退職給付金のデメリット|失業保険・傷病手当金の注意点と対処法

退職給付金のデメリットを詳しく解説。失業保険・傷病手当金の手続きの複雑さ、副業制限、扶養への影響など申請前に知るべき注意点と対処法を紹介。退職給付金で失敗しないためのガイドです。

退職を考えている、もしくはすでに退職された方の中には、「退職給付金って受け取れるのかな?」と気になっている方も多いのではないでしょうか。失業保険や傷病手当金などの公的な給付金は、退職後の生活を支える大切な制度ですよね。

でも、申請する前に知っておくべきデメリットや注意点があることをご存知でしょうか。手続きが複雑だったり、副業に制限があったり、思わぬ落とし穴も存在します。この記事では、そんな退職給付金のデメリットについて、わかりやすく解説していきますね。

この記事でわかること

  • 退職給付金(失業保険・傷病手当金)の7つの主なデメリット
  • 申請前に確認すべき受給条件と制限事項
  • 副業やアルバイトとの兼ね合いで注意すべきポイント
  • 扶養や税金・保険料への具体的な影響
  • デメリットを最小化する実践的な対処法
  • 自分が申請すべきかどうかの判断基準
  • よくある失敗事例とその回避方法

退職給付金とは?デメリットを知る前の基礎知識

まず最初に、「退職給付金」という言葉の意味をはっきりさせておきましょう。というのも、この言葉には2つの意味があって、混同されやすいんですよね。

退職給付金の定義と対象範囲

退職給付金という言葉は、大きく分けて2つの異なる制度を指すことがあります。

1つ目は、企業が独自に用意している退職金制度です。これは会社が従業員の長年の勤務に対して支払うもので、退職一時金や企業年金などが該当します。企業ごとに制度の内容が異なり、中小企業では制度自体がないこともあります。

2つ目は、国や健康保険が提供する公的な給付金です。主に失業保険(正式には「雇用保険の基本手当」)や傷病手当金のことを指します。こちらは条件を満たせば誰でも受け取れる公的な支援制度なんですね。

本記事で扱う「退職給付金」の範囲

この記事では、公的な給付金である「失業保険」と「傷病手当金」に焦点を当てて、そのデメリットを詳しく解説していきます。企業独自の退職金制度については、別の機会にお話ししますね。

退職金(企業独自)と公的給付金の違い

この2つの制度の違いを簡単に整理しておきましょう。

項目 企業の退職金 公的給付金(失業保険・傷病手当金)
提供元 勤務先企業 雇用保険・健康保険
受給条件 企業の規定による 法律で定められた要件
金額 勤続年数や給与で変動(数十万〜数千万円) 退職前の給与の約50〜67%(月額10〜25万円程度)
受給期間 退職時に一括または分割 失業保険:90〜330日間
傷病手当金:最長18ヶ月間
課税 退職所得控除あり 非課税

企業の退職金はまとまった金額を一度に受け取るのに対し、公的給付金は毎月定期的に受け取る生活支援というイメージですね。

失業保険と傷病手当金の基本的な仕組み

それでは、この記事の主役である失業保険と傷病手当金について、もう少し詳しく見ていきましょう。

失業保険(雇用保険の基本手当)は、退職後に次の仕事を探している間の生活を支えるための給付金です。ハローワークに求職の申し込みをして、定期的に求職活動をしていることが条件になります。受給額は退職前6ヶ月間の給与をもとに計算され、給与の約50〜80%が支給されます。

受給期間は、年齢や雇用保険の加入期間、退職理由によって異なりますが、自己都合退職の場合は90〜150日間会社都合退職の場合は90〜330日間となっています。

傷病手当金は、病気やケガで働けなくなった場合に、健康保険から支給される給付金です。退職前に加入していた健康保険(主に協会けんぽや組合健保)から支給されます。支給額は、退職前の標準報酬日額の約3分の2で、最長で1年6ヶ月間受け取ることができます。

2025年4月の法改正ポイント

2025年4月から、自己都合退職の場合の給付制限期間が2ヶ月から1ヶ月に短縮されました。以前よりも早く失業保険を受け取れるようになったんですね。ただし、5年間で3回目以降の自己都合退職の場合は、3ヶ月の給付制限がかかりますので、注意が必要です。

それでは、これらの制度にどんなデメリットがあるのか、具体的に見ていきましょう。

退職給付金(失業保険・傷病手当金)の主なデメリット7選

ここからは、失業保険や傷病手当金を受け取る際の具体的なデメリットについて、1つずつ詳しく解説していきますね。それぞれのデメリットに対する対処法も合わせてお伝えしますので、ぜひ参考にしてください。

