七夕で願い事をするのはなぜなの?

七夕で願い事をする由来や短冊の色の意味などを紹介

七夕 願い事

七夕の願い事と笹の由来

七夕に願い事をする風習には由来があります。また、笹に飾ることにも理由があります。

乞巧奠

七夕に願い事をする習慣は、中国の宮中行事である「乞巧奠(きっこうでん)」に由来します。伝説の織姫にならい、女性たちは機織りや裁縫の上達を願う風習を持っていました。現在でも、機織りだけでなく、書道や芸事の上達を願う行事として続いています。

日本に乞巧奠が伝わった奈良時代には、宮中行事として定着しました。貴族たちは庭に祭壇を設け、機織りや裁縫の上達を願ったり、梶の葉に和歌を詠んだりするようになりました。

また、サトイモの葉にたまった夜露は天帝からの授かり物と考えられ、夜露を混ぜた墨で願い事を書くと叶うとされていました。これらの風習が、現在の七夕の短冊に願い事を書く形に変わっています。

笹に飾る理由

抗菌作用のある笹は、古くから人々の生活に欠かせない存在でした。特に夏は食べ物が腐りやすい季節であり、笹は防腐剤として使用され、お供え物の下に敷かれていました。

また、笹は天に向かって力強く成長することから、神聖なものとして扱われ、古くから神事にも用いられていました。七夕の行事では笹を飾ったり、笹の葉にお供え物を載せて川に流したりする風習もありました。

このように、笹は七夕には欠かせない存在であり、江戸時代になると七夕の行事が浸透し、願い事を書いた短冊を笹に飾る習慣が広まっていったのです。

七夕の由来

七夕の由来について考えてみましょう。七夕は、中国の暦法に基づく「五節句」の一つで、季節の変わり目を意味します。五節句は「節日(せつにち)」を基にしており、奇数(陽)が重なる日は偶数(陰)になるため、陰の邪気を祓う目的で「七夕の節句」という行事が行われるようになったと言われています。

また、七夕は中国から伝わった七夕伝説が起源とされています。織姫と牛使いは、どちらも働き者として知られていましたが、結婚後は仕事を怠けてしまいました。天帝はこの状況を見て、2人を天の川を隔てて東西に引き離しました。しかし、別れた後も悲しみに暮れ、仕事をしなくなりました。そこで、仕事に励むことを条件に、年に1回だけ会うことを許されたという伝説が生まれました。

日本では、七夕は「たなばた」とも呼ばれています。これは、中国から伝わった「しちせき」という言葉が変化したものです。日本古来の神事である「棚機(たなはた)」に由来しています。棚機は、神事で使用する着物を織るための織り機で、「棚機津女(たなばたつめ)」と呼ばれる選ばれた女性だけが使えました。棚機女性は棚機を使って織った織物を神様に捧げ、豊作祈願や穢れ(けがれ)を祓う神事が行われていました。この神事は、仏教の伝来とともに、7月7日にお盆の準備をするための行事として変わっていきました。同時に、棚機も当て字の「七夕」となったとされています。

短冊の色に込められた意味

短冊の色には意味があります。五行説に基づく「五常(五徳)」によって、事柄は木・火・土・金・水に分類され、それぞれの色が対応しています。以下に短冊の色別の意味を紹介します。

青や緑の短冊

七夕祭りで見られる青と緑の色彩は、それぞれが深い象徴的な価値を持っています。これらは五行思想に根ざしており、青色は木の元素を代表し、「仁愛」という品質や個人の発展を象徴しています。通常は青色が関連付けられますが、緑色の短冊も同様の意味合いで使用されることがあります。自己の進歩や他者への優しさを願う際には、この色の短冊に願いを記すのが一般的です。

たとえば、「助け合いの精神を持つ」「悪口を避ける」「心の広さを育む」といった、自己向上を目指す願いや、子供たちの「苦手な食べ物に挑戦する」「家事を手伝う」といった成長に繋がる願いも、青または緑の短冊に記されることが望ましいとされています。

赤の短冊

赤い短冊は、五行説において「火」に属する五常の一つで、「礼」を象徴しています。文字通り感謝の気持ちを表し、特に目上の人々を大切にすることを意味します。祖父母や両親、先祖、周囲の目上の人々への感謝の気持ちを込めた内容を書く際には、赤い短冊を選ぶことが良いでしょう。

黄の短冊

「信」は黄色の短冊に象徴され、土行の一部として分類されます。これは信頼性と誠実さを示しています。そのため、人間関係についての願いを持つ場合、黄色の短冊にそれを記述することが推奨されます。職場での人間関係の改善や、ママ友との良好な関係を維持する願いも、黄色の短冊に適しています。家族や配偶者との関係も人間関係の一部であるため、家庭の安全や夫婦の円満を願う際にも黄色の短冊を使用できます。また、子供が「友達と良好な関係を築く」や「多くの友達を作る」などの願いも、黄色の短冊に記述することができます。

