温泉の基礎知識|定義・泉質・効能・マナー・入り方から全国おすすめ名湯まで

温泉の泉質・効能・正しい入り方を紹介。環境省が定める10種類の泉質一覧表から、冷え性・美肌など悩み別に温泉を選べる逆引きガイドまで丁寧に解説。草津・有馬・道後など全国名湯10選も。温泉旅がもっと楽しめるようになる記事です。

「温泉って気持ちいいけど、泉質とか効能とかよくわからない…」そんな方、多いですよね。温泉は日本各地に約27,899か所もの源泉があり(環境省「令和6年度温泉利用状況」)、観光でも健康づくりでも身近な存在です。でも、どの泉質がどんな悩みに効くのか、正しい入り方はどうすればいいのか、意外と知らないことも多いですよね。

この記事では、温泉の基礎知識から泉質別の効能、正しい入浴ステップ、マナー、全国の名湯まで、まとめて紹介します。一度読めば、次の温泉旅がもっと楽しくなるはずです。

📋 この記事でわかること
  • 温泉法が定める「温泉」の正式な定義とその条件
  • 10種類の泉質の特徴・効能・代表的な温泉地
  • 自分の悩み・症状に合った泉質の選び方
  • 効果を高める正しい入り方とマナー
  • 全国の人気温泉地・名湯10選
  • 日本の温泉文化と歴史の背景

♨️ 温泉とは?定義・種類・日本が温泉大国である理由

温泉法が定める「温泉」の条件とは

「温泉」というと熱くてにごったお湯を思い浮かべる方も多いと思いますが、法律上の定義はちょっと違います。温泉法(昭和23年法律第125号)では、温泉を次のように定めています。

📜 温泉法 第2条(概要)

温泉法第2条では、温泉を「地中からゆう出する温水、鉱水及び水蒸気その他のガス(炭化水素を主成分とする天然ガスを除く。)で、別表に掲げる温度又は物質を有するもの」と定義しています。具体的には、湧出時の温度が25℃以上であること、または温度に関わらず別表が定める19種類の物質のいずれか1つ以上を規定量含むことが条件です。

温泉法第2条

物質名 含有量(1kg中) 物質名 含有量(1kg中)
溶存物質(ガス性を除く) 総量1,000mg以上 臭化物イオン 5mg以上
遊離二酸化炭素(遊離炭酸) 250mg以上 よう化物イオン 1mg以上
リチウムイオン 1mg以上 ふっ化物イオン 2mg以上
ストロンチウムイオン 10mg以上 ひ酸水素イオン 1.3mg以上
バリウムイオン 5mg以上 メタ亜ひ酸 1mg以上
総鉄イオン 10mg以上 総硫黄 1mg以上
マンガン(Ⅱ)イオン 10mg以上 メタほう酸 5mg以上
水素イオン 1mg以上 メタけい酸 50mg以上
    炭酸水素ナトリウム(重炭酸そうだ) 340mg以上
ラドン 20(百億分の1キュリー単位)以上 ラジウム塩 1億分の1mg以上

温泉法第2条別表。このうち1つ以上を規定量含めば温泉となります。

💡

「溶存物質(ガス性を除く)」とは?温泉水1kgの中に溶けている、気体ではない成分(ナトリウムイオンやカルシウムイオンなどのミネラル分)の合計量のことです。二酸化炭素のようなガス成分は別の項目でカウントされるため、ここでは除いて計算します。この合計が1,000mg以上あれば、それだけで温泉の条件を満たします。

つまり、温度が25℃以上あれば成分に関わらず温泉。それ以下の温度でも、ラドンやフッ素などの規定成分を含んでいれば温泉として認められます。ぬるめのお湯でも「温泉」の看板が出ている理由はここにあります。

💡

「療養泉」とは?温泉のうち、特に治療の目的に供しうるもので、環境省「鉱泉分析法指針」で定める温度または物質を有するものを「療養泉」と呼びます(環境省・鉱泉分析法指針)。療養泉には泉質名が付けられ、泉質別の適応症(効能)が設定されます。10種類の泉質はすべて療養泉の分類です。