【手続き面】申請手続きが複雑で時間・労力がかかる

まず最初のデメリットは、手続きの複雑さと煩雑さです。失業保険も傷病手当金も、申請には複数の書類を揃えて、正確に記入する必要があるんですね。

失業保険の場合、ハローワークに行く必要があります。必要な書類は以下のとおりです。

  • 雇用保険被保険者離職票(会社から郵送される、退職後10日前後)
  • 個人番号確認書類(マイナンバーカードや通知カード)
  • 身元確認書類(運転免許証やパスポート)
  • 写真2枚(縦3cm×横2.5cm)
  • 印鑑
  • 本人名義の預金通帳またはキャッシュカード

特に離職票は、会社側の手続きに時間がかかることもあり、退職後すぐには手元に届かないことが多いです。離職票が届くまでの間に、他の書類を準備しておくとスムーズですね。

傷病手当金の場合は、さらに複雑です。

  • 傷病手当金支給申請書(4枚組の複雑な様式)
  • 医師の意見書(申請書の一部を医師に記入してもらう)
  • 事業主の証明書(退職前なら会社に記入してもらう)
  • 出勤簿のコピーや賃金台帳(退職後の場合)

医師に意見書を書いてもらうだけでも、診察の予約を取って受診する必要がありますし、書類の記入にも慣れていないと時間がかかってしまいます。

記入ミスによる審査遅延に注意

書類の記入ミスや添付書類の不足があると、審査が止まってしまい、受給開始が大幅に遅れる可能性があります。特に、日付の記入間違いや押印漏れなど、細かいミスでも差し戻されることがあるんですね。

【対処法】手続きをスムーズに進めるには、以下の準備をしておきましょう。

  1. チェックリストを作成する – 必要書類を一覧にして、準備できたものからチェックを入れていきます
  2. 記入例を事前に確認する – ハローワークや健康保険組合のウェブサイトには記入例が掲載されています
  3. コピーを必ず取っておく – 提出前に全ての書類のコピーを取り、自分の手元に保管しておきます
  4. 不明点は提出前に相談する – ハローワークや健康保険組合の窓口で、提出前に書類を確認してもらいましょう

【受給条件】厳格な条件を満たす必要がある

2つ目のデメリットは、受給条件が厳しいということです。「退職したら誰でももらえる」というわけではないんですね。

失業保険の主な受給条件は以下のとおりです。

  • 離職日以前の2年間に、雇用保険の被保険者期間が通算12ヶ月以上あること(会社都合の場合は6ヶ月以上)
  • 働く意思と能力があること
  • 積極的に求職活動を行っていること

つまり、「働きたくても働けない」状態でなければならず、すぐに働ける状態ではない場合(病気やケガ、妊娠・出産、介護など)は、失業保険を受け取ることができません。

傷病手当金の主な受給条件はこちらです。

  • 業務外の病気やケガで療養中であること
  • 療養のため労務不能であること(医師の診断が必要)
  • 連続する3日間を含む4日以上仕事を休んでいること
  • 休業期間中に給与の支払いがないこと

特に注意したいのが、「労務不能」の判断です。これは医師が判断するもので、自分では「働けない」と思っていても、医師が「労務可能」と判断すれば、傷病手当金は支給されません。

失敗事例:Dさん(35歳・男性)の場合

Dさんは転職を繰り返していたため、直近の会社での雇用保険加入期間が10ヶ月しかありませんでした。退職後にハローワークで申請しようとしたところ、受給資格がないと言われてしまいました。前職での加入期間は通算されないケースもあり、確認不足が原因でした。

【対処法】受給資格があるかどうか、退職前に必ず確認しましょう。

  1. 雇用保険の加入期間を確認する – 給与明細で雇用保険料が引かれているか、加入期間を会社に確認します
  2. ハローワークで事前相談する – 退職前でも、受給資格や見込み額を相談できます
  3. 健康保険の加入状況を確認する – 傷病手当金を受け取る場合、健康保険の加入期間も重要です

【給付制限】自己都合退職は待機期間+給付制限がある

3つ目のデメリットは、自己都合退職の場合、すぐには失業保険を受け取れないという点です。

失業保険を申請すると、まず7日間の待機期間があります。これは退職理由に関係なく、全員に適用されます。そして自己都合で退職した場合、この待機期間の後にさらに1ヶ月間の給付制限期間が設けられています。

つまり、自己都合退職の場合、ハローワークに申請してから約5週間後にようやく初回の給付が受けられることになります。この間は無収入になるため、生活費の準備が必要なんですね。

