退職届を書こうと思ったとき、「退職願との違いって何だっけ?」「手書きじゃないとダメ?」「封筒の入れ方に決まりがある?」と疑問が次々と出てきますよね。初めて書く方はもちろん、しばらく社会人をやっていても、実際に書いたことがない方は意外と多いものです。
この記事では、退職届・退職願の書き方を例文付きで詳しく解説します。封筒のマナーや提出タイミング、よくある疑問まで一気にまとめましたので、ぜひ参考にしてみてください。
- 退職届・退職願・辞表の違いと、自分がどれを出すべきかの判断方法
- 退職届・退職願それぞれの正しい書き方と例文(縦書き・横書き対応)
- 会社都合退職・退職勧奨など特殊ケースの書き方
- 封筒の選び方・表裏の書き方・三つ折りの正しいやり方
- 提出のタイミング・提出先・引き止められたときの対処法
- 退職後の健康保険や雇用保険など公的手続きの概要
- 「シャチハタはNG?」「殿と様どちら?」などよくある疑問への回答
📋 退職届・退職願・辞表の違いと使い分け
「退職届を出して」と言われたけれど、退職願とは何が違うの?と戸惑う方は少なくありません。それぞれの書類には明確な役割の違いがあります。まずここをきちんと押さえておくと、後の手続きがスムーズになりますよ。
退職届とは何か
退職届は、会社に対して退職する意思を一方的に通告する書類です(辞職の意思表示)。退職届は会社に到達した時点で法的な意思表示の効力が生じます。その後、無期雇用(正社員など)の場合は到達日から2週間が経過すると退職が成立します(民法627条1項)。会社側が受け取りを拒否しても、到達が確認できれば意思表示として有効です。一度提出・到達すると撤回は原則できません。
引き止めに遭っていてどうしても確実に退職を進めたいという場面では、退職届が適しています。
「申し出から2週間で退職できる」というルールは、正社員など期間の定めのない雇用契約(無期雇用)の方に適用されます。契約社員・パート・アルバイトなど有期雇用の方は別のルールが適用されますので、ご自身の雇用形態を確認してください。
退職願とは何か
退職願は、会社に対して「退職させていただけますか」とお願いする書類です。会社が承諾してはじめて退職が成立する、合意解約の申し込みという性格を持っています。承諾を得る前であれば、原則として取り下げることも可能です。
円満退職を目指したい場合には退職願が適していますが、会社に引き止められ続け、なかなか退職できないリスクもある点は頭に置いておくといいかもしれません。
辞表とは何か
辞表は、一般的に取締役などの役員や公務員が職を辞する際に提出する書類です。会社に雇用されている一般社員が提出する書類ではありませんので、通常の会社員であれば退職届か退職願を用意すれば大丈夫です。
| 書類名 | 役割 | 法的効力の発生 | 撤回 | 対象者 |
|---|---|---|---|---|
| 退職届 | 退職の一方的通告(辞職) | 会社への到達時点で効力発生。無期雇用は到達から2週間で退職成立 | 原則不可 | 一般社員(無期雇用) |
| 退職願 | 退職のお願い(合意解約申込) | 会社の承諾後に退職成立 | 承諾前は可能 | 一般社員 |
| 辞表 | 役職・職を辞する届出 | 会社への到達時点 | 原則不可 | 役員・公務員 |
表題が「退職届」か「退職願」かよりも、本文の表現(通告するか、お願いするか)によって法的な性格が判断されます。混乱を避けるためにも、表題と本文の内容を一致させて書くようにしてください。
📍 自分はどれを出すべきかフローで確認
✍️ 退職届の正しい書き方【例文・見本付き】
退職届の書き方というと難しそうに感じるかもしれませんが、記載する項目は決まっていますし、定型文に沿って書けば大丈夫です。順番にひとつずつ確認していきましょう。
書き始める前に確認すること
退職届を書く前に、まず会社の就業規則を確認してください。会社によっては指定の書式があったり、提出先のルールが定められていたりします。「退職手続きの書式はありますか?」と上司や人事に一言確認してから作成するのが確実です。