天然温泉と循環式温泉の違い

温泉施設に行くと「源泉かけ流し」や「循環式」という表記を見かけますよね。この違い、知っておくと宿選びに役立ちます。

種類 特徴 メリット 注意点
源泉かけ流し 源泉を加水・加温せずそのまま浴槽に流し込む 成分が最も濃く・新鮮。泉質の効能を最大限に体感できる 温度・成分が変わりやすい。高温の場合も
循環ろ過式 湯を浴槽内で繰り返し循環・ろ過・消毒する 温度・衛生が安定。大規模施設に多い 塩素消毒により一部成分が変質することがある
加水・加温あり 温度調整や成分希釈のため水や熱を加える 入りやすい温度・濃度に調整できる 源泉本来の効能が薄まる場合がある

「源泉かけ流し」は泉質を実感しやすい反面、高温や成分が濃すぎて入りにくいこともあります。目的に合わせて選んでみてください。

日本に温泉が多い地理的・地質的理由

日本には令和6年度時点(令和7年3月末現在)で全国に約27,899か所の源泉があります(環境省「令和6年度温泉利用状況」)。これほど多い理由は、日本列島がユーラシアプレート・北米プレート・フィリピン海プレート・太平洋プレートの4つのプレートの境界付近に位置しているためです。

プレートが沈み込む場所では地殻が薄くなり、地熱が地表近くまで伝わりやすい状況が生まれます。地表から浸透した雨水や地下水が地熱で温められ、地層中のミネラルを溶かしながら地表へ湧き出てくる——これが温泉のしくみです。火山の多い国であることも、豊富な温泉地の背景にあります。

温泉ができるしくみの断面図:雨水が地下に浸透し、プレート沈み込み帯付近の地熱で温められ、ミネラルを溶かしながら地表へ温泉として湧き出る過程を示す図

図:雨水が地下に浸透し、地熱で温められながらミネラルを溶かし、地表へ温泉として湧き出るまでの流れ

🧪 温泉の泉質10種類を解説|効能・特徴・代表温泉地一覧

泉質の分類のしくみ

温泉の泉質は、環境省の「鉱泉分析法指針(平成26年改訂)」に基づいて分類されます。温泉水1kgに含まれる物質の種類と量によって決まり、現在は全部で10種類に整理されています[1]

大きく3つのグループに分かれています。

💧

① 単純温泉溶存物質が1,000mg未満で泉温25℃以上のもの。クセが少なく入りやすい。
🧂

② 塩類泉溶存物質が1,000mg以上で、陰イオンの主成分によって3種類に分類。

③ 特殊成分含有泉二酸化炭素・鉄・硫黄・放射能などの特殊な成分を規定量以上含む6種類。個性的な色や匂いを持つものが多いです。

泉質別 特徴・効能・代表温泉地 一覧表

以下が10泉質の一覧です。主な効能は環境省が定める療養泉の「適応症」を参考にしています。各泉質がどのグループに属するかも一目でわかるようにしています。

① 単純温泉
② 塩類泉
③ 特殊成分含有泉
分類 泉質名 特徴・外観 主な適応症(効能) 代表温泉地
単純温泉 無色透明・無臭。肌への刺激が少ない。pH8.5以上は「アルカリ性単純温泉」でぬるつる感あり 自律神経不安定症・不眠症・うつ状態 下呂温泉(岐阜)・鹿教湯温泉(長野)
塩化物泉 無色〜薄黄色。塩分を多く含み「熱の湯」とも呼ばれ保温効果が高い 切り傷・やけど・慢性皮膚病・冷え性 有馬温泉「金泉」(兵庫)・道後温泉(愛媛)
炭酸水素塩泉 無色透明。アルカリ性で皮膚の洗浄・美肌効果。「美人の湯」と称されることが多い 皮膚乾燥症・切り傷・アトピー性皮膚炎 長湯温泉(大分)・下部温泉(山梨)
硫酸塩泉 無色透明。「傷の湯」とも呼ばれ、血行促進・動脈硬化予防に効果があるとされる 動脈硬化症・切り傷・慢性皮膚病・高血圧症 四万温泉(群馬)・下部温泉(山梨)
二酸化炭素泉 無色透明で細かい泡が肌につく「炭酸泉」。血管拡張作用が強く「心臓の湯」とも 高血圧症・動脈硬化症・末梢循環障害 大分・長湯温泉(ラムネ温泉)
含鉄泉 空気に触れると赤褐色になる。女性の貧血改善に良いとされる 鉄欠乏性貧血(飲泉)・月経障害(浴用) 湯田中温泉(長野)・嬉野温泉(佐賀)
硫黄泉 硫化水素ガス特有の卵臭。殺菌作用が強く皮膚疾患に効果があるとされる アトピー性皮膚炎・尋常性乾癬・慢性湿疹 草津温泉(群馬)・登別温泉(北海道)・白骨温泉(長野)
酸性泉 強い酸性(pH3未満)。殺菌力が強く皮膚病に効果があるとされるが刺激も強い アトピー性皮膚炎・尋常性乾癬・表皮化膿症 草津温泉(群馬)・玉川温泉(秋田)・酸ヶ湯温泉(青森)
放射能泉 微量のラドンを含む。「ラジウム泉」とも。微量放射線が生体に刺激を与えるとされる 高尿酸血症(痛風)・動脈硬化症・慢性消化器疾患 三朝温泉(鳥取)・増富温泉(山梨)・玉川温泉(秋田)
含よう素泉 ヨウ素を多く含む。殺菌作用・甲状腺ホルモン活性化。飲泉が一般的 高コレステロール血症(飲泉)・温熱作用による肩こり・腰痛 白子温泉(千葉)・新津温泉(新潟)