一方、会社都合退職(倒産、解雇、退職勧奨など)の場合は、7日間の待機期間後すぐに給付が開始されます。

2025年4月の法改正での変更点

以前は自己都合退職の給付制限期間が2ヶ月間でしたが、2025年4月の法改正により1ヶ月間に短縮されました。ただし、5年間で3回目以降の自己都合退職の場合は、3ヶ月の給付制限がかかります。転職を繰り返している方は注意が必要ですね。また、離職日前1年以内または離職後に教育訓練給付金対象の教育訓練を受けた場合は、給付制限が解除されるケースもあります。

【対処法】給付制限期間を乗り切るための準備をしましょう。

  1. 生活費を最低2ヶ月分は確保する – 給付制限期間+初回給付までの時間を考慮して、2ヶ月分の生活費を準備します
  2. 退職理由を正確に伝える – 会社都合に該当する可能性がある場合(ハラスメント、賃金未払いなど)は、証拠を揃えてハローワークに相談しましょう
  3. 特定理由離職者に該当しないか確認する – 正当な理由がある自己都合退職(介護、配偶者の転勤など)は、給付制限が免除される場合があります

【収入制限】副業・アルバイトに厳しい制限がある

4つ目のデメリットは、失業保険を受給中の副業やアルバイトに厳しい制限があるということです。これは意外と知られていないポイントなので、注意が必要なんですね。

失業保険の受給中に働く場合、以下のルールがあります。

  • 週20時間未満の労働に限られる(週20時間以上働くと「就職した」とみなされ、失業保険が打ち切られます)
  • 1日4時間以上働いた日は、その日の失業保険は支給されません(その分は受給期間が延長されます)
  • 1日4時間未満の労働でも、収入によっては減額される可能性があります
  • 働いたことを必ず申告する義務があります(申告しないと不正受給になります)

さらに、傷病手当金の場合は、もっと厳しくなります。傷病手当金は「働けない状態」に対する給付なので、少しでも働いてしまうと、その期間は支給されなくなります。在宅ワークやネット副業も同様です。

失敗事例:Eさん(28歳・女性)の場合

Eさんは失業保険を受給しながら、知人の手伝いで週に3日、1日5時間のアルバイトをしていました。「少しだけだから大丈夫」と思って申告しなかったところ、後日ハローワークから連絡があり、不正受給として全額返還を求められてしまいました。さらに、返還額の2倍のペナルティも課されることに…

【対処法】副業やアルバイトをする場合の正しい対応方法です。

  1. 必ず事前にハローワークに相談する – 働く前に、どのように申告すべきか確認しましょう
  2. 労働時間と収入を正確に記録する – 失業認定日に提出する「失業認定申告書」に正確に記入します
  3. 週20時間未満を厳守する – 週20時間以上働くと、失業保険の受給資格を失います
  4. 傷病手当金受給中は原則働かない – どうしても必要な場合は、健康保険組合に事前相談しましょう

【扶養・税金】扶養から外れる可能性と保険料負担

5つ目のデメリットは、失業保険を受け取ることで、配偶者の扶養から外れてしまう可能性があるという点です。特に、配偶者の扶養に入っている方は、この点をしっかり確認しておく必要がありますね。

扶養には2種類あります。

  1. 税制上の扶養(配偶者控除・配偶者特別控除) – 年収103万円または201万円以下が対象
  2. 社会保険上の扶養(健康保険・厚生年金の被扶養者) – 年収130万円未満が対象

失業保険は非課税なので、税制上の扶養には影響しません。でも、社会保険上の扶養判定には影響するんですね。

失業保険の日額が3,612円以上(年収換算で約130万円以上)になると、社会保険上の扶養から外れる可能性が高くなります。扶養から外れると、自分で国民健康保険と国民年金に加入する必要があり、毎月3〜4万円程度の保険料を負担することになります。

扶養判定は健康保険組合によって異なる

失業保険受給中の扶養判定は、配偶者が加入している健康保険組合によって基準が異なります。一部の健保組合では、失業保険を受給しているだけで扶養から外すところもあるんですね。必ず事前に確認しましょう。また、60歳以上の方の場合は、日額5,000円未満であれば扶養に入れる健保組合もあります。

【対処法】扶養への影響を最小限にする方法です。

  1. 失業保険の日額を計算する – 退職前の給与から、受給日額を概算しておきます(賃金日額×50〜80%)
  2. 配偶者の健保組合に確認する – 失業保険受給中の扶養判定基準を聞いておきましょう
  3. 受給期間を調整する – 扶養から外れるのが困る場合、給付制限期間中は扶養に入れるケースもあります
  4. 国民健康保険の減免制度を確認する – 自治体によっては、失業者向けの減免制度があります

