お寺でお願いしてはいけない理由と正しい参拝方法


お寺での参拝には、神社とは違う独特のマナーがあるんです。知らずに訪れるとお願いしてはいけない行為をしてしまう可能性があります。敷居を踏んだり手を叩いたりといったNG行為から、正しい参拝方法まで、初心者の方にもわかりやすく紹介しますね。

お寺でしてはいけない行為

【避けるべき行為その1】総門・山門の敷居を足で踏んで入場する

お寺は仏様がお住まいになる神聖な場所です。俗世間と神域を隔てる境界線の役割を果たしているのが、総門(大門)や山門(中門)と呼ばれる門の部分なんですね。

門の下部に設置されている横木が敷居で、これは結界のような神聖な境界を意味しています。この場所を足で踏みつける行為は、俗世間と神域の調和を乱し、神聖な空間を汚してしまうことに繋がってしまうとされているんです。

また、敷居は建物の構造上とても重要な部材でもあるため、これを踏むことで建物全体にゆがみが生じる原因となってしまいます。参拝作法として、そして建物を保護するためにも、敷居は踏まずに跨いで入ることが大切なんですね。

【避けるべき行為その2】鳴り物(鰐口)を勢いよく大きく鳴らす

本堂に到着したら賽銭を納め、鳴り物を振り動かして音を出します。参拝の手順については神社とほぼ同様なのですが、神社では鈴をしっかりと鳴らすことで「邪気を払う」という意味があるのに対して、お寺の場合は「仏様へのご挨拶」といった意味合いなので、心を静めて、慎ましく鳴らすことが重要なんです。

お寺の場合は鈴ではなく鰐口(わにぐち)という銅鑼のような形状のものが吊り下げられていますが、鈴と同様に、紐を振って音を出します。鈴と比較して鳴らしにくく柔らかな音色のため、不安に感じるかもしれませんが、それで全く問題ありません。

【避けるべき行為その3】合掌の時に手を叩いて音を立てる

神社と混同されやすいのが、参拝時に手を合わせて祈りを捧げる動作なんです。神社では「柏手(かしわで)」といって手をパンパンと叩きますが、お寺ではこれは絶対にNGなんです。お寺では「合掌(がっしょう)」という形で、音は立てることなく、胸の前で静かに手を合わせることが正しい作法なんですね。

【避けるべき行為その4】参拝のあとに鐘を突く

比較的規模の大きなお寺には、鐘楼という鐘が設置されている場所があります。鐘は鰐口と同じく仏様へのご挨拶なので、突くのであれば参拝する前が正しいタイミングなんです。参拝後に突くのは「戻り鐘」といい、功徳が消え失せてしまうためタブーとされているんです。

【避けるべき行為その5】参拝前に授与品(お守り)や御朱印を受ける

これは神社と同じルールなのですが、授与品や御朱印を参拝前に受け取ろうとするのはマナー違反なんです。授与品は仏様の功徳が込められたもので、御朱印は仏様とのご縁を象徴するものなんですね。そのため、ろくにご挨拶もせずに真っ先に受け取りに行くというのは礼を失する行為となってしまうんです。

なお、最近人気の御朱印集めをされている方も多いと思いますが、できれば御朱印帳は「神社用」と「お寺用」で分けておいた方が無難なんです。お寺によっては、神社の御朱印と一緒にされるのを好まないところもありますから。

【避けるべき行為その6】動物を連れて参拝する

神聖で清浄とされる場所では、動物の同伴を禁止するお寺があります。現在では「ペットも大切な家族」という考え方が定着し、ペット同伴可のお寺もありますが、排泄物などの衛生面の懸念もあり、動物の連れ込みを快く思わないところはまだまだ多いのが現状なんです。

ペット同伴の場合は、事前にお寺に確認を取り、他の参拝者の迷惑にならないよう配慮しましょう。「鳥居まで」「キャリーに入れること」など独自のルールを設定しているお寺もあり、注意が必要なんです。

お寺での正しい参拝方法

基本的な参拝手順

手順 神社 お寺
鳥居の前で一礼 山門の前で一礼
参道を歩いて拝殿へ
(参道の中央は神様の通り道なので左右を歩く)
参道を歩いて本堂へ
(真ん中を歩いてOK。門の敷居は踏まずにまたぐ)
手水舎で手と口を清める 神社と同じ
拝殿でお賽銭を入れ鈴を鳴らす 本堂でお賽銭を入れる
(常香炉があれば線香の煙を浴びてもよい)
二拝二拍手一拝 合掌をして心の中でお願いする
手を合わせてお願い お願いが終わったらお辞儀
お寺では手を合わせるだけなんです。これだけでも覚えておいてくださいね。

手水舎での清め方

  1. 右手で柄杓(ひしゃく)を持ち、左手を洗う
  2. 柄杓を持ち替えて右手を洗う
  3. 左の手のひらに水を受け、口に含んですすぐ
  4. 柄杓を傾けて柄を水で流す