※環境省が定める療養泉の適応症(効能)を参考に整理

⚠️

泉質ごとに「禁忌症」がありますたとえば硫黄泉や酸性泉は刺激が強く、腎臓疾患・心疾患のある方や妊娠中の方には向かない場合があります。持病や服薬中の方は必ず事前に医師へご相談ください。

泉質名の「新旧」について知っておくと便利

温泉分析書や施設の案内板では、昔ながらの旧泉質名が使われていることもあります。「重曹泉」は炭酸水素塩泉、「食塩泉」は塩化物泉、「芒硝泉」は硫酸塩泉に相当します。旧名のほうが親しみやすく感じる方も多いですが、現在の正式名称は昭和53年に環境省が改訂した「新泉質名」です(日本温泉協会)。

📌 悩み・症状別で選ぶ!あなたに合う泉質ガイド

「どの温泉に行けばいいの?」というとき、泉質から選ぶのではなく悩みや症状から逆引きするほうがずっとわかりやすいです。よくある6種類のお悩み別に、おすすめの泉質と代表温泉地をまとめました。

美肌・スキンケアに効く泉質

✨ 美肌・スキンケア

肌をすべすべにしたい・乾燥が気になる
💧 炭酸水素塩泉(重曹泉)
皮脂を落として角質を柔らかくするアルカリ性。「美人の湯」代表格
📍 長湯温泉(大分)・下部温泉(山梨)・赤倉温泉(新潟)
✨ 美肌・スキンケア

肌をつるつるにしたい(pH高め希望)
💧 アルカリ性単純温泉
pH8.5以上のぬるつる感。刺激が少なく敏感肌の方にも比較的◎
📍 下呂温泉(岐阜)・嬉野温泉(佐賀)

冷え性・疲労回復に効く泉質

🔥 冷え性・保温

体が芯から冷えやすい・末端が冷たい
🧂 塩化物泉(食塩泉)
塩分が毛穴に膜をつくり保温効果が長続き。「熱の湯」とも呼ばれる
📍 有馬温泉金泉(兵庫)・道後温泉(愛媛)
💪 疲労回復

体の疲れをとりたい・筋肉のこわばりを解したい
💧 単純温泉・硫酸塩泉
刺激が少ない単純温泉は疲れた体にやさしい。硫酸塩泉は血行促進効果
📍 四万温泉(群馬)・箱根温泉(神奈川)

血行促進・高血圧・皮膚疾患に効く泉質

❤️ 血行促進・心臓

血行が悪い・高血圧が気になる
⛁ 二酸化炭素泉(炭酸泉)
CO₂が皮膚から吸収されて血管を広げる。末梢循環を改善するとされる
📍 長湯温泉ラムネ温泉(大分)
🩵 皮膚疾患

