「始末書を書いてください」と突然言われて、何から手をつけたらいいか戸惑っていませんか?どんな内容を書けばいいのか、どう提出すれば印象が悪くならないのか、気になることがたくさんありますよね。
この記事では、始末書の基本的な書き方から、そのまま使えるケース別例文テンプレート、やってはいけないNG表現、提出のマナーまで、はじめて書く方でも迷わないよう順を追って説明しています。
- 始末書・顛末書・反省文の違いと使い分け
- 始末書の正しい書き方と6つの構成要素
- 反省が伝わらなくなるNG表現と改善例
- 遅刻・紛失・交通事故など状況別の例文テンプレート8種
- 手書き・PC・封筒・タイミングなど提出マナー
- 法的効力や拒否できるかどうか
- 人事・管理職向けの注意点
始末書とは?反省文・顛末書との違い
始末書とは、業務上のミスや規則違反を起こした当事者が、会社の指示に基づき、事実の経緯・謝罪・反省・再発防止策を記載して提出する文書です。自分から進んで提出するものではなく、上長や人事部から提出を求められたときに作成するのが一般的です。単に「ごめんなさい」を伝えるだけでなく、同じことを繰り返さないための誓約書という意味合いも持っています。
似た文書に「顛末書(てんまつしょ)」と「反省文」がありますが、目的と内容がそれぞれ少し違います。混同しやすいので、まず下の表で整理しておきましょう。
始末書・顛末書・反省文の比較
| 文書名 | 主な目的 | 主な記載内容 | 作成者 | 懲戒との関係 | 提出の強制力 |
|---|---|---|---|---|---|
| 始末書 | 謝罪と再発防止の誓約 | 発生経緯+謝罪+反省+再発防止策 | 当事者本人 | けん責などの懲戒処分に伴う場合が多い。社内向けが基本だが社外(取引先・顧客)へ提出するケースもある | 強制は難しい場合が多い(裁判例上) |
| 顛末書 | 事実関係の客観的報告 | 発生経緯・原因・対応状況・再発防止策。社外向けは当事者の詳細や損害を省いて作成することが多い | 当事者本人、または状況に応じて部門責任者など最も適任な立場の人 | 懲戒処分との直接の関係は薄い | 業務命令として提出を求められる |
| 反省文 | 個人の反省と改善の確認 | 反省の気持ちと自己振り返り(社内向けが多い) | 当事者本人 | 懲戒に至らない軽微な問題で求められることが多く、懲戒処分の対象になりにくい | 強制は難しい場合が多い |
要するに、始末書は「謝罪+再発防止の誓約」がセットになっている点が一番の特徴です。顛末書は主に「何が起きたかの記録」、反省文は「気持ちの振り返り」と考えると、区別しやすいですよ。
始末書が必要になる主なケース
どんな場面で始末書の提出を求められるのか、代表的なケースを見ておきましょう。
- 遅刻・無断欠勤を繰り返した場合
- 業務用備品や社用車を紛失・破損した場合
- 顧客や取引先に金銭的損害を与えるミスをした場合
- 社用車での交通事故を起こした場合
- 機密情報や個人情報を漏洩させてしまった場合
- 就業規則(服務規程)に違反した場合
- 経費を不正使用した場合
- ハラスメント行為が認定された場合
始末書の基本構成と書き方のポイント
始末書に決まった書式がある会社では、その様式に従えば大丈夫です。とくに指定がない場合は、以下の6つの要素を押さえて書くと、受け取る側にとってわかりやすい文書になります。
始末書の6つの構成要素
書き出し(謝罪・概要)の書き方
冒頭は謝罪と問題の概要から入ります。「このたびは〜により、多大なご迷惑をおかけし、誠に申し訳ございません」というシンプルな形が基本です。長々と謝罪を続けるよりも、誠実に一言詫びてから事実の説明に移る方が、受け取る側には読みやすい印象を与えます。
経緯・原因の書き方
5W1H(いつ・どこで・誰が・何を・なぜ・どのように)を意識して時系列で書きましょう。推測や感情は混ぜず、起きた経緯を客観的に記載します。
「おそらく〜だったと思います」「〜だったかもしれません」といった曖昧な表現は避けましょう。確認できていない部分は「現時点では確認中です」と書く方が信頼を損ないません。
反省・謝罪の書き方
「今後は気をつけます」だけでは、反省の内容が伝わりません。自分のどのような行動や判断が問題だったのかを具体的に振り返り、それに対する反省の言葉を書くことが大切です。