民法627条1項では、無期雇用(正社員など)の場合、退職の意思表示から2週間が経過すれば退職が成立します。就業規則で「1ヶ月前」「2ヶ月前」に申し出るよう定めていても、法的には民法の2週間ルールが優先されるというのが裁判例・有力学説の方向性です。ただし、円満退職を目指すなら就業規則の期間を目安に早めに動くのが現実的な対応です。引き継ぎや後任の準備など、職場への配慮として1〜2ヶ月前には相談を始めることをおすすめします。
退職届に必要な5つの記載項目
縦書き・横書きどちらの場合も、以下の5つの項目が揃っていれば書類として成立します。
- タイトル(表題) 「退職届」と中央に少し大きめに記載
- 私儀(わたくしぎ)または私事 タイトルから1行空けた次の行の下部(行末)に小さく記載。「わたくしごとではありますが……」という意味で、ビジネス文書の慣例的な書き出しです
- 退職理由 自己都合の場合は「一身上の都合」と記載すれば十分です。詳しい理由を書く義務はありません
- 退職日(退職予定年月日) 会社と話し合いのうえ決めた退職日を記載します
- 提出日・所属・氏名・宛名 提出日は書類を提出する当日の日付を記載。宛名は会社の最高責任者の正式な役職名(代表取締役社長など)とフルネームを、自分の名前より上の位置に書きます。正式な役職名は会社の公式サイトや名刺で確認してください
【例文】自己都合退職の退職届(縦書き)
- 数字は漢数字(例:令和七年一月十日)で書くのが一般的です
- 「私儀」はタイトルの次の行の下部(行末)に書きます
- 自分の名前は行の下寄りに書き、末尾に認印を押します(シャチハタは避けましょう)
- 宛名(社長名)は自分の名前より上の位置に書きます
【例文】自己都合退職の退職届(横書き)表示は横書きなっています。
横書きの場合は縦書きとは項目の配置順序が異なります。タイトルの直下に提出日を書き、宛名・氏名・本文の順に記載します。
令和○年○月○日
○○株式会社
代表取締役社長 ○○ ○○ 様
○○部 ○○課
○○ ○○ ㊞
私儀
このたび、一身上の都合により、令和○年○月○日をもって退職いたします。
以上
- ①タイトル「退職届」:中央揃え・大きめに
- ②提出日:右揃え(タイトル直下)
- ③宛名(会社名・代表者名):左揃え
- ④所属・氏名・捺印:右揃え
- ⑤私儀:右揃え
- ⑥本文(このたび〜退職いたします):左から記載
- ⑦「以上」:右揃えで締める
- 数字は算用数字(例:2025年3月31日)が一般的です
【例文】会社都合退職(退職勧奨・部門縮小)の書き方
会社都合退職の場合、退職届の退職理由の欄に「一身上の都合」と書いてしまうと自己都合退職とみなされる可能性があります。雇用保険(失業給付)の受給条件や給付開始時期が変わりますので、注意が必要です。
- 退職勧奨の場合:「退職勧奨に伴い、令和○年○月○日をもって退職いたします。」
- 部門縮小の場合:「部門縮小のため、令和○年○月○日をもって退職いたします。」
- 事業所閉鎖の場合:「事業所閉鎖に伴い、令和○年○月○日をもって退職いたします。」
会社から「自己都合で書いてほしい」と言われても、事実と異なる記載をする必要はありません。退職理由は雇用保険の受給に直結しますので、不明な点はハローワークや社労士に相談することをおすすめします。
手書きとパソコン、どちらで書くべきか
結論からいうと、手書きでもパソコン作成でも法的な効力に違いはありません。ただし、会社によっては就業規則で手書きを定めていたり、上司の世代によって手書きを重んじる文化がある場合もあります。
迷ったときは「パソコンで作成して、署名と押印だけ手書きにする」という折衷案が使いやすいです。署名を自筆にすることで本人が作成したことの証明にもなります。コンビニのマルチコピー機で印刷できるので、自宅にプリンターがなくても大丈夫ですよ。
日付・数字・敬称の細かいルール
- 日付の元号・西暦:どちらでも構いません。ただし書類内で統一することが大切です
- 縦書きの数字:漢数字(一、二、三……)を使うのが一般的です
- 横書きの数字:算用数字(1、2、3……)で書くのが一般的です
- 宛名の敬称:「殿」または「様」どちらでも可。縦書きでは「殿」が使われることが多い慣習があります
- 自分の役職名:退職届には書きません。部署名・氏名のみで大丈夫です
📜 退職願の書き方と退職届との文末の違い