アトピー・皮膚炎が気になる
🌫️ 硫黄泉・酸性泉
殺菌作用が強い。ただし刺激も強いため、症状が重い方は医師へ相談を
📍 草津温泉(群馬)・登別温泉(北海道)
⚠️

注意:温泉はあくまで「保養・補助」です温泉の効能は医学的に研究が進んでいますが、疾患の治療は医師の指導が基本です。持病をお持ちの方は、温泉に入る前に主治医にご相談ください。

📚 温泉の健康効果|科学的に示された3つの作用

「なんとなく体にいい」というイメージのある温泉ですが、その効果は医学的にも研究されています。温泉療法の効果は大きく3つの作用に分類されます[2]

① 物理的作用(温熱・浮力・水圧)

お湯に浸かることで体が受ける物理的な刺激による効果です。主に3つがあります。

物理的作用の3要素
  • 温熱作用:体が温まることで血管が拡張し、血流が増えて新陳代謝が高まります。筋肉のこわばりや痛みをやわらげる効果があるとされます
  • 浮力作用:湯に浸かると体重が約1/10程度になります。関節や筋肉への負担が減り、リハビリや運動機能の回復にも活用されています
  • 水圧(静水圧)作用:体表面に均等に圧力がかかります。マッサージに近い効果でむくみ改善も期待できます

② 化学的作用(成分の経皮吸収)

温泉に含まれる成分が皮膚から少量吸収されることで、体内に薬理的な作用をもたらします。家庭のお風呂との最大の違いはここにあります。

たとえば二酸化炭素泉では、炭酸ガス(CO₂)が皮膚から吸収されて末梢血管を拡張させることが確認されています。また塩化物泉は入浴後も皮膚表面に塩分の膜が残り、温熱効果が長続きするとされます。「お湯上がりにシャワーで流さないほうが良い」と言われる理由はここにあります。

③ 転地作用(日常環境からの離脱)

日常の生活環境を離れることで、自律神経のバランスが整い、心身のストレスが解消される作用です。「転地作用」と呼ばれます[2]

この転地作用が長期間続くことで体のさまざまな機能が整っていく現象を、「総合的生体調整作用」と呼びます。血圧やホルモン値が高い人は低くなり、低い人は適正値に近づくという、体の自然治癒力を引き出す効果です[3]。昔ながらの「湯治」(一定期間温泉地に滞在して療養する文化)はまさにこの作用を活用したものです。

🧬

HSP70(ヒートショックプロテイン70)の役割近年の研究では、温泉入浴によってHSP70(分子シャペロン:変性タンパクの修復を助けるタンパク質)の産生が増加することも示されています。通常の水道水入浴より温泉浴のほうが上昇することが報告されており、温泉が健康増進に寄与するメカニズムの一つと考えられています[2]

🛁 温泉の正しい入り方|効果を引き出す入浴ステップ

せっかく良い温泉に来たのに、入り方を知らないともったいないですよね。温泉は家のお風呂と違い、入り方ひとつで体への影響がかなり変わります。「入浴前・中・後」の3段階に分けて確認しましょう。

入浴前の準備

1
水分補給をしっかりと
入浴前にコップ1杯(約200mL)の水を飲みましょう。温泉では発汗により体内の水分が失われます。特に高温の泉質ではのぼせリスクも高まるため、入浴前・入浴後それぞれに水分補給を習慣にしましょう。
2
食後すぐの入浴は避ける
食後すぐに温泉に入ると、消化のために集中していた血流が体の表面に移ってしまい、消化不良や気分不快につながることがあります。食後は少なくとも30〜60分ほど空けてから入浴するのがおすすめです。空腹時はエネルギー不足でめまいや気分不快が起きやすいため注意が必要です。
3
かけ湯をしっかり行う
脱衣所から出たら、まず浴槽のお湯を足元→腰→肩の順にかけます。これは体を温泉の温度に慣らす準備運動のようなもの。急に熱いお湯に入ると心臓への負担が大きくなるため、かけ湯は省略しないようにしましょう。マナー的にも洗い場の汚れを落とす意味があります。

入浴中のポイント

🌡️

適切な温度
一般的に40〜42℃が適温とされています。熱すぎると交感神経が優位になり、リラックス効果が下がります。ぬるめ(38〜40℃)のお湯は副交感神経を活性化させ、疲労回復や睡眠改善に効果的とされます。
⏱️