【求職活動義務】定期的な求職活動実績が必須

6つ目のデメリットは、失業保険を受け取るには、定期的な求職活動が義務付けられているという点です。ただお金をもらえるわけではないんですね。

失業保険を継続して受け取るには、4週間に1度、指定された日にハローワークに行って「失業認定」を受ける必要があります。その際、前回の認定日から今回までの間に2回以上の求職活動実績を報告しなければなりません。

求職活動として認められるものは以下のとおりです。

  • ハローワークの職業相談・職業紹介
  • 求人への応募(書類選考、面接)
  • 民間の職業紹介事業者への登録・相談
  • ハローワーク等が実施する就職セミナーへの参加
  • 公的機関が実施する職業訓練の受講

逆に、認められないものもあります。

  • 求人情報サイトを見ただけ
  • 企業のホームページを閲覧しただけ
  • 知人に仕事を紹介してもらえないか相談しただけ
  • 資格試験の勉強

ただ求人を眺めているだけでは実績にならないので、注意が必要です。

効率的な求職活動実績の作り方

ハローワークに行った際に、職業相談コーナーで簡単な相談をするのが最も手軽な方法です。「こういう仕事を探しているんですけど、どう思いますか?」と聞くだけでも1回の実績になります。また、民間の転職エージェントに登録して面談するのも、実績として認められますよ。

【対処法】求職活動実績を無理なく作る方法です。

  1. 認定日当日にハローワークで職業相談する – 認定日に少し早めに行って相談すれば、1回分の実績になります
  2. 転職サイトや転職エージェントを活用する – 複数のサービスに登録して面談すれば、それぞれが実績になります
  3. オンラインセミナーに参加する – ハローワークのオンラインセミナーなら、自宅から参加できて便利です
  4. 実績はメモしておく – 日付、内容、相談先をメモしておくと、認定日の申告がスムーズです

【計画的運用の必要性】受給額は限定的、計画性が不可欠

7つ目のデメリットは、失業保険や傷病手当金の受給額は、決して大金ではないということです。「退職給付金」という言葉から、企業の退職金のようなまとまったお金を想像される方もいらっしゃいますが、実際には月々の生活費を支える程度の金額なんですね。

失業保険の受給額の目安は、退職前6ヶ月の平均給与から計算される賃金日額に給付率(50〜80%)をかけたものです。具体的には以下のような感じです。

  • 退職前の月給20万円の場合 → 失業保険は月額約14〜16万円
  • 退職前の月給30万円の場合 → 失業保険は月額約17〜19万円
  • 退職前の月給40万円の場合 → 失業保険は月額約19〜21万円

給付率は賃金日額によって変動し、低賃金ほど高く(最大80%)、高賃金ほど低く(最低50%)なる仕組みです。また、基本手当日額には年齢に応じた上限額があるため、高収入の方ほど給与に対する受給額の割合は低くなります。

さらに、受給できる期間も限られています。自己都合退職で雇用保険加入期間が10年未満の場合、わずか90日間(約3ヶ月)しか受け取れません。

傷病手当金の場合は、標準報酬日額の約3分の2なので、月給30万円の方なら、月額約20万円程度です。

計画不足の事例:Fさん(42歳・男性)の場合

Fさんは失業保険を頼りに退職しましたが、受給期間が90日間しかないことを知りませんでした。「半年くらいはもらえるだろう」と思ってのんびり転職活動をしていたところ、3ヶ月で給付が終了。貯金もほとんどなく、焦って条件の悪い仕事に就くことになってしまいました。

【対処法】受給額と期間を踏まえた計画的な活用が大切です。

  1. 受給総額を事前に計算する – ハローワークで見込み額を確認し、総額でいくら受け取れるか把握します
  2. 生活費を見直す – 受給額で足りない部分は、支出を削減するか、貯金を取り崩す計画を立てます
  3. 転職活動のスケジュールを立てる – 受給期間内に再就職できるよう、計画的に活動します
  4. 再就職手当を狙う – 早期に再就職すると、残りの受給日数分の一部を「再就職手当」として一括で受け取れます

傷病手当金特有のデメリットと注意点

ここまで失業保険と傷病手当金に共通するデメリットを見てきましたが、傷病手当金には特有の注意点もあります。病気やケガで働けなくなった場合に受け取れる制度ですが、いくつか知っておくべきポイントがあるんですね。