再発防止策の書き方
再発防止策は、始末書の中でも特に重要な部分のひとつです。「精神論ではなく、仕組みで防ぐ」という視点が好印象につながります。具体的な行動や手順として書くほど、受け取る側に誠意と実現可能性が伝わります。
- 「十分注意します」→ 🚫 精神論のみで具体性がない
- 「業務前に必ずチェックリストで確認する」→ ✅ 具体的な行動
- 「同僚にダブルチェックをお願いする体制を作る」→ ✅ 仕組みとして再発を防ぐ
始末書でやってはいけないこと|NG表現と改善例
始末書で一番避けたいのは、読んだ上司に「本当に反省しているのかな?」と感じさせてしまうことです。意図せずそう見えてしまう表現のパターンを、改善例とあわせて確認しておきましょう。
❌ NG1|言い訳・責任転嫁の表現
外部要因を書くこと自体は問題ありませんが、「なぜ自分に責任があるのか」という視点を添えることで、責任感が伝わる文章になります。
❌ NG2|抽象的・精神論的な再発防止策
❌ NG3|経緯の曖昧化・オーバーな謝罪
また、過度に自分を責める表現も印象がよくありません。「全力で挽回する」「生涯忘れません」のような大仰な表現より、シンプルで誠実な文章の方が信頼感があります。
- 経緯を5W1Hで具体的に書いているか
- 外部要因だけに責任を押しつけていないか
- 再発防止策が「気をつけます」以上の具体策になっているか
- 推測や不確かな情報を確定した経緯として書いていないか
- 過度な自己批判や大仰な表現を使っていないか
- 日付・宛先・差出人・捺印に漏れがないか
【状況別】始末書の例文テンプレート8選
ここからは、状況ごとの例文テンプレートを紹介します。そのまま使うのではなく、氏名・日時・具体的な状況を自分のケースに書き換えてご使用ください。会社の書式がある場合はそちらを優先してください。
📄 例文1|遅刻・無断欠勤の始末書
〇〇株式会社
代表取締役 見本 一郎 様
営業部 第二課
見本 花子 印
始 末 書
このたびは、令和 年 月 日( 曜日)午前10時より開催予定の部門会議に、30分遅刻してしまいましたことを、深くお詫び申し上げます。
【経緯】
令和 年 月 日、利用路線の電車遅延により、会社到着が通常より40分遅れました。遅延の発生時刻は午前8時30分頃であり、代替路線への切り替えも試みましたが、結果として会議開始から30分が経過した午前10時30分に着席しました。
【原因】
電車遅延の可能性を考慮した余裕のある出発時間を設定していなかったことが根本的な原因です。普段から乗り継ぎに余裕がない行動パターンになっていたことを深く反省しております。
【再発防止策】
・重要な会議の当日は、通常より30分以上早い電車を利用する
・前日夜に翌日のスケジュールと交通情報を確認する習慣をつける
・遅延が発生した場合は速やかに上長へ連絡し、指示を仰ぐ
今後はこのようなことが二度とないよう、業務に精励いたします。
以上
署名 印
📄 例文2|備品・書類の紛失の始末書
〇〇株式会社
総務部長 見本 次郎 様
営業部 第一課
見本 一男 印
始 末 書
このたびは、会社貸与のICカード型社員証を紛失してしまいましたことを、深くお詫び申し上げます。
【経緯】
令和 年 月 日( 曜日)の退社時に社員証を所持していたことを確認しておりますが、翌 月 日の出社時に見当たらず、紛失に気づきました。同日午前9時に総務部へ報告し、同日中に使用停止処理を完了していただきました。なお、紛失した社員証が第三者に悪用された事実は現時点で確認されておりません。
【原因】
退社後に立ち寄った場所での管理が不十分であったことが原因と考えられます。バッグの決まったポケットへの収納を徹底せず、紛失しやすい状況を作ってしまいました。
【再発防止策】
・社員証は専用ホルダーに入れ、常にバッグの定位置に収納する
・退社前に持ち物リストで確認する習慣をつける
・紛失に気づいた際は即座に総務部へ報告する
以上のことを守り、今後は会社備品を適切に管理してまいります。
以上
署名 印
📄 例文3|業務上のミス(顧客への損害)
〇〇株式会社
営業部長 見本 三郎 様
営業部 第三課
見本 美穂 印
始 末 書
このたびは、株式会社△△様への納品書において数量の誤記載が発生し、ご迷惑をおかけしてしまいましたことを、深くお詫び申し上げます。