入浴時間の目安
1回あたり10〜15分程度が目安です。長く入れば良いわけではなく、長時間入ることでのぼせや脱水が起きやすくなります。「少し物足りないかな」くらいで上がるのがちょうどよいです。

のぼせを感じたら迷わず上がって休憩しましょう。入浴を1日2〜3回に分けて繰り返す「分浴」が温泉地では一般的です。この繰り返しが転地作用・総合的生体調整作用を高めるとされています。

⚠️

のぼせのサインに注意顔がほてる・めまいがする・気分が悪いと感じたらすぐに浴槽から出てください。浴槽内で無理をするのが最も危険です。浴室の外の椅子で休み、水を飲んで体を冷ますようにしてください。

入浴後のケア

1
上がり湯は泉質によって判断する
「温泉の成分を流さないために上がり湯はしない」という考え方と「刺激の強い泉質はシャワーで流す」という考え方があります。硫黄泉・酸性泉など刺激が強い泉質は上がり湯で軽く流すのが安心です。塩化物泉・単純温泉などは成分が肌に残ることで保温・保湿効果が持続するため、流さないことをすすめる施設が多いです。
2
水分補給と保湿を忘れずに
入浴後もコップ1杯の水や温かい飲み物を飲みましょう。肌が乾燥しやすい方は保湿クリームも活用を。特に冬場は入浴後の急激な冷えに注意が必要です。
3
15〜30分は横になって休憩する
入浴直後は体温が高く、立ちくらみが起きやすい状態です。浴室を出たら服を着て、横になるかゆったり座って休みましょう。この休憩時間に副交感神経が優位になり、疲労回復・睡眠促進の効果が高まります。

🙏 知らないと恥ずかしい?温泉マナーまとめ

温泉の入浴マナーは、みんなが気持ちよく入るためのルールです。「知らなかった…」と後悔しないよう、基本を押さえておきましょう。

脱衣所・洗い場でのマナー

  • 貴重品はロッカーにしまう(脱衣所に放置しない)
  • 洗い場では備え付けのシャワーや桶を共有して使う
  • 他の人の荷物を移動させない
  • 洗い場を長時間占領しない(使い終わったら桶や椅子をすすいで戻す)
  • 脱衣所内でのスマートフォン使用は基本的にNG(カメラ機能のない端末でも他の方が不安を感じることがある)

湯船でのマナー

  • 湯船に入る前にかけ湯(体の汚れを落としてから)
  • タオルは湯船に入れない(浮かせず頭の上に乗せるか外に置く)
  • 長い髪は束ねてまとめる
  • 湯船の中でのシャンプー・石鹸使用はNG
  • 大声での会話や飲食は他の方の迷惑になることがあります
  • 場所取りのためにタオルや荷物を置いてその場を離れるのはNG

タトゥー・持病・子ども連れ時の注意

📝

タトゥーについてタトゥー(刺青)の入浴可否は施設によって異なります。「全面不可」「ワンポイントなら可」「ラッシュガードの着用で可」などルールがさまざまです。訪問前に施設のウェブサイトや電話で確認するのが安心です。
🧒

子ども連れでの入浴小さなお子さんを連れて入る際は、浮力で体が浮いてしまうことがあります。目を離さず、浅い場所で入浴するよう気をつけましょう。また、お子さんの体温調節機能は未発達なため、大人より短い時間で上がることをおすすめします。

近年、外国人観光客との入浴機会も増えています。言葉が通じなくても笑顔でかけ湯の仕草を見せると伝わることが多いです。温泉文化をやさしくシェアする気持ちで、みんなが気持ちよく楽しめる温泉を目指しましょう。

🗾 全国おすすめ温泉地10選

全国に約2,839か所ある温泉地(環境省令和6年度調査)の中から、泉質や個性が際立つ10か所を地域バランスよく紹介します。

東日本の名湯

🌲 草津温泉(群馬県)

硫黄泉・酸性泉

自然湧出量は毎分32,300リットル以上(草津町勢要覧2018)で日本有数の湧出量を誇ります。強酸性の源泉が皮膚疾患に効果があるとされ、観光名所「湯畑」の幻想的な景観も見どころです。室町時代の禅僧・万里集九(ばんりしゅうく)が三名泉の一つとして記した歴史ある温泉地です。
🎯 皮膚疾患・疲労回復 / 日本三名泉
⛰️ 箱根温泉(神奈川県)