医師の診断書が必須で自己判断では受給不可

傷病手当金を受け取るには、医師による「労務不能」の診断が絶対に必要です。自分で「働けない」と判断しても、医師が認めなければ受給できません。

申請書には、医師が記入する欄があり、以下の内容を医師に証明してもらう必要があります。

  • 病名または症状
  • 初診日
  • 労務不能と認めた期間
  • 労務不能と判断した理由

このため、定期的に医師の診察を受ける必要があり、診察料や診断書料(3,000〜5,000円程度)がかかります。また、医師によっては「もう働けるのではないか」と判断されることもあり、自分の症状を正確に伝えることが重要です。

労務不能と判断される基準の厳しさ

「労務不能」と認められる基準は、思っているよりも厳しいんですね。「体調が悪い」「気分が優れない」というだけでは認められないことも多いです。

特に精神疾患(うつ病、適応障害など)の場合、症状の重さを客観的に判断するのが難しく、医師によって判断が分かれることもあります。継続的な通院と治療の記録が重要になってきます。

副業すると不支給になるリスク

失業保険の場合は、一定の条件内で働くことができましたが、傷病手当金の場合は、原則として一切働くことができません

たとえ在宅でのパソコン作業や、軽作業であっても、働いた事実があれば「労務不能」ではないと判断され、その期間の傷病手当金は支給されなくなります。

SNS投稿にも注意

最近では、SNSでの投稿内容も確認されることがあります。「元気に外出している写真」や「趣味を楽しんでいる投稿」などが、労務不能の判断に影響することもあるんですね。慎重に行動しましょう。

退職給付金を利用するメリット(デメリットとの比較)

ここまでデメリットばかりお話ししてきましたが、もちろん失業保険や傷病手当金には大きなメリットもあります。デメリットと比較して、自分にとって受給する価値があるか判断する材料にしてくださいね。

経済的な安心感で転職活動に専念できる

最大のメリットは、収入がある状態で、じっくり次の仕事を探せるということです。貯金を切り崩しながら転職活動をするのと、定期的に給付金が入ってくるのとでは、精神的な余裕が全く違いますよね。

焦って条件の悪い仕事に就いてしまうリスクを減らせるのは、大きなメリットです。

適切に組み合わせると最長で受給期間を延ばせる

失業保険と傷病手当金を上手に組み合わせると、受給期間を延ばすことができます。ただし、同時には受給できません

具体的には、先に傷病手当金を最長18ヶ月受け取り、その後体調が回復してから失業保険を受け取るという流れです。失業保険は病気やケガで求職活動ができない期間、受給期間を最長4年まで延長できる制度があるため、この仕組みを利用すれば、順番に両方を受け取ることができるんですね。

非課税で全額生活費に充当できる

失業保険も傷病手当金も非課税です。つまり、受け取った金額に対して所得税も住民税もかからないんですね。

さらに、雇用保険料や健康保険料の負担もありません(ただし、扶養から外れた場合は国民健康保険・国民年金の負担が発生します)。受け取った金額を、そのまま生活費として使えるのは大きなメリットです。

再就職手当等のインセンティブ制度

失業保険には、早期に再就職すると「再就職手当」がもらえるという制度があります。

受給期間の残り日数が3分の1以上ある状態で再就職すると、残りの日数分の60〜70%を一括で受け取れるんですね。例えば、90日間の受給期間のうち、30日分受け取った時点で再就職した場合、残り60日分の約60%(36日分)を一時金として受け取れます。

メリット・デメリット比較表
項目 メリット デメリット
経済面 定期的な収入で生活が安定
非課税で全額使える
受給額は給与の50〜80%
受給期間は限定的
転職活動 焦らず仕事を選べる
早期就職でボーナスあり
定期的な求職活動が義務
ハローワークに通う必要
手続き 条件を満たせば誰でも受給可能 手続きが複雑で時間がかかる
書類のミスで遅延リスク
働き方 受給中も条件内で働ける(失業保険) 週20時間未満の制限
傷病手当金は働けない
扶養・保険 税制上の扶養に影響なし 社会保険の扶養から外れる可能性
国保・国民年金の負担

デメリットを踏まえた退職給付金申請の判断基準

ここまでの内容を踏まえて、自分が失業保険や傷病手当金を申請すべきかどうか、判断基準を整理してみましょう。人それぞれ状況が違うので、自分に当てはまるケースを確認してくださいね。

申請すべき人の特徴

以下に当てはまる方は、積極的に申請を検討すべきです。

  • 雇用保険の加入期間が12ヶ月以上ある – 受給資格を満たしている
  • 貯金が少なく、すぐに収入が必要 – 生活費の確保が最優先
  • じっくり時間をかけて転職先を選びたい – 焦らず良い仕事を見つけたい
  • 会社都合退職や特定理由離職者に該当する – 給付制限がなく早く受給できる
  • 病気やケガで働けない期間がある – 傷病手当金で治療に専念できる
  • 配偶者の扶養に入っていない(または扶養判定に影響しない) – 扶養を気にせず受給できる

