キッシュ 卵と生クリームの生地に具材を入れて焼いたパイ料理
休日に少し手をかけて、ラタトゥイユやポトフを作ってみるのも、フランス料理を身近に感じるきっかけになるでしょう。
イタリア料理との違いから見るフランス料理らしさ
フランス料理とイタリア料理は、ともに世界的に人気の高いヨーロッパ料理ですが、成り立ちには違いがあるといわれています。フランス料理は宮廷を中心に体系化されてきたのに対し、イタリア料理は家庭料理として発展し、地方ごとの独自色が強いのが特徴のようです。
「16世紀にイタリアから嫁いだ王妃が料理人を連れてきたことで、フランス料理が洗練された」という話を耳にしたことがある方もいるかもしれません。これは長く語り継がれてきた逸話ですが、2018年に刊行された研究書では、フランス・イタリア・アメリカの歴史家11名がこの逸話を検証し、当時の記録にはこれを裏付けるものが見つからなかったと報告しています。後世に作られた話ではないかとする見方も強まっているようです。フランス料理とイタリア料理の関係は、ひとつの逸話だけでなく、両国の長い交流の歴史から捉えると、より興味深く感じられるでしょう。
よくある質問
Qフランス料理とイタリア料理の違いは何ですか?
Aフランス料理は宮廷料理として体系化されてきたのに対し、イタリア料理は家庭料理として発展し、地方色が強いといわれています。ソースを作り込むフランス料理に対し、イタリア料理は素材の味を生かす傾向があります。
Qフランス料理店に行くときの服装はどうすればいいですか?
A店の格式によって異なりますが、男性はジャケット、女性は華美になりすぎない装いが目安です。心配なときは、予約時にドレスコードを確認しておくといいでしょう。
Qフレンチのコースは何品くらいありますか?
A一般的なコースは7、8品、格式高いフルコースは10品前後が目安とされています。品数はお店によって幅があります。
Qビストロとレストランの違いは何ですか?
Aビストロは気軽に利用できる小さな飲食店を指す言葉で、ドレスコードもなく普段使いしやすいのが特徴です。レストランはより格式のある店を指すことが多いようです。
Qフランス料理でナイフとフォークが複数あるときはどう使えばいいですか?
A外側に置かれているものから順番に使っていくのが基本です。料理が運ばれてくるたびに、対応するカトラリーを使うと覚えておけば迷いにくくなります。
Q家庭でも作れるフランス料理はありますか?
Aラタトゥイユやポトフ、キッシュなど、少ない材料でも作れる家庭料理がたくさんあります。休日に挑戦してみるのもおすすめです。
Qフランス料理はなぜ「世界三大料理」と呼ばれるのですか?
A「世界三大料理」という呼び方がいつ、誰によって決められたのかは、はっきりとした記録が残っているわけではないようです。ただし、日本料理やイタリア料理が含まれない理由には、宮廷料理として体系化されてきたかどうかが関係しているとする見方があります。
まとめ
フランス料理は、宮廷で磨かれてきた華やかな一面と、地方に根づいた素朴な郷土料理という、2つの顔を持つ料理です。代表的なメニューやコースの流れ、基本のマナーを知っておくと、レストランでの食事を安心して楽しめるでしょう。まずは気軽なビストロを訪れてみる、あるいは休日にラタトゥイユなど家庭料理を作ってみるところから、フランス料理との距離を少しずつ縮めてみてください。
参考にした情報源
- ミシュランガイド公式サイト
- Gault & Millau Japan公式サイト
- コトバンク「ミルフィーユ」
- 国立国会図書館 レファレンス協同データベース「フランス料理のコースについて」
- ラジオ関西トピックス「世界三大料理『フランス・中国・トルコ』なのはナゼ?」
- WEBアステイオン(Newsweek日本版掲載)「カトリーヌ王妃が『フランス料理の生みの親』とされてきた意外な理由」
- Frontiers in Nutrition誌掲載論文「The Transformative Influence of La Varenne’s Le Cuisinier Francois (1651) on French Culinary Practice」