単純温泉・硫酸塩泉ほか

箱根は一つのエリアに複数の泉質が存在する珍しい温泉郷です。大涌谷の硫黄泉から宮ノ下の塩化物泉まで泉質が多様で、滞在しながら複数の温泉を楽しめます。東京から1〜2時間とアクセスが良く、日帰り入浴施設も充実しています。
🎯 疲労回復・美肌 / 関東随一の温泉郷
❄️ 蔵王温泉(山形県)

硫黄泉・酸性泉

強酸性の白濁した硫黄泉が特徴。pH値が低く殺菌作用が強いとされ、皮膚疾患に効果があるとされる温泉です。樹氷で知られるスキーリゾートとしても有名で、冬に訪れる観光客も多い東北を代表する温泉地です。
🎯 皮膚疾患・冬の露天風呂
🥚 乳頭温泉郷(秋田県)

単純硫黄泉・含硫黄泉ほか

秋田県・田沢湖高原に点在する7つの一軒宿の総称。白濁した乳白色の湯が有名で、「鶴の湯」をはじめとした各宿が異なる泉質と雰囲気を持ちます。秘湯感と非日常感を求める方に人気の温泉郷です。
🎯 秘湯・美肌 / 東北の隠れ名湯

西日本・九州の名湯

🌷 有馬温泉(兵庫県)

含鉄塩化物泉(金泉)・二酸化炭素泉・放射能泉(銀泉)

草津・下呂と並ぶ「日本三名泉」の一つ。鉄分と塩分を含む赤褐色の「金泉」と、炭酸泉・ラドン泉からなる無色透明の「銀泉」という2種類の全く異なる泉質を楽しめます[4]。日本書紀に記された日本三古湯の一つでもあり[5]、1400年以上の歴史を持つとされます。
🎯 保温・美肌 / 日本三名泉・日本三古湯
🌸 城崎温泉(兵庫県)

塩化物泉

7つの外湯めぐりが名物の温泉地。浴衣で温泉街を散歩しながら各外湯を巡るスタイルは、城崎温泉ならではの楽しみ方です。志賀直哉が滞在し小説『城の崎にて』の舞台となった地としても知られています。
🎯 保温・疲労回復 / 外湯めぐり文化
🌋 別府温泉(大分県)

単純温泉・塩化物泉ほか多種

源泉数・湧出量ともに全国屈指の温泉都市。「血の池地獄」「龍巻地獄」など7か所の「地獄めぐり」は観光スポットとして有名です。温泉を使った砂むし・泥湯など多様な入浴スタイルも体験できます。
🎯 多泉質体験 / 九州を代表する温泉都市
🏖️ 指宿温泉(鹿児島県)

塩化物泉

「砂むし温泉」が全国的に有名。砂浜に埋まりながら温泉地熱で温まる砂むし浴は、通常の入浴より大量発汗ができると言われています。温暖な気候のなか南国らしい雰囲気が楽しめる九州南端の温泉地です。
🎯 デトックス・疲労回復 / 砂むし浴

歴史ある名湯・秘湯

🏛️ 道後温泉(愛媛県)

アルカリ性単純温泉

3,000年ともいわれる歴史を持つとされる温泉で[6]、有馬・白浜と並ぶ「日本三古湯」の一つです。明治27年(1894年)に建てられた「道後温泉本館」は近代建築の貴重な遺産で、保存修理工事中も一部営業を続けています。夏目漱石の小説『坊っちゃん』の舞台としても有名です。
🎯 美肌・疲労回復 / 日本三古湯・歴史的建造物
🌳 下呂温泉(岐阜県)

アルカリ性単純温泉

草津・有馬と並ぶ「日本三名泉」の一つ。pH9.0以上の強アルカリ性で、入浴するとぬるつるとした肌触りが特徴の美人の湯です。室町時代の禅僧・万里集九(ばんりしゅうく)が著書『梅花無尽蔵』で三名泉として紹介し(コトバンク)、江戸時代の儒学者・林羅山も同様に記しています(Wikipedia)。
🎯 美肌・疲労回復 / 日本三名泉