慎重に検討すべき人の特徴

以下に当てはまる方は、メリット・デメリットをよく比較検討すべきです。

  • すでに次の就職先が決まっている – 受給期間が短く、手間に見合わない可能性
  • 配偶者の扶養に入っている(入りたい) – 扶養から外れるリスクを検討
  • 副業やフリーランスで安定収入がある – 失業保険の受給資格がない可能性
  • 雇用保険の加入期間が短い(10ヶ月程度) – 受給期間が短く、メリットが限定的
  • 手続きに時間を割けない – 複雑な手続きがストレスになる可能性

申請しない方がよいケース

以下に当てはまる方は、申請を見送った方がよいかもしれません。

  • 海外移住や長期留学の予定がある – 求職活動ができないため受給資格なし
  • 起業や自営業の開始が決定している – 「失業」状態ではないため対象外
  • 専業主婦(夫)になる予定 – 働く意思がないため対象外
  • 大学や専門学校に通う – 求職活動ができないため原則対象外(一部例外あり)
  • 雇用保険に加入していなかった – 受給資格なし
自分に合った判断をするためのチェックポイント
  1. 雇用保険の加入期間を確認する(給与明細や会社に問い合わせ)
  2. 退職理由が自己都合か会社都合かを確認する
  3. 受給見込み額と期間を計算する(ハローワークのウェブサイトで試算可能)
  4. 配偶者の健康保険組合の扶養判定基準を確認する
  5. 退職後の生活費と転職活動期間を見積もる
  6. 手続きにかかる時間と労力を考慮する

デメリットを最小化する実践的な対処法

失業保険や傷病手当金のデメリットを理解した上で、それらを最小限に抑える方法を実践していきましょう。ちょっとした工夫で、スムーズに受給できるようになりますよ。

申請前の準備でミスを防ぐ

退職前にできる準備をしておくと、申請がスムーズになります。

  1. 雇用保険被保険者証を探しておく – 入社時に会社から渡されているはずです(会社が保管している場合は退職時に返却してもらいます)
  2. 年金手帳の場所を確認する – 国民年金の手続きに必要です
  3. 健康保険証のコピーを取っておく – 傷病手当金の申請に必要な情報があります
  4. 離職票の到着予定日を会社に確認する – 遅れる場合は早めに催促できます
  5. ハローワークの場所と開庁時間を調べておく – 平日のみの対応なので、スケジュールを調整します

傷病手当金と失業保険の順序戦略

もし病気やケガで働けない期間がある場合、傷病手当金を先に受給してから失業保険を受給するという戦略が有効です。

これは、失業保険の受給期間を延長できる制度を利用するものです。病気やケガで求職活動ができない期間は、失業保険の受給期間を最長4年まで延長できるんですね。その間に傷病手当金を受け取り、体調が回復してから失業保険を申請すれば、順番に両方を受給することが可能になります。

傷病手当金と失業保険は同時受給できません

傷病手当金は「働けない状態」に対する給付で、失業保険は「働く意思と能力がある状態」に対する給付なので、同時に受給することはできません。必ず順番に受給する必要があります。受給期間延長の手続きを忘れずに行いましょう。

ハローワークとの上手な付き合い方

ハローワークの職員さんとの良好な関係を築くことも大切です。

  • わからないことは遠慮なく質問する – 「こんなこと聞いていいのかな」と思わず、どんどん聞きましょう
  • 認定日は必ず守る – やむを得ない理由で行けない場合は、事前に連絡します
  • 正直に申告する – 働いた日や収入は正確に報告しましょう
  • 職業相談を活用する – 求職活動の実績作りだけでなく、有益なアドバイスをもらえることもあります

専門家(社労士・FP)への相談タイミング

複雑なケースでは、専門家に相談するのも一つの方法です。

  • 社会保険労務士(社労士) – 失業保険や傷病手当金の制度に詳しく、申請書類のチェックもしてもらえます
  • ファイナンシャルプランナー(FP) – 退職後の生活設計や家計管理のアドバイスをもらえます