白の短冊

五行思想に基づくと、金行の一部である白色は、五つの基本的な価値観の一つである「義」を象徴しています。この白色の短冊は、規範を尊重し、責任を果たすことの象徴となっています。

例えば、子供たちは「時間通りに行動する」「物を忘れない」といった希望を表現するためにこれを使用できます。大人の場合、「安全な運転を心がける」「掃除を怠らない」といった願い事も、白色の短冊に記すと良いでしょう。

さらに、「タバコをやめる」「お酒を控える」といった、自己改革の決意を示す希望事項にも、白色の短冊は適しています。

紫色の短冊

五行説に基づいて、黒色が本来の色であるにも関わらず、紫色の短冊が一般的に使用されます。黒色は不吉な印象を持つため、また、文字が読みにくいためです。

紫色は五常の一つであり、『知恵』を象徴します。そのため、学問に関する願い事は紫色の短冊に書くと良いとされています。

学問と言えば、学生だけが関連すると思われがちですが、実際には社会人でも利用可能です。例えば、「昇進を達成する」「資格試験に合格する」「英語のスキルを向上させる」といった願い事は、紫色の短冊に書くのが適しています。

願い事の適切な表現方法

「願い事の書き方が分からない」という方もいるかもしれません。どのような願い事が適切なのか、また、その書き方について説明します。

スキルの向上

近年では、自由に短冊に願い事を書くことが一般的ですが、七夕は元々、機織りや裁縫のスキル向上を願った乞巧奠が起源です。そのため、「車が欲しい」「海外旅行に行きたい」「宝くじを当てる」といった欲望を書くと、七夕の本来の意味から大きく逸脱してしまいます。 伝統的な行事を尊重したい方は、七夕の起源を考慮した願い事がおすすめです。例えば、「試験に合格する」や「ピアノのスキルを向上させる」など、学習や趣味などのスキル向上を願うのが良いでしょう。また、日本古来の神事である棚機にちなんで、「無病息災」を願うのも良いでしょう。

願いは断定的に

「願い事が叶うことを願う」という希望や期待を短冊に書くことは間違いではありませんが、より具体的に書くことで効果が高まります。例えば、「希望の学校に合格する」「ダイエットを成功させる」といった形で、自分の願いを明確に表現しましょう。強い意志を持って願い事を書くことで、自分自身の気持ちも引き締まり、願いが叶いやすくなることもあります。
また、古来からの風習として、サトイモの葉に集まった夜露を混ぜた墨で願い事を書くと、願いが叶うとされています。もちろん、墨を使うのは難しいかもしれませんが、少なくとも墨で願い事を書くことで、古来の風習に触れる楽しみがあります。

笹飾り

笹飾りには、多種多様な願いが込められています。短冊だけでなく、多くの笹飾りが飾られていることでしょう。これらはただの装飾ではなく、特定の意味を持っています。

長生きを願う千羽鶴

現在では千羽鶴は病気の回復を祈るイメージがありますが、もともとは「鶴は千年」と言われている通り、長生きの象徴です。
七夕の笹飾りの鶴には、長生きを祈る意味が込められています。また、健康や家庭の安全を願う意味も含まれています。一般的には、家族の中で最年長者の年齢の数だけ千羽鶴を飾ります。
千羽鶴を折ることは、小さな子どもには難しいかもしれませんが、毎年七夕の日に鶴を折ることで子どもの成長を感じるメリットがあります。

金運向上の巾着

笹飾りの巾着は、昔の財布を指します。巾着の飾りには、お金に関する願いが込められています。商売繁盛や金運上昇、貯金、節約などを願うことが一般的です。
巾着は折り紙で作ることが一般的ですが、実際の財布を飾ることもあります。折り紙での作り方はさまざまで、シンプルな巾着は小さな子どもでも簡単に作れます。

魔除けの意味を持つ吹き流し

風に舞う吹き流しは、涼しさと風情を感じさせる笹飾りです。吹き流しは、七夕の伝説に登場する織姫の糸を象徴しています。
かつては5色の糸を笹に1本ずつつるしていましたが、現在はくす玉に多数の吹き流しをつけるのが一般的です。
吹き流しには魔除けの意味が込められており、また、長生きを祈る意味や織姫にちなんで裁縫などのスキル向上を願う意味もあります。

七夕の季節が訪れるたびに、家族の思い出を振り返るのも素敵な過ごし方ですね。