【経緯】
令和 年 月 日付の納品書(書類番号:XXXX)に、商品Aの数量を「50個」と記載すべきところ「500個」と誤って入力したまま送付しました。同日午後に先方より数量の相違について連絡があり、発覚しました。訂正書類は当日中に再送付し、先方より受領の確認をいただきました。
【原因】
納品書作成後に内容を確認せずにそのまま送付してしまったことが直接の原因です。入力ミスを防ぐための自己チェックの手順を省いてしまいました。
【再発防止策】
・書類送付前に必ず印刷して数値を目視確認する
・上長または同僚によるダブルチェックを必須プロセスとする
・入力後に合計数量と注文書を照合するチェックシートを作成する
以上
署名 印
📄 例文4|社用車での交通事故
〇〇株式会社
代表取締役 見本 一郎 様
営業部 第一課
見本 健一 印
始 末 書
このたびは、社用車の運転中に交通事故を起こし、会社に多大なご迷惑をおかけしてしまいましたことを、深くお詫び申し上げます。
【経緯】
令和 年 月 日( 曜日)午後2時15分頃、〇〇市△△町の□□交差点を右折する際、対向車線の直進車両と接触する事故が発生しました。双方に人身の怪我はありませんでしたが、相手方車両左側面と弊社社用車(ナンバー○○-○○)のバンパー部分に損傷が生じました。事故後、速やかに警察への届出を行い、会社および保険会社への連絡を完了しています。
【原因】
対向車の速度を見誤り、右折のタイミング判断が不適切であったことが原因です。業務の時間的プレッシャーを感じており、安全確認が十分でなかったことを深く反省しております。
【再発防止策】
・交差点での右折時は必ず対向車が完全に通過してから発進する
・時間的余裕を持った移動スケジュールを上長と事前に確認する
・防衛運転に関する社内研修を受講する
以上
署名 印
📄 例文5|情報漏洩・機密書類の取り扱いミス
〇〇株式会社
代表取締役 見本 一郎 様
システム開発部
見本 幸子 印
始 末 書
このたびは、業務上知り得た顧客情報を誤って社外のメールアドレスへ送信してしまいましたことを、心よりお詫び申し上げます。
【経緯】
令和 年 月 日( 曜日)午後4時頃、顧客A社の担当者様宛にメールを送信する際、宛先の入力ミスにより、社外の無関係な第三者(○○様:確認済)にファイルが送達されました。メール本文に顧客A社の氏名・連絡先が記載されていました。誤送信に気づいた時刻は午後4時20分であり、直ちに上長へ報告し、先方への削除依頼を完了しました。
【原因】
メール送信前に宛先の確認を行わなかったことが直接の原因です。類似したアドレスがアドレス帳に登録されており、オートコンプリート機能で誤ったアドレスが自動入力されました。
【再発防止策】
・顧客情報を含むメール送信時は、必ず上長確認を経るフローに変更する
・オートコンプリート機能を無効化またはダブルチェックの確認ダイアログを設定する
・個人情報を含む添付ファイルにはパスワードを設定する運用に変更する
以上
署名 印
📄 例文6|就業規則違反(服務規程)
〇〇株式会社
代表取締役 見本 一郎 様
製造部 第二ライン
見本 正男 印
始 末 書
このたびは、就業規則に定められた所定の手続きを経ずに職場外でのアルバイト就労を行っていたことが判明し、会社に対して多大なご迷惑をおかけしてしまいましたことを、深くお詫び申し上げます。
【経緯】
令和 年 月から令和 年 月にかけて、就業規則第○条(副業・兼業の禁止規定)に定められた事前申請・許可手続きを経ることなく、週末に飲食店での短時間アルバイトを行っておりました。
【原因】
就業規則の当該規定を正確に把握していなかったことが原因です。「週末のみ・短時間であれば問題ない」と独自に解釈しておりましたが、これは規則への理解不足であったと認識しております。
【再発防止策】
・就業規則を改めて全文精読し、疑問点は人事部に確認する
・今後は副業・兼業を行う際は必ず事前に許可申請を提出する
・社内コンプライアンス研修への参加を申し込む
以上
署名 印
📄 例文7|ハラスメント行為に関する始末書
〇〇株式会社
代表取締役 見本 一郎 様
第一営業部 部長
見本 雄二 印
始 末 書
このたびは、部下である○○氏に対して不適切な言動を行い、精神的苦痛を与えてしまいましたことを、深くお詫び申し上げます。