相談料はかかりますが(30分5,000円〜1万円程度)、間違った手続きで受給できなくなるリスクを考えると、価値のある投資かもしれませんね。

よくある誤解と失敗事例

失業保険や傷病手当金を申請した方の中には、誤解や知識不足で失敗してしまったケースもあります。同じ失敗を避けるために、よくある事例を紹介しますね。

「失業保険はもらわないと損」という誤解

「せっかく雇用保険料を払ってきたんだから、失業保険はもらわないと損だ」と考える方もいらっしゃいます。でも、これは必ずしも正しくないんですね。

例えば、すでに次の就職先が決まっている場合、失業保険を受け取るメリットは少ないです。手続きの手間や、ハローワークに通う時間を考えると、受け取らない方が賢明なこともあります。

また、配偶者の扶養に入りたい場合も、失業保険を受け取ることで扶養から外れてしまうなら、受け取らない方がトータルで得ということもあるんですね。

申請順序を間違えて受給総額が減った事例

失敗事例:Gさん(38歳・女性)の場合

Gさんは退職後、すぐに失業保険を申請しました。その後、体調を崩して働けなくなり、傷病手当金も申請しようとしたのですが、失業保険を受給中は傷病手当金を受け取れないことを知りませんでした。結局、失業保険の受給を停止して傷病手当金に切り替えましたが、本来なら傷病手当金を先に受給してから失業保険を受給すれば、受給期間を延ばせたはずでした。

正しい順序は、傷病手当金(最長18ヶ月)を先に受給 → 失業保険の受給期間延長手続きをしておく → 体調回復後に失業保険を受給、です。この順序を守ることで、両方を順番に受け取れます。

副業禁止を知らずに不支給になった事例

失敗事例:Hさん(31歳・男性)の場合

Hさんは傷病手当金を受給しながら、自宅でできるデータ入力の仕事を少しだけ請け負っていました。「在宅の軽作業だから大丈夫だろう」と思っていたところ、健康保険組合から確認の連絡があり、その期間の傷病手当金が全額不支給になってしまいました。合計で約40万円の損失です。

傷病手当金は「労務不能」に対する給付なので、どんな形であれ働いてしまうとアウトなんですね。

書類不備で受給開始が大幅に遅れた事例

失敗事例:Iさん(45歳・女性)の場合

Iさんは失業保険の申請書類を提出しましたが、離職票の記載内容に誤りがありました。会社に修正を依頼したところ、担当者が退職していて対応が遅れ、結局受給開始が2ヶ月も遅れてしまいました。その間の生活費に困り、消費者金融から借り入れる羽目に…

離職票が届いたら、すぐに内容を確認することが大切です。特に、退職日や離職理由、賃金額などに間違いがないかチェックしましょう。

よくある質問(FAQ)

失業保険をもらうと次の就職に不利になりますか?
いいえ、失業保険を受給したことが次の就職に不利になることはありません。失業保険は正当な権利として受け取れる給付金ですし、企業側も失業保険の受給歴を調べることはできません。むしろ、焦って条件の悪い仕事に就くよりも、失業保険を受給しながらじっくり自分に合った仕事を探す方が、長い目で見れば良い結果につながることが多いですよ。
副業は絶対にダメですか?少しでも働くと失業保険はもらえませんか?
失業保険の場合、週20時間未満の労働であれば認められています。ただし、1日4時間以上働いた日は、その日の失業保険が支給されません(受給期間が延長されます)。また、収入額によっては減額される可能性もあります。大切なのは、必ず正直に申告することです。申告しないと不正受給となり、全額返還+ペナルティが課されます。一方、傷病手当金の場合は、原則として一切働くことができませんので注意してくださいね。
配偶者の扶養に入ったまま失業保険を受け取ることはできますか?
失業保険の日額が3,612円未満であれば、社会保険上の扶養に入ったまま受給できる可能性が高いです。ただし、これは配偶者が加入している健康保険組合によって基準が異なります。一部の健保組合では、失業保険を受給しているだけで扶養から外すところもあるんですね。必ず事前に、配偶者の勤務先の健康保険組合に確認することをおすすめします。なお、税制上の扶養(配偶者控除)については、失業保険は非課税なので影響ありません。
自己都合退職でも、すぐに失業保険を受け取る方法はありますか?
特定の理由がある自己都合退職の場合、「特定理由離職者」として、給付制限なしで受給できることがあります。該当する理由には、体力不足・心身の障害、妊娠・出産・育児、家族の介護、配偶者の転勤に伴う転居、通勤困難(片道2時間以上など)などがあります。また、パワハラやセクハラで退職した場合も、証拠があれば会社都合退職と同等の扱いになることがあります。さらに、2025年4月以降は、離職日前1年以内または離職後に教育訓練給付金対象の教育訓練を受けた場合、給付制限が解除されるケースもあります。該当しそうな場合は、ハローワークで相談してみてくださいね。
退職してから1年以上経ってしまいました。今からでも失業保険は申請できますか?
失業保険の申請期限は、離職日の翌日から1年間です。残念ながら、1年を過ぎてしまうと原則として受給できません。ただし、病気やケガ、妊娠・出産などで求職活動ができなかった場合は、最長4年まで受給期間を延長できる制度があります。この延長手続きは、働けなくなった日から30日経過後、できるだけ早く(原則として働けなくなった日から1ヶ月以内に)ハローワークで行う必要があります。もし該当する事情があったなら、諦めずにハローワークに相談してみることをおすすめします。
ハローワークに行く時間がありません。オンラインで完結できませんか?
残念ながら、失業保険の手続きは原則としてハローワークへの来所が必要です。特に、4週間に1度の失業認定は、本人が直接ハローワークに行って認定を受ける必要があります。ただし、初回の求職申込みについては、ハローワークのウェブサイトから事前に入力しておくことで、窓口での手続き時間を短縮できます。また、求職活動実績については、オンラインセミナーへの参加でも認められるようになりました。完全にオンラインで完結はできませんが、工夫次第で来所回数や滞在時間を減らすことは可能ですよ。
失業保険と傷病手当金は同時に受け取れますか?
いいえ、失業保険と傷病手当金を同時に受け取ることはできません。失業保険は「働く意思と能力がある」ことが条件で、傷病手当金は「働けない状態」に対する給付だからです。もし失業保険を受給中に病気やケガで働けなくなった場合は、失業保険を一時停止して傷病手当金を受給することになります。逆に、傷病手当金を受給中に体調が回復した場合は、失業保険に切り替えることができます。どちらを先に受給するかは戦略的に選ぶことが大切で、一般的には傷病手当金→失業保険の順序が受給総額を最大化できますよ。ただし、傷病手当金受給中は失業保険の受給期間延長手続きを忘れずに行いましょう。