📜 温泉の歴史と湯治文化

道後温泉・有馬温泉に見る温泉の歴史年表

日本の温泉の歴史は非常に古く、記録をたどると飛鳥・奈良時代まで遡ります。愛媛県の道後温泉は3,000年ともいわれる歴史を持つとされ[6]、日本書紀にも記述があります[5]。聖徳太子が来浴したという伝承も残っています。

約3,000年前(伝承)
道後温泉の起源とされる時代。縄文時代中期の土器が周辺から発掘されており、古代から人々が利用していたとされます。
飛鳥〜奈良時代
日本書紀・風土記に道後温泉・有馬温泉・白浜温泉(牟婁の湯)の記述が確認されています。これが「日本三古湯」の根拠の一つとされています[5]
室町時代
禅僧・万里集九(ばんりしゅうく)が詩文集『梅花無尽蔵』で草津・有馬・下呂を「三名泉」として紹介します(コトバンク・Weblio辞書)。
江戸時代
儒学者・林羅山が「天下の三名泉」として草津・有馬・下呂を記しました。庶民の旅行も盛んになり、温泉地への「湯治」文化が広まります。
明治27年(1894年)
道後温泉本館(神の湯棟)完成。近代建築として貴重な木造3階建て。翌明治28年、夏目漱石が愛媛県尋常中学校(通称・松山中学)に赴任し、滞在記が後の小説『坊っちゃん』に影響を与えました[7]
昭和23年(1948年)
温泉法が制定されます。温泉の定義・採取・利用について法整備が行われ、現在に至ります(e-gov法令データ)。

湯治とは何か|現代の温泉療養

湯治(とうじ)とは、温泉地に一定期間滞在して体の不調を癒す日本古来の療養スタイルです。一般的に1〜3週間程度の滞在が理想的とされ、転地作用と総合的生体調整作用が体に働きかけることで、日常生活で蓄積された疲労や慢性的な不調を回復させると考えられてきました[3]

現代では長期滞在が難しい場合でも、週末の温泉旅行を定期的に繰り返すことで転地効果が期待できるとも言われています。「温泉=観光」という感覚だけでなく、「養生・保養」の視点で温泉を生活に取り入れてみるのも素敵な選択肢ですね。

近年は「ウェルネスツーリズム」という言葉も広まり、温泉地が健康増進・リトリートの拠点として見直されています。古来の湯治文化と現代の健康意識が交わる場として、日本の温泉文化はこれからも受け継がれていくはずです。

❓ よくある質問

Q
温泉と銭湯・普通のお風呂は何が違うんですか?
A

最大の違いは「お湯の成分」です。温泉は温泉法に定められた成分(25℃以上の温度、またはラドン・フッ素などの19種類の物質のいずれか)を含む必要があります。銭湯や家庭のお風呂は基本的に水道水を沸かしたもので、温泉成分は含まれていません。また、温泉の中でも「療養泉」には環境省が定める泉質別の「適応症(効能)」が設定されているのも大きな違いです。
Q
温泉は毎日入っても大丈夫ですか?
A

泉質によります。単純温泉やアルカリ性単純温泉は刺激が少なく、毎日入浴しても比較的問題が少ないとされています。一方、硫黄泉・酸性泉など刺激の強い泉質は、毎日入ると皮膚トラブルが起きることもあります。一般的な目安として、温泉地での湯治でも「1日2〜3回・10〜15分程度」を複数日繰り返すのが基本です。皮膚に赤みやかゆみが出たら無理せず休みましょう。持病がある方は医師にご相談ください。
Q
子どもを温泉に連れて行っても大丈夫ですか?
A

基本的には問題ありませんが、いくつか注意が必要です。子どもは体温調節機能が大人より未発達なため、短時間(5〜10分程度)を目安に入浴し、のぼせないよう気をつけましょう。また硫黄泉・酸性泉・放射能泉など刺激の強い泉質は、乳幼児には向かない場合があります。単純温泉や塩化物泉などマイルドな泉質を選ぶと安心です。施設によって子どもの入浴制限がある場合もあるので、事前に確認しましょう。
Q
「日本三名泉」と「日本三古湯」は同じものですか?
A