【経緯】
令和 年 月 日、業績に関するミーティングの場において、○○氏に対し「この程度の数字も達成できないのか」と叱責し、他の複数の社員の前で能力を否定するような発言を行いました。
【原因】
成果へのプレッシャーから感情的になってしまい、発言が相手の尊厳を傷つけるものになっていることに気づけませんでした。指導の目的と手段について十分に考えられていなかったことを深く反省しております。
【再発防止策】
・ハラスメント防止に関する外部研修を受講する
・部下への指導は個別面談を基本とし、公衆の場での叱責は行わない
・定期的に部下との1on1面談を設け、信頼関係の構築に努める
以上
署名 印
📄 例文8|経費の不正使用
〇〇株式会社
代表取締役 見本 一郎 様
経理部
見本 由美 印
始 末 書
このたびは、業務と無関係な支出を交際費として経費精算していたことが判明し、会社に対して多大なご迷惑をおかけしてしまいましたことを、深くお詫び申し上げます。
【経緯】
令和 年○月〜○月の間、計3回(合計金額:○○円)にわたり、私的な食事代を取引先との接待として虚偽の内容で経費申請していました。
【原因】
経費規程の理解が不十分なまま申請を行っていたこと、また一度通過した申請がそのまま承認されたことで問題ないと誤認していたことが原因です。
【再発防止策】
・不正に取得した金額の全額を速やかに返金する
・経費規程を精読し、申請可能な費用の基準を正確に把握する
・申請前に上長へ確認するプロセスを習慣化する
上記返金については、○月○日までに経理部へお支払いする旨、別途ご連絡いたします。
以上
署名 印
始末書の提出マナー|手書き・PC・封筒・タイミング
内容が良くても、提出の形式がちぐはぐだと「マナーが身についていない」という印象を与えてしまうことがあります。細かい点ではありますが、丁寧に対応することで誠意が伝わります。
手書きとPCどちらが正解?
結論からいうと、まず会社の慣習やルールに従うのが正解です。PCでの提出が一般的な会社もありますし、手書きを重んじる会社もあります。
用紙・封筒の選び方と折り方
| 項目 | 推奨 | 注意点 |
|---|---|---|
| 用紙 | 白い便箋(B5またはA4) | 罫線入りでも無地でも可。会社指定があればそれに従う |
| インク・筆記具 | 黒のボールペンまたは万年筆 | 鉛筆・消せるボールペンは不可。青インクも避けるのが無難 |
| 封筒 | 白い二重封筒(長形3号:120×235mm) | A4三つ折りが入るサイズ。茶封筒は事務書類向けのため不向き。上長へ直接手渡しする場合は封筒を使わないケースもあるため、会社の慣習に従う |
| 折り方 | 三つ折り(下から折り上げ、上を被せる) | まず下三分の一を折り上げ、次に上三分の一を折り下げて被せる。この折り方にすると、封筒から取り出して折りを開いたとき、書き出し(文頭)が最初に目に入る向きになる |
| 封筒の表書き | 「始末書在中」と朱書き(封筒を使う場合) | 封筒の左下に縦書きで記載する。上長への直接手渡しの場合は封筒に入れないケースも多く、会社慣習に従う |
宛名の書き方に注意
「○○社長 様」のように、役職に「様」を重ねる書き方は二重敬称(俗に二重敬語とも呼ばれます)にあたり、マナー違反です。
正しい書き方:「○○株式会社 代表取締役 見本 一郎 様」のように「役職名+氏名+様」で記載するのが現在のビジネス文書では一般的です。「殿」を使う慣習が残っている会社もありますが、迷う場合は「様」を選ぶのが無難です。
提出のタイミングと自分用コピーの保管
- 提出はできるだけ早く。求められた翌営業日を目安にすると印象がよいです。提出が遅れるほど「反省していないのでは」と受け取られることがあります
- 内容を確認するためにも、提出前に必ずコピーを1部手元に保管しておきましょう。後日、内容を確認・参照する必要が出てくることがあります
- 直接上長または人事部に手渡しが基本です。郵送する場合は簡易書留など記録の残る方法を選ぶと安心です
始末書の法的効力と拒否できるかについて
始末書には「法的な面でどんな意味があるの?」「断ることはできるの?」という疑問をお持ちの方も多いです。ここでは、法的な側面についてわかりやすく整理します。
始末書は拒否できるか?
