フランスの美しい田園風景や森の中で出会う鹿たち。その姿は日本で見る鹿と似ているようで少し違います。でも、もっと違うのが「呼び名」なんです。日本語では単に「鹿」と呼べばいいのに、フランス語では種類や性別によって全く異なる言葉が使われています。この記事では、フランス語圏で出会える鹿たちの多様な呼び方についてお話ししますね。旅行や語学学習の際に役立つかもしれませんよ。
フランスの田舎道をドライブしていると、野生の動物たちと遭遇する機会が多いんですよね。特に夜間に森林地帯を通過するときは、鹿などの野生動物が突然飛び出してくる危険があるので、車のスピードを控えめにすることが大切です。動物たちは車のヘッドライトに驚いて不意に道路に飛び出してくることがあり、事故の原因になることもあるんです。
動物を見つけたとき、思わず「あっ、いるね~!」と声をあげることがありますが、フランス語の場合は少し複雑なんです。同じ種類の動物でも性別によって呼び名が全く異なることが多く、正確に言い表すのが難しいことがあります。たとえば、鹿を一頭見かけた場合、日本語なら単に「あっ、鹿がいる!」と言えば十分ですが、フランス語では種類や性別によって適切な単語を使わないと「それは違うよ」と指摘されることもあるんですよ。
フランスで一般的に見られる鹿は主に4種類あります。それぞれに固有の呼び名があり、さらに雄と雌で異なる名称が使われています。
フランスでよく見かける4種類の鹿とその呼び名
学名 | 性別 | フランス語名称 | 日本語名称 |
---|---|---|---|
Cervus elaphus | ♂ | Cerf élaphe (セーフ・エラフ) 通称: Cerf (セーフ) |
アカシカの雄 |
♀ | Biche (ビーシュ) | アカシカの雌 | |
Capreolus capreolus | ♂ | Chevreuil (シュヴルイユ) | ノロジカの雄 |
♀ | Chevrette (シュヴレット) | ノロジカの雌 | |
Dama dama | ♂ | Daim (ダン) | ダマジカの雄 |
♀ | Daine (デーヌ) | ダマジカの雌 | |
Rangifer tarandus | ♂ | Renne mâle (レンヌ・マール) カナダではcaribou (カリブー) |
トナカイの雄 |
♀ | Renne femelle (レンヌ・フメル) | トナカイの雌 |
鹿の代表格といえばアカシカ(Cerf/Biche)ですが、フランスの野原や田園地帯で最も頻繁に目にするのはノロジカ(Chevreuil/Chevrette)です。面白いことに、ノロジカの雌はChevrette(シュヴレット)が正式名称ですが、多くのフランス人は雌雄関係なくChevreuil(シュヴルイユ)と呼んでいる印象があります。
ダマジカ(Daim/Daine)は自然公園などの比較的管理された環境でしか見かけることが少ないですね。また、クリスマスシーズンに欠かせないトナカイ(Renne)は主に北欧に生息しており、フランス本土ではなかなか野生の姿を見ることができません。
サンタクロースのトナカイはフランス語で「Rennes du père Noël (レンヌ・デュ・ペール・ノエル)」と呼ばれています。
鹿の子どもたちの特別な呼び名
鹿の子どもは基本的に「Faon (ファオン)」と呼ばれますが、年齢や成長段階によってさらに細かく分類されることがあります。
- アカシカ(Cerf)の子どもの場合
- hère (エール):まだ角が生えていない生後6ヶ月~1歳の子鹿
- daguet (ダゲ):初めて角が生えた1~2歳の若い鹿
- seconde tête (スゴンド・テット):3歳の若鹿
- ノロジカ(Chevreuil)の子どもの場合
- chevrotin (シュヴロタン):生後6ヶ月未満の雄の子鹿
- brocard (ブロカール):1歳以上の雄の若鹿
フランス語における動物の呼称体系は非常に詳細で複雑です。このような細かい呼び分けがあるのは、子どもたちに自然や動物について教育する際に役立つからかもしれません。あるいは子どもたち自身が多様な言葉を学ぶことに興味を持つからこそ、このような豊かな語彙が発達したのかもしれませんね。
フランスの教育番組「C’est pas sorcier (セ・パ・ソルスィエ)」では、鹿科の動物(cervides セルヴィデ)について詳しく解説する回があります。この番組では、一般的な動物の角は「corne (コルヌ)」と呼ぶのに対し、鹿の角は「bois (ボワ)」と呼ぶ理由なども説明しています。「bois」という呼び名は、鹿の角が毎年生え変わることや、枝分かれした姿が木の枝に似ていることに由来しているんですよ。また、「corne」は中空で永久に生え続けるのに対し、「bois」は中身が詰まっていて毎年生え変わるという違いもあります。