退職届と退職願は、書き方の構成はほぼ同じです。大きく違うのはタイトルと本文の文末の表現です。この2点さえ正確に書けば、あとは退職届と同じ要領で作成できます。
退職願の例文(縦書き)
退職願の例文(横書き)
横書きの場合は縦書きとは項目の配置順序が異なります。タイトルの直下に提出日を書き、宛名・氏名・本文の順に記載します。
令和○年○月○日
○○株式会社
代表取締役社長 ○○ ○○ 様
○○部 ○○課
○○ ○○ ㊞
私儀
このたび、一身上の都合により、令和○年○月○日をもって退職いたしたく、ここにお願い申し上げます。
以上
| 比較項目 | 退職届 | 退職願 |
|---|---|---|
| タイトル | 退職届 | 退職願 |
| 本文の文末 | 「退職いたします。」(宣言・通告) | 「退職いたしたく、ここにお願い申し上げます。」(お願い) |
| 退職日の記載 | 会社と話し合いのうえ決めた退職日 | 自分が希望する退職日 |
| それ以外の書き方 | 同じ(構成・項目は共通) | |
退職願を撤回できるケースとできないケース
退職願は、会社側がまだ承諾していない段階であれば原則として取り下げることができます。ただし、承諾を得た後は、会社側の同意がなければ撤回できなくなりますのでご注意を。
「やっぱり辞めたくない」と思ったときは、できるだけ早く上司に相談することが大切です。時間が経てば経つほど手続きが進み、撤回が難しくなります。気持ちが固まってから提出するようにしましょうね。
✉️ 封筒の書き方・折り方・入れ方のマナー
退職届・退職願は、書類を書くこと以上に封筒の扱いでマナーが出ると言われます。ここをしっかり押さえておくと、最後まで丁寧な印象を残せますよ。
封筒の選び方
封筒は、郵便番号枠のない白い無地の封筒を選びます。茶封筒や柄入りは使いません。サイズは書類の大きさに合わせて選びましょう。
- 書類がA4サイズの場合 ➡️ 長形3号(A4を三つ折りするとちょうど入るサイズ)
- 書類がB5サイズの場合 ➡️ 長形4号(B5を三つ折りするとちょうど入るサイズ)
文房具店やコンビニで手軽に手に入ります。あらかじめ1〜2枚多めに用意しておくと安心ですよ。
封筒の表・裏の書き方
- 表面:封筒の中央に「退職届」または「退職願」とだけ書きます(会社名・上司の名前は書きません)
- 裏面:左下に自分の所属部署名とフルネームを記載します
- 封:基本的に封はせず、フタを折り曲げるだけでOKです。ただし、のりやシール付きの封筒を使用する場合は封をしてかまいません。封をした場合は「〆」マークを書きます(「×(バツ)」にならないよう注意してください)
- 表面:宛先(会社の住所・担当者名)を書き、左下に赤いボールペンで「親展」と書いて四角で囲います
- 裏面:自分の住所・氏名を記載し、しっかり封をして「〆」マークを書きます(「×」にならないよう注意)
- 退職届が入った封筒(内封筒)を、郵送用の封筒(外封筒)に入れて送ります
- 配達記録が残る簡易書留または書留での送付をおすすめします
三つ折りの正しい折り方と封入方向
書類は四つ折りや二つ折りではなく、三つ折り(巻き三つ折り)にします。
- 書類を縦に置き、下の3分の1を上に折り上げる(谷折り)
- 続けて上の3分の1を下に折り重ねる(山折り)
- 封筒に入れるときは、書き出し(「退職届」と書いてある冒頭)が封筒の裏から見て右上にくるように入れます
封筒の開口部を上にして取り出したとき、書類を開いてすぐタイトルが読める向きになっているのが親切な配慮です。受け取る側がスムーズに確認できるよう、封入の向きにも気を配ってみましょう。
封筒に書く文字は黒のボールペンまたは万年筆を使います。筆ペン・マジック・サインペンは封筒では少し重たい印象になるため避けましょう。鉛筆・消せるボールペンはNGです。
郵送する場合の添え状について
郵送で退職届を送る際は、必ず添え状(送り状)を同封します。
令和○年○月○日
○○株式会社
代表取締役社長 ○○ ○○ 様
○○部 ○○課 ○○ ○○
このたび一身上の都合により退職させていただくこととなりました。
つきましては、同封の通り退職届を提出させていただきます。
ご査収のほどよろしくお願い申し上げます。
記
一.退職届 一通
以上
📤 退職届の提出方法と提出後の流れ