【まとめ】退職給付金のデメリットを正しく理解して賢く活用

この記事のポイントまとめ

失業保険・傷病手当金の主なデメリット

  • 申請手続きが複雑で時間・労力がかかる
  • 雇用保険加入期間などの厳格な受給条件がある
  • 自己都合退職は1ヶ月間の給付制限期間がある(2025年4月改正)
  • 副業・アルバイトに週20時間未満の制限がある
  • 配偶者の扶養から外れる可能性がある(日額3,612円以上)
  • 定期的な求職活動実績の報告が必要
  • 受給額は給与の50〜80%で期間も限定的

デメリットを最小化するポイント

  • 退職前に受給資格と見込み額を確認する
  • 必要書類を事前に準備し、記入例を確認する
  • 扶養への影響を配偶者の健保組合に確認する
  • 傷病手当金→失業保険の順序で受給する(同時受給は不可)
  • 副業する場合は必ず正直に申告する
  • わからないことは専門家やハローワークに相談する

申請すべきかの判断基準

  • 貯金が少なく収入が必要な方 → 積極的に申請を検討
  • じっくり転職先を選びたい方 → メリット大
  • すぐに就職先が決まっている方 → 申請の必要性は低い
  • 配偶者の扶養に入りたい方 → 慎重に検討
  • 海外移住・起業予定の方 → 対象外の可能性大

失業保険や傷病手当金は、退職後の生活を支える大切なセーフティネットです。確かにデメリットや注意点もありますが、正しく理解して活用すれば、焦らず次のステップに進むための強い味方になってくれます。

大切なのは、自分の状況に合わせて、メリット・デメリットを天秤にかけて判断することです。「みんなが申請しているから」「もらえるものはもらっておこう」という安易な考えではなく、自分にとって本当に必要かどうかを見極めましょう。

もし不安や疑問があれば、遠慮なくハローワークや専門家に相談してくださいね。あなたの退職後の生活が、少しでも安心で充実したものになることを願っています。

次にすべきアクション
  1. 雇用保険の加入状況を確認する
    給与明細や会社に問い合わせて、雇用保険の加入期間を確認しましょう
  2. 最寄りのハローワークを調べる
    厚生労働省ハローワークのウェブサイトで、所在地と開庁時間を確認
  3. 受給見込み額を試算する
    ハローワークのウェブサイトにある簡易計算ツールで、おおよその金額を把握
  4. 配偶者の健保組合に確認する
    扶養に入っている場合は、失業保険受給中の扶養判定基準を確認
  5. 必要書類の準備を始める
    マイナンバーカード、預金通帳、印鑑、写真などを準備
主な相談先リソース

この記事が、あなたの退職後の人生設計に少しでもお役に立てれば嬉しいです。デメリットもしっかり理解した上で、賢く制度を活用してくださいね。