日本国憲法第19条では「思想・良心の自由」が保障されており、反省や謝罪の内容を強制することには限界があるとされています。ただし、始末書の提出命令そのものが違法かどうかは、就業規則の規定内容や事案の性質によって異なり、裁判例でも判断が分かれています。法的な判断は非常にケースバイケースであるため、以下はあくまで一般的な考え方の参考としてご覧ください。
| 状況 | 一般的な考え方 |
|---|---|
| 就業規則に始末書提出を命じる根拠規定がある場合 | 業務命令として提出を求めやすい状況です。ただし命令の合理性・相当性が必要とされています |
| 就業規則に根拠規定がない場合 | 提出を強制することへの制約が大きくなる可能性があります。不当と感じる場合は人事・労務担当または労働組合への相談が選択肢です |
| 反省・謝罪の「内容」を強制する場合 | 憲法19条(思想・良心の自由)との関係から、とくに問題が生じやすいとされています |
始末書の法的証拠としての効力
始末書は、懲戒処分や訴訟の場面で「本人が事実を認め、反省した」ことを示す証拠書類として機能することがあります。そのため、内容に事実と異なることを書いたり、よく確認せずに署名してしまうのは避けましょう。
- 提出後の始末書は、会社が保管・管理することが一般的です
- 内容に異議がある場合は、署名・捺印の前に上長や人事部に相談することが大切です
- 始末書を提出したからといって、必ずしも懲戒処分が下されるわけではありません
【人事・管理職向け】始末書を提出させる際の注意点
ここでは、始末書を「書かせる側」の立場にある管理職・人事担当者の方向けに、注意すべきポイントをまとめます。
強制提出はパワハラになる可能性がある
前述のとおり、反省・謝罪の意思を強制的に書かせることは、憲法上の思想・良心の自由の観点から問題が生じる場合があります。また、提出を繰り返し強要したり、精神的苦痛を与えるような要求の仕方はパワーハラスメントに該当するリスクがあります。
- 就業規則に始末書提出の根拠規定があるか確認している
- 提出の目的(反省の促進・再発防止)が明確である
- 提出期限や様式について従業員に丁寧に説明している
- 強要・脅迫・過度な叱責を伴っていない
- 始末書の提出強制には法的な限界がある点を理解している(裁判例では強制を認めないものが多い)
- 提出を拒否された場合の対応方針を、専門家(弁護士・社労士)に事前に確認している
始末書の提出命令の法的な性質
始末書の提出命令については、「業務命令」と「懲戒処分」を単純に二択で整理できないのが実態です。複数の裁判例では「始末書の提出命令は懲戒処分を実施するためのものであり、通常の業務命令とは別の性質を持つ」と判断されています。
| 区分 | 根拠 | 要件・注意点 |
|---|---|---|
| 懲戒処分に伴う場合 (けん責・減給・出勤停止など) |
就業規則の懲戒規定 | 懲戒事由への該当・手続きの適法性が必要。懲戒処分の要件を満たさない場合は無効になりうる。始末書提出拒否のみを理由にさらなる懲戒処分を重ねることは多くの裁判例で認められていない |
| 反省促進を目的とする場合 (軽微なケース) |
就業規則の服務規程など | 提出の強制には限界がある。強要・脅迫・精神的苦痛を伴う要求はパワハラリスクを生じさせる。本人の任意提出を促すのが適切 |
始末書の保管と活用
- 始末書は個人情報を含む重要文書です。適切なアクセス管理のもと、施錠できる場所または権限管理されたシステムで保管しましょう
- 類似事案の再発防止策として活用する際は、個人が特定されない形で情報を共有することが大切です
- 保管期間については、会社の文書保管規程や懲戒処分の種類に応じて適切に設定してください
よくある質問(FAQ)
始末書と顛末書は両方書かないといけないのですか?