違います。「日本三名泉」は草津温泉(群馬)・有馬温泉(兵庫)・下呂温泉(岐阜)の3か所で、室町時代の禅僧・万里集九(ばんりしゅうく)が詩文集『梅花無尽蔵』で紹介し、江戸時代の儒学者・林羅山も同様に記した、歴史的な格付けに由来します[8]
一方、「日本三古湯(日本三古泉)」は道後温泉(愛媛)・有馬温泉(兵庫)・白浜温泉(和歌山)の3か所で、日本書紀・風土記といった史書への記述に基づく分類です[5]。有馬温泉は両方に含まれています。
Q
温泉上がりにシャワーで流さないほうがいいって本当ですか?
A

泉質によります。塩化物泉・単純温泉などは入浴後に成分が肌に残ることで保温・保湿効果が持続するとされるため、流さないことを推奨する施設が多いです[2]。一方、硫黄泉・酸性泉など刺激の強い泉質は、成分が残ると肌荒れを起こすことがあります。その場合は軽く上がり湯をしたほうが安心です。施設の案内や貼り紙にその温泉の推奨ケア方法が書かれていることが多いので、ぜひ確認してみてください。
Q
飲泉(温泉を飲むこと)はしても大丈夫ですか?
A

飲泉ができる温泉とできない温泉があります。日本では飲泉が認められた「飲泉所」が設置されている施設のみ飲泉が可能で、勝手に飲むことは推奨されていません。飲泉が認められる温泉は厳格な基準を満たしたものに限られます。また、含よう素泉・放射能泉などは飲泉での効果が期待される泉質ですが、過剰摂取は体に悪影響を及ぼすこともあります。飲泉所がある施設でも、1回の飲用量の目安を守るようにしましょう。
Q
温泉に入るのに向いていない時期やタイミングはありますか?
A

以下のタイミングは温泉入浴を避けたほうがよいとされています。
● 飲酒後:血管が拡張した状態でさらに温泉に入ると血圧が急激に変化し、心臓への負担が大きくなります
● 発熱・体調不良時:体力を消耗しているときは温泉の刺激が大きな負担になることがあります
● 激しい運動の直後:体が興奮・緊張状態のため、休憩を挟んでから入浴を
● 妊娠中・手術後など医療的な配慮が必要な場合は必ず医師にご相談ください

📝 まとめ

  • 温泉は温泉法(昭和23年法律第125号)で定義された、25℃以上または特定成分を含む湧出水です
  • 泉質は環境省の鉱泉分析法指針に基づき10種類に分類され、それぞれ異なる効能・適応症があります
  • 悩み・症状から泉質を選ぶ「逆引き」が、自分に合った温泉選びの近道です
  • 温泉の健康効果は「物理的作用・化学的作用・転地作用(総合的生体調整作用)」の3つから成り立ちます
  • 入浴前・中・後それぞれにポイントがあり、正しく入ることで効果を引き出せます
  • 「日本三名泉」(草津・有馬・下呂)と「日本三古湯」(道後・有馬・白浜)は別の分類です
  • 温泉文化は約3,000年ともいわれる歴史を持つ、日本の「保養・療養」の文化です

📚 出典・参考資料
  1. 日本温泉協会「温泉の泉質のいろいろ」https://www.spa.or.jp/onsen/501/
  2. 日本温泉協会「温泉の医学的効果とその科学的根拠」(前田眞治教授・日本温泉科学会第73回大会公開講演)https://www.spa.or.jp/onsen/4790/
  3. ソニー生命 早坂信哉先生(温泉療法専門医・東京都市大学教授)監修記事https://cs.sonylife.co.jp/lpv/pcms/sca/ct/special/topic/index1612.html
  4. 有馬温泉の泉質に関する報道・観光案内(神戸新聞NEXT等)
  5. 松山観光コンベンション協会(道後温泉・日本三古湯に関する記述)
  6. 道後温泉公式サイト
  7. 松山観光コンベンション協会・Wikipedia「夏目漱石」
  8. コトバンク・Wikipedia「万里集九」(日本三名泉の由来)

本文中の出典は、環境省「令和6年度温泉利用状況」など特に数値の根拠となる箇所のみ明記し、その他の参考資料は上記にまとめています。