「カフェ」と「喫茶店」という言葉が挙がると、洗練された雰囲気で明るい店舗が「カフェ」を表し、一方で昭和レトロな印象の店舗が「喫茶店」とされています。さらに、「カフェ」はセルフサービスや半セルフサービスの形態が一般的であり、一方の「喫茶店」では店員が来客の席までサービスを提供する傾向があります。これらの要素が、それぞれの店舗タイプのイメージを構築しています。ただし、外見だけでは区別が難しい場合もあり、カフェ風の喫茶店や喫茶店風のカフェが実際に存在しています。
カフェと喫茶店 雰囲気の違い
カフェと喫茶店では、それぞれに特徴的な雰囲気があります。ここでは、カフェと喫茶店がどのようなイメージを持たれやすいかを紹介します。
カフェ
カフェは、モダンでスタイリッシュな印象が強いでしょう。店内のデザインは和風やレトロよりも、洋風のものが多いです。そのため、店内は明るく、広々とした空間です。
また、カフェには大規模な店舗が多く見られます。特に繁華街などの人が多い地域では、その傾向が顕著です。さらに、チェーン店も豊富です。コーヒーや紅茶だけでなく、パスタなどの食事メニューも充実しているので、コーヒーを飲むだけでなく、他の目的で利用されることもあります。
喫茶店
喫茶店は、古風でクラシックな印象が強いかもしれません。店内にはレトロな雰囲気やアンティーク調の家具や食器が並んでいます。長年営業を続けているような、歴史のある店が多い印象です。店内は静かで落ち着いた空間。コーヒーや紅茶を、ゆっくりと楽しめます。
チェーン店や大型店はほとんど見かけず、住居と一体化した店舗や個人が経営する店舗が多く存在する印象があります。
カフェと喫茶店の区別 基準
カフェと喫茶店は、どのような営業許可を持っているかで区別されます。それによって、料理のレベルや必要な設備も変わってきます。次に、カフェと喫茶店の基準や営業スタイルを詳しく説明します。
営業許可が違う
カフェは飲食店営業許可を取得しています。一方、喫茶店は飲食店よりも簡単に取得できる喫茶店営業許可があれば開業できます。
飲食店と喫茶店の営業許可では、アルコールの提供ができるかどうかが異なります。飲食店営業許可はアルコールを提供できますが、喫茶店営業許可はアルコールを提供できません。
しかし、アルコールが提供される喫茶店も存在します。その場合、喫茶店と名乗っていても飲食店としての営業許可を取得しているのです。
調理レベルが違う
営業許可では、アルコールの提供だけでなく、調理の種類にも制限があります。喫茶店営業許可では、簡単な加熱調理などしかできません。そのため、喫茶店のメニューにはトーストやケーキなどの軽い食べ物やお菓子が多く見られます。
一方、飲食店営業許可では加熱調理以外も可能ですから、様々な飲食物を提供できます。カフェでは、パスタなどを始め、メニューの種類も豊富で手間のかかった料理を提供していることが多いです。
アルコールの提供と同じく、複雑な料理がメニューにある喫茶店は、喫茶店営業許可ではなく飲食店営業許可を取得していると考えられるでしょう。
設備要件が違う
営業許可の種類によって、提供する飲食物だけでなく、必要な設備も変わってきます。
喫茶店営業許可を取得した店は、清潔で衛生的な店内であれば、水道と下水道が分かれているだけで営業できます。しかし、カフェは喫茶店に必要な条件に加えて、冷蔵設備や洗浄設備、給湯設備、客席、客用トイレなどの要件があります。
複雑な調理をするためには、飲食物を衛生的に保管したり洗浄する設備が必要になるからです。
カフェと喫茶店の歴史の違い
カフェと喫茶店は、どちらも日本に長く存在するコーヒーを提供する店ですが、その歴史は異なります。カフェと喫茶店の歴史について、詳しく説明していきます。
カフェ
日本で最初にできたカフェは、1888年に東京上野にオープンした可否茶館という複合カフェです。この店がきっかけで、カフェは徐々に人気が出てきました。1925年にはカフェが急激に増え、バーやキャバレーなどの派生店も出現しました。
しかし、1929年に発令された取締令で、カフェは大打撃を受けました。店舗数は激減し、その後始まった第二次世界大戦ではコーヒーが高級品となりました。コーヒーの輸入は禁止され、カフェは多くが廃業や転業を余儀なくされました。
カフェの暗黒期は戦争が終わるまで続き、1950年になってようやくコーヒーの輸入が再開されました。コーヒー豆が入手できるようになると、カフェは再び街に姿を現しました。当時のコーヒー豆の消費量の大半は、個人経営のカフェで使われたと言われています。
喫茶店
喫茶店は、1929年の取締令がきっかけで急増しました。コーヒーや軽食を提供する店として喫茶店や純喫茶と名乗り、人々に親しまれていきました。喫茶店もカフェと同じく、戦争の影響で苦境に陥りました。そして、戦後はカフェと共に復活しました。
戦後からは、オーナーの個性や趣味が反映されたユニークな店舗が目立ち始めました。音楽を楽しめる音楽喫茶が流行り、名曲喫茶、歌声喫茶、ロック喫茶やジャズ喫茶など多様な喫茶店が誕生したのです。
その後は音楽以外にも、漫画を読める漫画喫茶などの形態も登場します。しかし喫茶店の数は、1981年にピークを迎えてから、減少の一途をたどっています。