必ずしも両方必要というわけではありません。始末書は「謝罪と再発防止の誓約」、顛末書は「事実の客観的な報告」という目的の違いがあります。会社や案件の重大度によって、どちらか一方または両方の提出を求められることがあります。上長の指示に従って対応するとよいでしょう。
始末書を書いたら、必ず懲戒処分になりますか?
始末書の提出=懲戒処分ではありません。ただし、就業規則上、始末書の提出自体が「けん責(譴責)」という懲戒処分の一種として位置づけられている会社も多くあります。厚生労働省のモデル就業規則でも、けん責は「始末書を提出させて将来を戒める」処分として定義されています。なお、けん責より軽い「戒告」を設けている会社ではけん責が最も軽い処分ではない場合もあります。また、けん責以外でも減給・出勤停止などの処分に際して始末書の提出が求められることがあります。処分の有無や内容は、就業規則の懲戒規定と問題の内容によって判断されますので、不明な点は人事部に確認しましょう。
文字数はどのくらいが適切ですか?
明確な決まりはありませんが、便箋1〜2枚(400〜800字程度)が一般的です。文字数よりも「事実が明確か」「再発防止策が具体的か」の方が大切です。書類の隅から隅まで文字を埋める必要はなく、伝わる内容であれば適切な量でかまいません。
始末書に書いた内容は、後から変更や撤回できますか?
提出後の始末書は会社が保管する公式文書です。基本的に変更や撤回は難しいとお考えください。提出前に必ず内容を確認し、事実と異なる記載がないかを慎重にチェックすることが大切です。内容に疑問がある場合は、署名・捺印の前に上長や人事部に相談することをおすすめします。
始末書を提出したら、評価や昇進に影響しますか?
会社の評価制度や問題の内容によって異なります。始末書の提出自体よりも、提出後に再発防止策を実際に実行しているかという行動の方が、評価に大きく影響することが一般的です。誠実に反省し、行動で改善を示すことが大切です。
始末書はどのくらいの期間、会社に保管されますか?
会社によって保管ルールが異なります。始末書は労働基準法第109条が定める保存義務対象書類(労働者名簿・賃金台帳・雇入・解雇関係書類等)には含まれていません。そのため法定の保存期間は定められておらず、各社の就業規則・文書管理規程によって保管期間が設定されているのが実態です。気になる場合は人事部に確認してみましょう。
メールで始末書を送っても大丈夫ですか?
会社の指示や慣習によります。メール提出でよいと言われた場合はそれに従って問題ありません。ただし、特に指定がない場合は印刷・押印した書類を直接手渡しするのが望ましいとされています。メール提出が許可されている場合でも、PDFまたはWordファイルで作成し、署名欄は手書きで押印後スキャンするのが誠実な対応です。
まとめ
始末書を書くことは、決して気持ちのいいことではないですよね。でも、適切に書かれた始末書は「この人は信頼できる」という評価にもつながります。大切なのは形式よりも誠実さと具体性です。
- 会社指定の書式・提出方法があるか確認した
- 経緯を5W1Hで時系列に整理した
- 再発防止策が「気をつけます」以上の具体策になっている
- 言い訳・責任転嫁の表現がないか見直した
- 日付・宛先・差出人・署名・捺印に漏れがない
- 万一の内容確認・異議申し立てに備え、提出前にコピーを手元に保管した
- できるだけ早く提出する準備ができている
この記事が、始末書を書く方・受け取る方双方にとって少しでも参考になりましたら幸いです。状況によってケースはさまざまですが、誠意を持って取り組むことが一番の近道です。