書類が完成したら、次は「いつ」「誰に」「どうやって渡すか」を確認しましょう。ここでのマナーがのちのちの関係に影響することもあります。できるだけ丁寧に進めていきましょうね。
提出のタイミングと提出先
退職届・退職願は、必ず口頭で退職の意思を伝えてから提出するのが大前提です。いきなり書類を渡すのはマナー違反になりますし、上司との関係が悪化することもあります。
提出先は基本的に直属の上司です。宛名は代表取締役社長であっても、まず書類を渡すのは直属の上司です。上司を飛ばして人事部に直接提出するのは、原則として避けましょう。
引き止めに遭ったときの対処法
- 同じ意思を繰り返し伝える:退職理由は「一身上の都合」で十分です。詳細を伝える義務はありません
- 直属の上司が応じてくれない場合:その上の上司(部門長など)に相談します
- それでも難しい場合:人事部に相談する方法があります
- 最終手段:退職届を内容証明郵便で送付すれば、会社に到達した日から2週間後(無期雇用の場合)に退職が成立します。また、労働基準監督署や労働局の総合労働相談コーナーに相談することもできます
- 総合労働相談コーナー(各都道府県労働局・労働基準監督署内):退職トラブルの相談ができます
- 法テラス(日本司法支援センター):一定の収入・資産要件を満たす方が弁護士等に無料で相談できる機関です。要件によっては費用が発生する場合があります。詳細は法テラス公式サイトでご確認ください
退職後に必要な公的手続き一覧
| 手続き | 窓口 | 期限・ポイント |
|---|---|---|
| 健康保険 | 市区町村役所 or 健康保険組合・協会けんぽ | 退職後は以下の3択から選択します。 ①国民健康保険:退職日の翌日から14日以内に市区町村役所へ ②任意継続:退職日の翌日から20日以内に健康保険組合または協会けんぽへ(1日でも過ぎると加入不可) ③家族の扶養:退職後すみやかに家族の勤務先を通じて手続き |
| 国民年金 | 市区町村役所 | 退職日の翌日から14日以内に第1号被保険者への切り替え手続きを(日本年金機構が定める期限)。期限を過ぎても手続きは可能ですが、未納期間が発生しないよう早めに対応を |
| 雇用保険(失業給付) | ハローワーク | 離職票を受け取ったらすみやかに手続きを。自己都合退職は原則1ヶ月の給付制限期間(2025年4月改正後)があります。会社都合退職は待機期間(7日間)後すぐに受給開始。※5年間で3回以上の自己都合退職の場合は3ヶ月。一定の教育訓練受講で給付制限が解除される場合あり |
2025年4月の改正により、自己都合退職の給付制限期間は原則1ヶ月に短縮されました(それ以前は2ヶ月)。会社都合退職(解雇・退職勧奨など)は給付制限なしで7日間の待機期間後すぐに受給できます。退職届の退職理由の記載は慎重に行ってください。
❓ よくある質問(FAQ)
退職届・退職願を書くときに「これってどうなの?」と気になる疑問をまとめました。
🎯 まとめ
退職届・退職願の書き方について、書類の違いから例文・封筒マナー・提出後の流れまでまとめました。
- 退職届は「退職の通告」(会社到達時点で効力発生)、退職願は「退職のお願い」(会社の承諾後に成立)で、法的な性格が異なります
- まず就業規則と会社指定フォーマットを確認するのが最初のステップです
- 本文の文末表現(「退職いたします」vs「お願い申し上げます」)が一番重要な違いです
- 横書きの場合はタイトル直下に提出日を書き、宛名・氏名・本文の順に記載します
- 手書きでもパソコンでも法的効力は同じ。署名だけ直筆にするのが現実的な折衷案です
- 封筒は白無地・三つ折り・認印で丁寧さを示せます
- 提出は口頭報告の後、直属の上司に手渡しが基本です
- 退職後は健康保険(国保は14日以内・任意継続は20日以内)・年金(14日以内)・雇用保険の手続きを早めに行いましょう
退職の決断はとても勇気のいることですよね。書類のことで迷いが増えてしまわないよう、この記事が少しでもお役に立てたらうれしいです。スムーズな退職手続きができるよう、応援しています。
退職後の失業給付・健康保険切り替え・年金手続きについては、厚生労働省「雇用保険制度」ページや、最寄りのハローワーク・市区町村窓口でも確認することができます。