お寺での願い事について

正しい願い方の手順

お参りをした際には次の順序で行います。

  1. 手を合わせて感謝をすること
    日々の喜びや有り難かったこと、また手を合わせる対象に対して感謝をします。
  2. 次に、誓いをたてます
    大切なことは「他者に対する誓い」なんです。「人に優しく接します」や「親孝行します」などです。
  3. 最後に自分の願い事を伝えます
    願い事のことを「誓願」とも言います。
要するに「誓って願い、その通りに努力し行動する」ことが大切なのです。
ただ漠然と「病気を治してください」と願ったところで、自分に何の変化があるでしょうか。

「誓願」とは良くなるために自身が動き、変わり、気付き、受け入れ、そこへ仏様のお力添えをしていただくことなんです。

願い事の言い方の例

良い例

  • 「〜をがんばりますので、見守っていてください」
  • 「〜ができるように努力しますので、導いてください」
  • 「〜をしますので、どうか背中を押してください」
避けるべき例

  • 「〜さんに悪いことがありますように」
  • 「〜さんが失敗しますように」
  • 「〜をしてください」(他力本願な表現)
重要なのは、「感謝・反省・誓い」なんです。特に感謝はとても大事な項目なんですね。

宗派による違いについて

願い事に関する宗派の違い

願い事をしても良いとされる宗派(密教系)

  • 天台宗(比叡山延暦寺など)
  • 真言宗(高野山金剛峯寺、成田山新勝寺、川崎大師平間寺など)
願い事よりも感謝や反省を重視する宗派

  • 禅宗(曹洞宗、臨済宗など)
  • 浄土真宗

禅宗や浄土真宗では、個人的な願い事よりも、仏様への感謝や自分自身の心を見つめることを重視する傾向があります。ただし、これは絶対的な禁止ではなく、宗派の教えの違いによるものです。

参拝時のマナーと注意点

服装に関する配慮

避けた方が良い服装

  • 毛皮やファー製品
  • 革製品(靴は問題ありません)
  • 露出の多い服装
  • あまりにもカジュアルすぎる服装

仏教には、命があるものを故意に殺してはいけない教えがあるため、殺生を連想させるような服装は避けた方が無難です。ただし、正装が必要という決まりはありませんので、清潔感のある服装を心がけてくださいね。

参拝に適した時間帯

お参りには、夕方や夜の時間よりも、日の光が差す午前中の方が適しています。特に決まりがあるわけではありませんが、現実的に考えると夜は暗くて危険ですからね。

お賽銭に関する豆知識

「お賽銭はいくらがいいの?」という疑問にお答えしますね。基本的にいくらでも良いのですが、縁起を担ぐ金額があります。

縁起が良いとされる金額

  • 5円…ご縁がありますように
  • 11円…いいご縁がありますように
  • 15円…十分なご縁がありますように
  • 20円…二重にご縁がありますように
  • 45円…終始いいご縁がありますように

避けた方が良いとされる金額

  • 10円…「遠縁」といわれ、縁が遠ざかるとされる
  • 65円…ろくなご縁がない
  • 75円…なんのご縁もない

お賽銭は気持ちですので、あなたなりの気持ちを込めて金額を決めてくださいね。

お寺と神社の基本的な違い

項目 お寺 神社
信仰の対象 悟りを開いた「仏」 複数の神様
宗教的背景 仏教の宗教建築で祈りの場 「神道」に基づいて作られた建築物
願いの内容 現世での幸せと死後に極楽浄土へ行けるよう願う 現世での幸せを願う
主な行事 お葬式・法事 結婚式

よくある質問

Q: お寺でしてはいけないことは?
A: 宗派によって違いますが、一般的には敷居を踏む、拍手をする、鰐口を大きく鳴らすなどは避けましょう。また、ペット同伴を禁止するお寺もあるため、事前に確認することをおすすめします。

Q: お寺に行くときの言い方は?
A: 「お参りに行く」「お寺に行く」「お寺にお参りに行く」「お寺にお参りする」などが一般的です。

Q: 神社とお寺の願い事の違いは何ですか?
A: 最も大きな違いは信仰する対象です。お寺は「仏」、神社は「神様」なんですね。また、お寺では「感謝・反省・誓い」を重視する傾向があります。

まとめ

お寺参拝における基本的なマナーをまとめると、以下の点が特に重要になります。

  • お寺では「合掌」のみで拍手は絶対にしない
  • 敷居を踏まない、鰐口を静かに鳴らすなど、お寺特有の禁止行為を避ける
  • 他人への悪意ある願い事など、自分勝手な内容を控える
  • 宗派による違いを理解し、事前に確認する

お寺での願い事は決して禁止されているわけではありません。「感謝・反省・誓い」の順序を守り、自らの努力を誓いながら仏様のお力添えをいただくという心構えが大切です。

お寺は仏教の教えに基づく神聖な場所でもあるため、謙虚な気持ちで参拝することを心がけましょう。お寺によって独自のルールがある場合もありますので、事前の確認も重要ですね。

正しいマナーを守って、心を込めて参拝すれば、きっと心が清らかになり、日々の生活にも良い影響をもたらしてくれることでしょう。